Appleから待望のiPhone 3G Sが発表された。これまで欠けていた機能の多くが搭載され、ハイエンドスマートフォンとしての魅力がさらに高まっている。併売される現行モデルのiPhone 3Gと合わせ、今年は昨年より市場シェアを高めることになりそうである。

弱点の無くなったiPhone 3G S

新しく発表されたiPhone 3G S。市場での反応は昨年のiPhone 3Gと比較するとだいぶ落ち着いた感じだ。確かに初代iPhoneからiPhone 3Gへの進化と比較すると、今回のiPhone 3G Sへのアップグレードは基本機能の充実が主なポイントであり、今のiPhone 3Gユーザーにとっても今すぐ買い換える必要は無いものかもしれない。

iPhone 3G Sはアジアでも連日IT系雑誌の注目の話題になっている

オートフォーカス&マクロ対応のカメラ、動画撮影&編集、文字のコピー&ペースト、PCと接続しモデムとして利用もできるティザリング、音声コントロール、ステレオBluetooth再生など、今回のiPhone 3G Sが備えた新機能の多くはすでに他社の携帯電話やスマートフォンで搭載されているものである。iPhoneは優れたモバイルインターネット端末だが、最近の高機能携帯電話やスマートフォンと比較すると遅れを取っている部分もあった。iPhone 3G Sでそれらの弱点部分がようやく追いついた、ということにもなる。

iPhoneユーザーのすべてが音楽やインターネットを楽しんでいるわけではない。iPhoneのスタイルが気に入りファッションとして利用しているユーザーの数も実は多いのだ。だが他社の高機能(あくまでもカメラなどの「単機能」の話であり、端末総合の機能の比較ではないことに注意)携帯からiPhoneに乗り換えると、カメラ機能などにはどうしても不満がでてしまうものだった。今回の機能アップでiPhone 3G Sは携帯電話として、より大きな魅力を持った製品になったとも言える。これまで以上に幅広い消費者にアピールできる製品になったと言えそうだ。

なおその他の機能強化点として電池の持続時間が延長された。Wi-Fi利用時には従来の1.5倍となる9時間もの利用が可能になり、音楽や動画再生時間も増えている。一方で音声通話時間は3Gで5時間と変わっていない。高速なCPUを搭載したことを考えれば十分努力しているところだが、現行製品でも実際に1日中使っているとあっという間に電池が無くなってしまう。iPhone 3G Sが果たしてどのくらい電池の持ちが改善されたかは、今後製品が出てきてから実際に試してみる必要があるかもしれない。

買い替えがユーザーをさらに増やす

さて既存のiPhone 3GユーザーがiPhone 3G Sへ買い換えた場合、2台の併用は現実的ではないだろう。現在利用中のiPhone 3Gのほうはオークションなり中古販売店などを利用して処分する人が多いはずだ。あるいは知人などに譲渡する人もいるだろう。ちなみに海外では携帯電話の中古売買は一般的なものであるし、中古携帯電話の利用は日本のようにネガティブなイメージも一切無い。

海外では中古携帯電話は一般的な製品だ。iPhoneの中古は常時高値で取引されている

普通の携帯電話であれば、1年も昔の製品となると商品価値は大きく落ちるが、Appleは現行のiPhoneにも最新のOSへのアップグレードを用意している。すなわち1年経った「旧製品」であってもまだまだ最新の機能を利用することができるのだ。すなわちiPhone 3G Sの登場で、買い替えユーザーから「まだ使える中古のiPhone」が中古市場に多数出回ることが予想される。そしてそれを買い求める消費者の数もかなり出てくることだろう。iPhoneは販売国によってはSIMロックフリーであり、どこの国の携帯電話事業者のSIMカードも利用できる。そのようなロックフリー中古品はiPhone販売国以外の国で引く手あまたになるだろう。

つまり新製品としてのiPhone 3G Sや価格が引き下げられた現行のiPhone 3Gが利用者を増やすだけではなく、買い替えによって市場に出てくる中古iPhoneがさらに新しいiPhoneユーザーを増加させる可能性もあるわけだ。AppleはiPhone 3GからApp Storeを使ったアプリケーションの直販を始めている。iPhoneそのものを利用するユーザーが増えれば、たとえどこの事業者の回線を利用しようともAppleの収益に結びつくわけだ。iPhone 3G Sの投入でAppleの市場シェアが増加することは確実視されているが、新製品の売り上げ台数だけではなく中古端末による実ユーザー数も確実に増えていくことだろう。