【コラム】

海外モバイルトピックス

16 香港におけるiPhone 3G - SIM差し替えは当たり前

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11日にソフトバンクモバイルから発売開始されたAppleの「iPhone 3G」。香港でも同日に販売開始となったが、日本とは違い初日の販売は抽選方式となった。一体なぜこのような販売方法が取られたのだろうか?

香港では"3"(スリー、Hutchisonのブランド名)からiPhone 3Gが販売される

SIMロック端末は"無用の長物"の香港

香港のiPhone 3Gはシェア2位の通信事業者、Hutchison(ハチソン)から販売される。他国同様、iPhone 3Gの購入には同時にiPhone専用プランの契約が必要だ。しかし香港のiPhone 3Gには他国にない大きな特徴がある。それはSIMロックフリー、すなわちどこの通信事業者のSIMカードでも利用できる状態で販売されているのだ。

これは、Hutchisonで契約を行いiPhone 3Gを入手した後、香港のほかの通信事業者のSIMカードを装着して利用できるということを意味する。ソフトバンクやNTTドコモのSIMカードを入れて使うこともできてしまう。SIMロックフリーはGSM/W-CDMA端末の本来の販売形態であり、他の事業者のSIMカードを入れて利用することに関して何のおとがめもない。実際、11日のHutchisonのiPhone 3Gラウンチイベント会場ではその場でHutchisonとの契約を行ってiPhoneを購入・アクティベーション後、それまで自分が使っていた他社のSIMカードを装着してさっそく利用している購入者の姿を見ることができた。Hutchison側のスタッフも見慣れた光景なのか、特に何も言うこともなく、逆に購入者にSIMカードの入れ替え方法を教えていたくらいだ。

iPhone 3Gを購入するや否や、自分の利用しているSmarTone-Vodafone(iPhone販売元のHutchisonではない)のSIMカードを入れている購入者。Hutchisonのスタッフもそれをとがめたり苦笑するわけでもなく「どうぞご自由に」といった対応をしていた

つまり、たとえ通信事業者と契約を行って購入した端末であろうとも、購入者がその後何をしようが一切自由であるのがGSM/W-CDMA方式の本来の姿である。日本のように、各事業者ごとにコンテンツサービスが機種によって左右されることもないし、事業者が契約時に販売し機種以外の利用を認めないような風潮もない。そもそも、SIMカードを自由に入れ替えできるのがGSM/W-CDMA方式の最大のメリットであるし、通信事業者はメーカーブランドの端末を自社で販売しているに過ぎない。

これは日本のiPhone 3Gを見てみれば判るだろう。ソフトバンクが販売しているが、ソフトバンクの型番もないし、ロゴもついていない。iPhone 3Gはアップルの製品であり、ソフトバンクの製品ではないのだ。販売先がソフトバンクなだけであり、他社のSIMカードが利用できないようにSIMロックがかけられているだけであり、ハードウェアであるiPhone 3Gそのものは、他国で売られているものと全く同じものである。海外での通信事業者とメーカー端末の関係は、まさにこのiPhone 3Gと同様のものであることが基本なのだ。

一方で香港は都市国家である。隣の都市へ出かけることがそのまま海外へ出ることになる。毎日のように香港と中国大陸を行き来する香港人の姿も珍しくない。しかし、そのたびに中国で国際ローミングサービスを利用していたら携帯料金が青天井となってしまう。香港(や隣国のマカオ)は中国に返還後も政治経済が独立した"特別行政区"であり、通信事業者も香港と中国では全く別の企業が運営しているのだ。そのため中国滞在中は携帯電話から香港のSIMカードを取り外し、中国のSIMカードに入れ替えて利用するといった使い方も一般的である。

このような背景から、香港で発売される携帯電話はほぼ100%がSIMロックフリーである。もちろん、SIMロックがかけられている端末より価格は割高(これが本来の定価であり正しい価格だが)になるものの、ロックがある端末では結局香港外での利用に多大なローミング費用がかかってしまう。香港ではSIMロックは無用の長物であり、端末価格が安かろうがそれは「見かけ倒し」である、と認識されているのである。

香港のiPhoneが世界中から狙われている?

