今年もスペイン・バルセロナで世界最大規模の移動体通信総合イベント「Mobile World Congress 2008」が開催された。2月11日から14日の4日間、1,000を超える世界中の関連企業が一堂に会し、各企業ブースでは新製品の説明や商談などが行われたほか、各種カンファレンスも頻繁に開かれた。携帯電話端末メーカーもこのイベントにあわせて新製品を発表することが増えており、3月にドイツ・ハノーバーで開催される「CeBIT」に取って代わって「各メーカーの新製品発表会」という位置づけも担うようになってきている。

バルセロナ市内はイベントの案内で埋め尽くされている

NokiaやSamsungブースは大混雑

携帯メーカー大手5社(Nokia・Samsung・Motorola・Sony Ericsson・LG)も端末を中心とした展示ブースを構えており、各ブースは最新端末にいち早く触れようとする来訪者で賑わいを見せている。しかしその賑わいにも、メーカー間の最近の力の差が如実に現れていたようだ。

シェアトップのNokiaは、事前に新製品の発表については一切触れていなかったが、会期に合わせて4製品を発表。ブース内はまるで満員電車の中のような込み具合であり、デモ端末にゆっくりと触れる時間すら取れないくらいだ。またSamsungも、同社の技術とデザイン力を集大成した新製品を大々的にアピールするなど、やはり多くの来訪者を集めていた。

一方Windows Mobileベースの新しい概念を持った製品「XPERIA」を始め、大量の新製品を投入するSony Ericssonには勢いを感じさせられた。成長率では他メーカーを大きく引き離している同社だが、それがそのまま新製品の数にも表れているようだ。LG電子も「chocolate」と「Shine」のシリーズのヒットの勢いを消すまいと精力的に新製品を発表し、上位4社に引き離されまいという雰囲気が感じられた。

来訪者の絶えないSamsungブース。Nokiaも同様で、時間帯によってはブースの写真を取るのも困難であった

LG電子ブースではおなじみのダンスショーは無かったものの、一押しであるハイエンド端末Viewtyの展示に力を入れていた

不振のMotorola、脱却の道はあるか

一方Motorolaは、昨年からの販売不振がそのまま展示ブースでも見て取れるようであった。ブースに入って真っ先に目に付くのは特別仕様のBluetoothヘッドセットだ。ダイヤモンドを散りばめた超豪華な特別仕様品であり、価格は「宝石や貴金属と同レベル」(説明員)、販売先も「携帯ショップだけではなく貴金属店など」(同)とのことで話題性の高い製品である。しかし、本体ではなくアクセサリが話題の中心であるのには若干寂しさを感じてしまう。新機種の展示も他社と比較して少ないなど、RAZRシリーズで一世を風靡していた時代を思い起こすと寂しい感じがしたのは否めない。

このように、各メーカーの現状と勢いがそのまま展示内容に現れていたのは大変興味深い。もちろんメーカーによっては、あえてコンシューマー向けの展示には力を入れない、と考えるところもあるだろう。しかし冒頭にも書いたように、今やこのイベントは各社の戦略的新製品を発表する場にもなりつつある。世界中から多数の報道関係者が集まることもあり、各社のブース内容はそのまま、メーカーの今年の戦略を表すものとして報道されることだろう。不振のMotorolaには、ぜひとも「次」を感じさせる展示に力を入れてもらいたいと感じさせられた。

ブースに入って最初に目に入るのがこのダイヤモンドBluetoothヘッドセット。話題性はあるが、注目度という点では今ひとつであったようだ

ブース横にあったノスタルジックな広告。Motorolaが栄光を取り戻す日は再びやってくるのだろうか?