1月24日、Nokiaは2007年通年および同第4四半期(10-12月)の決算報告を発表した。2006年に引き続き良好な業績を残した同社の決算内容から、昨年の海外携帯電話市場の動きを考察してみよう。

2007年も好調だったNokia

2007年も好調な伸びを示した携帯電話業界

Nokiaの2007年通年の業績は、売上高が前年比24%増、純利益が同67%増と絶好調であった。中でも携帯電話端末の販売台数は4億3,710万台に達し、昨年を26%も上回っている。ちなみにこの数字は、1日あたりに直すと約120万台である。Nokiaの見積もりでは業界全体の端末販売台数は11億4,000万台で、これは前年比16%増と引き続き成長が続いていることを示している。なおNokiaの業績は業界の平均を60%も上回っており、同社の好調さを裏付けている。

地域別では今年も新興市場の成長が著しく、中国やインドなどは携帯電話普及率がまだまだ低いこともあり、各メーカー共に毎年売り上げを伸ばしている。Nokiaの端末販売台数を見ても中国、アジア、中東およびアフリカの各地域で前年比約4割増となっており、この3地域だけで同社全体の販売台数の60%を占めるに至っているのだ。同社は昨年、「Nokia 1200」や「Nokia 2630」などのエントリーモデルを年間7機種も投入しており、新興市場にも大きな力を注いでいることがわかる。

新興市場向けのエントリーモデルながら、薄型でラジオも搭載した「Nokia 2630」

2007年の端末トレンドは「スリム」と「高機能」

ミッドレンジ向けながら金属素材とシンプルなストレートスタイルで人気となった「Nokia 6300」

では、昨年の海外市場における端末のトレンドを見てみよう。Nokiaの販売台数で目立った端末のひとつが「Nokia 6300」だ。6300は金属素材をボディーに採用した厚さ11.7mmの薄型ストレート端末であり、スリムなスタイルと高級感ある仕上げが各国で人気を集めている。Nokia以外で業績が好調だったSamsungやSony Ericssonもやはり薄型スリム形状の端末ラインナップを主力としており、これが昨年の端末デザインの流行だったと言えるだろう。

一方、Nokiaはコンバージェンスデバイス(多機能端末)や「Nseries」「Eseries」といったスマートフォンの出荷台数も大幅に伸ばしている。これは、先進国などではより高機能な端末が人気となっており、高性能カメラやインターネット接続など携帯電話の利用スタイルが高度化していることを物語っているのだろう。すなわちデザインの良いスリムな端末が売れる一方で、より機能を強化した「高機能端末」を求める消費者が年々増えてきているということでもあるわけだ。

ところで、携帯メーカー大手5社の中ではMotorola 1社のみが業績を落としているが、これは同社の昨年の端末ラインナップを見てみると理解できそうだ。同社は市場トレンドの「薄型」「多機能/スマートフォン」のラインナップが弱いのだ。RAZRシリーズの大ヒットの後、同社は製品展開をRAZRと同類の「折り畳みスタイル」に求めていったが、これが世界市場のニーズとはずれているのだろう。またスマートフォンも、MOTO Qの出荷が遅れるなどNokiaやHTC、Research In Motionなどに大きな遅れを取っている。トレンドへの乗り遅れがまさに同社の「一人負け」の結果を導いてしまったわけだ。

「Ultraシリーズ=薄型スリム」を印象づけるSamsungの戦略は、市場ニーズに見事にマッチングした

日本投入モデルはNokiaの売れ筋モデル

ところで、Nokiaは日本市場にも数機種の製品を投入している。昨年はソフトバンクモバイルから「Nokia N73」(705NK)が発売され、今年は後継機として「Nokia N95」(X02NK)が、またNTTドコモからは「Nokia 6120 classic」(NM705i)が発売される予定だ。

このうちN73とN95は、マルチメディアとインターネット機能に特化したNokia Nseriesに属する製品である。昨年のNseries端末の中で最も販売台数が多かった端末が、実はこのN73とN95、そしてN70であった。また6120 classicも、ミッドレンジ向けのスマートフォンとして各国で人気のモデルだという。日本でのNokiaのシェアはまだまだ低いが、日本の事業者が採用した端末とNokiaの売れ筋の端末が、実は同じものであったという点は非常に興味深い。

昨年は他にもLG電子の「chocolate」(ドコモ・L704i)や「Shine」(同L705iX)など、海外でのヒットモデルの日本発売/発表が続いた。これらは海外だけではなく日本でも競争力ある製品になりうるということなのだろう。またSamsungも日本でのラインナップを強化しており、海外でヒットした「Ultra Edition」シリーズを日本向けに機能強化したモデルを増やしている。日本の市場も着々と海外メーカーが地位を確保しつつあり、シェアの数字はさておきファン層を確実に増やしているのではないだろうか。