11日には日本を含む香港以外でもiPhone 3Gが発売開始されたものの、ほぼ全ての国のiPhoneがSIMロックありだ。これに対して香港のiPhone 3GはSIMロックがない。よってiPhone 3Gの発売がまだ始まっていない国などから、香港モデルを入手して転売しようとする動きが販売前から広がっていた。このため、香港では日本のような「行列方式」は一切とらず、抽選販売方式が採用されたのだ。

しかも、抽選の登録には香港居民のIDカード番号が必要であり、同一人物による複数の登録も不可とされた。仮に行列方式やID番号不要での抽選方式を行えば、おそらくHutchisonの各店舗には数日前からアルバイトの行列屋が数百名以上列をなしたであろうし、抽選受付けを行うHutchisonのサーバーは購入希望者1人あたりから1,000以上の応募を受付けてパンク状態となったであろう。

iPhone 3Gは香港のみならず世界中から注目を浴びている製品であり、契約・購入後すぐに転売される恐れがあるだろうとHutchisonが判断したと考えられる。また、Appleとの販売契約でも、おそらく販売初日にiPhoneが転売目的で購入されることは避けるべし、という項目が明記されていたと考えられる。メディアに取り上げられる初日の購入者のほとんどが転売目的というのは、iPhone 3Gのデビューに相応しいはずがないだろう。

携帯電話の転売という行為が一般的ではない日本では考えにくいだろうが、香港では消費者が購入したものをどうしようと何の規制もない。すなわち携帯電話の転売についても、販売する側も購入する側も単純に「欲しい人がいるから転売する」「欲しいものがあるからお金を余計に払って購入する」というだけの行為にすぎない。逆に行列させることは「行列できる人だけが買える」という販売方法であり、香港では不公平と考えられてしまうだろう。日本では行列方法により大いに盛り上がったようだが、香港では逆に抽選方式による販売がイベント会場を大いに盛り上げていた。携帯電話の販売方法が国によって異なれば、話題となる新製品のラウンチイベントもこのように大きく異なる手法が取られるのである。

