24日に発表されたMotorolaの2008年第1四半期決算(2008年1-3月)は、特に携帯電話部門の不振が大きく表れた結果となった。同社は同部門の分社化により事業建て直しを図る予定だが、復活するには何が必要なのだろうか?

シェアの下落は深刻

同社の決算報告によると、第1四半期の携帯電話販売台数は2,740万台だった。アナリストなどによると、同社の顔とも言えるRAZRシリーズの最新作「RAZR 2」や、マルチメディアに対応した「Z8」の売上げ不振がそのまま販売台数低下を引き起こしたようである。同社とシェア2位争いを行っていたSamsungは4,630万台、また過去最大の販売台数を記録したLG電子は2,440万台を同期に販売し同四半期では4位につけた。MotorolaはSamsungの背中が全く見えなくなってしまっただけではなく、LG電子に肉薄されてしまうまでに落ち込みは激しいものとなっている。強みの北米市場においてもラインナップの不足からシェアを大幅に低下させた模様であり、同期の世界シェアはついに10%を切ってしまったようだ。

欧米に引き続き韓国でも発売開始された「RAZR 2」。Motorola復活の原動力とはならなかったようだ

特にハイエンド端末のラインナップが弱く、北米ではAppleのiPhone人気もあり他社品への乗り換えを選ぶ消費者も多かったようだ。ビジネス向け端末もQWERTYキーボードを備えたスマートフォン「MOTO Q」だけでは、好調なRIMのBlackBerryシリーズに太刀打ちするには力が弱すぎるだろう。BlackBerryはビジネス向けに特化しつつもラインナップを着々と広げ、今では5~10モデルを展開して利用者数を着々と拡大している。この、ターゲットを絞り製品コンセプトを明解にしてシェアを拡大したBlackBerryの戦略にこそ、今後のMotorola取るべき道が見えてくるのではないだろうか。

RAZRとの決別が必要か

Motorolaのヒット作、RAZRシリーズは日本でも発売されるなど全世界でヒットを飛ばし、累計販売台数は1,000万台以上を記録している。同社が2006年にシェア20%超えを記録できたのも、RAZRシリーズの牽引があったからこそだ。このため一時期は各メーカーからもRAZRライクな「薄型折り畳み・メタリックボディ」の端末が雨後の筍のごとく登場したのは記憶に新しい。中国では無名メーカーによる"RAZRコピー品"が数十機種も登場したくらいだ。

しかし今では、そのスタイルを継承するデザインの端末はMotorola以外からはほとんどラインナップされていない。他の大手4社のラインナップを見ても、端末デザインのトレンドはストレートかスライド型だ。また最近では端末の高機能化が進むと共に、大型タッチパネルディスプレイの搭載や両方向にスライドする形状など、端末のデザインバリエーションも大きく広がってきている。RAZRのデザインはたしかに一世を風靡したが、今では最先端の流行を感じられなくなってしまっているのが事実だろう。

初代RAZRが大ヒットしてから、MotorolaはRAZRシリーズのバリエーション展開を行った。メモリやカメラ機能の強化版、3G版やCDMA版などGSM以外の無線方式への対応などである。しかし消費者が求めていたのはRAZRのデザインそのものであり、機能が強化されたRAZRが高い値段で発売されても、安価になった従来のベーシック機能のオリジナル版RAZRに人気が集まっていったようだ。つまりRAZRシリーズが複数展開したあたりから、実は消費者の「Motorola離れ」は始まっていたのかもしれない。

2007年、デザインを一新して発売された後継機となるRAZR 2が発売されても、これまでのシンプルでスタイリッシュなイメージとの隔離で、消費者の好みとは離れた製品になってしまったのかもしれない。RAZR 2は背面に大型ディスプレイを搭載し、音楽再生キーを備えるなど「閉じたままでも音楽再生が利用できる」マルティメディア機能も売りとなっている。しかし「スタイリッシュな端末」なのか「高性能端末」なのか、製品の特徴が分かりにくくなってしまっているように思えるのだ。

すなわちRAZR 2は「どのような消費者が求める端末」なのか、製品のターゲットが明確になっていないことが販売不振を引き起こしているのではないだろうか。RAZRのコンセプトは「最先端ファッション」であったはずが、高機能化によってあいまいな製品になってしまったというわけだ。

製品ターゲットがわかりにくい同社製品の店頭広告例(MOTO U9)。音楽携帯なのかスタイリッシュ端末なのか、ターゲットが見えにくい

今後「RAZR 3」が出てくるかどうかはわからないが、RAZRは原点に返り「デザイン」に特化した、ターゲットの明確な製品に戻す必要があるのではないだろうか。また、マルチメディア系や高機能端末は、RAZRとは決別した全く別のラインを投入する必要があると考えられる。すなわち、RAZRのヒットという栄光は過去のものとし、これまでとは全く異なる製品展開を行うことが、同社の復活の鍵になるように思えてならない。