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インデックス

連載目次
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第97回 1台のスマホで2つのLineを使いたい! 海外ではデュアルWeChatスマホが登場
第96回 空気清浄機や浄水器も売る、脱スマホメーカーを目指すシャオミ
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第86回 世界に広がるガラホ?折り畳み型スマホがアジアで人気
第85回 来年はバレンタインチョコも"印刷"する時代がやってくる
第84回 先進国をターゲットに入れた中国新興メーカーのシャオミ
第83回 SIMフリースマホの国香港、海外用プリペイドSIMの販売が活発化
第82回 Facebookが無料? ソーシャルSIMの時代がやってくる
第81回 韓国で復活するデータ定額
第80回 出揃った中国各事業者のLTEサービス
第79回 スマートフォンシェア3位入りを目指すZTEの最新戦略
第78回 2014年はライフログ系スマートウォッチが熱くなる
第77回 中国で4G免許が交付、2014年は4G普及が一気に進む
第76回 台湾のLTE免許が6社に確定、競争激化で再編も
第75回 ライバルはFirefox OS-Nokiaの新端末に注目
第74回 パナソニックの「家電スマホ」はインドで成功するか
第73回 いよいよ始まる中国のTD-LTEサービス
第72回 Windows Phoneが中南米でシェア2位に浮上
第71回 価格下落が世界のスマホ需要を後押し
第70回 いよいよ出てきたFirefox OSスマホ
第69回 ミッドレンジモデルも魅力のSamsungの2013年春の陣
第68回 日本からも注目したいHuaweiの最新モデル
第67回 得意分野で勝負するシャープの海外戦略
第66回 パナソニックも海外市場から撤退
第65回 TD-LTE端末市場で一気に増す日本のプレゼンス
第64回 アジアで加熱する「5インチスマホ」競争
第63回 全社がLTE開始、競争が激化する香港
第62回 LTEで変わる韓国の業界勢力図
第61回 大きく変わる世界のメーカー勢力図、今年後半の動きを探る(後編)
第60回 大きく変わる世界のメーカー勢力図、今年後半の動きを探る(前編)
第59回 Vodafoneとドコモらが提携、一気に広がる国際提携
第58回 韓国でグローバル対応LTEスマートフォンが登場 - 日本への投入も期待
第57回 香港でも7000円台!! - HP TouchPad販売のドタバタ劇
第56回 韓国で全事業者が4Gを開始 - 月額料はパッケージ制、データ定額廃止の方向へ
第55回 「繋ぎ」には勿体無い、MeeGo OS搭載のNokia N9
第54回 世界の端末メーカーの勢力図が大激変
第53回 アジアで転売されるiPad 2、その現場を見た
第52回 ドコモのSIMロック解除、中国で大歓迎
第51回 2011年は低価格スマートフォンが流行に
第50回 2010年はMotorolaの復活に注目
第49回 AppleもNokiaも脅かす「その他」勢力が増大
第48回 気がつけば海外メーカーばかりな日本のスマートフォン
第47回 この冬はオール"フルタッチ"、本気で反撃に出るNokia
第46回 香港でiPadが発売、SIMロックフリー&単体販売
第45回 海外でも広がる「海外パケットし放題」サービス
第44回 発売開始前なのに何故!? - iPadが大量販売されている香港
第43回 海外も日本も同料金でデータ通信-日本通信がサービス開始予定
第42回 実用化が始まった太陽電池搭載ケータイ
第41回 Nokia、業績回復も今後が勝負 -急がれる「フルタッチ」端末の強化
第40回 「簡単ケータイ」が海外でも流行に
第39回 2009年の海外端末市場を振り返る
第38回 LGの「新チョコレート」がスゴイ - 21:9ディスプレイ搭載の「LG BL40」
第37回 いよいよ中国でもiPhoneを発売 - 出だしは不調?
第36回 WiMAX/Wi-Fi/W-CDMAに対応した「3W」端末がSamsungから登場
第35回 Nokiaが3G対応ミニノート「Booklet 3G」発表 - ノートPC市場参入の狙いとは
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第33回 中国にも3Gの時代がやってきた!! - 各社のサービスや戦略を紹介
第32回 iPhone 3G Sへの買い替えでiPhone 3Gが中古市場に登場?
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第30回 新型iPhone対抗端末? - Nokiaのフラッグシップ端末「N97」がいよいよ登場
第29回 アプリのメーカー直接配信時代がやってくる
第28回 海外メーカーが韓国市場にスマートフォンで参入開始
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第26回 滑り出し好調なNokiaのタッチUI端末「5800 XpressMusic」 - iPhone超えも?
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第24回 "Appleの理論"が通じない香港、iPhoneの単体販売を開始
第23回 iPhoneを脅かす存在になるか? Nokia 5800 XpressMusicが登場
第22回 日本向けOMNIAの姉妹品? 韓国でHaptic 2が発売開始
第21回 パケット通信+無線LAN定額がトレンドの香港
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第19回 カシオの海外進出が期待できる? - ソフトバンクとの端末供給合意
第18回 日本で増加する中国メーカー端末
第17回 マルチメディアへの対応を強化するBlackBerry
第16回 香港におけるiPhone 3G - SIM差し替えは当たり前
第15回 Motorola、新型「明」で中国市場奪回なるか
第14回 LGのデザイン携帯"Secret"、その秘密に迫る
第13回 Appleの発表を待たずに「3G iPhone」の発売が確定
第12回 中国の通信事業者6社が3社に再編
第11回 iPhone拡販のために販売戦略を変更するApple
第10回 不振のMotorola、事業建て直しはなるか
第9回 中国でTD-SCDMAの商用テストサービスが開始
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第7回 シャープの中国市場参入、勝算の道はどこにあるか
第6回 Sony Ericsson、海外事業の好調が日本事業の見直しに?
第5回 "3G版iPhone"はいつ出てくるのか?
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