こんにちは、阿久津です。Microsoftのタブレット型コンピューター「Surface(サーフェス)は日本国内で未発売ながらも、その代わりとしてASUS製タブレット型コンピューターなど、いくつかの選択肢は用意されました。そのOSとなるWindows RTは、ARM SoCプラットフォーム上で動作するWindows OSの一種ですが、x86/x64用デスクトップアプリは動作せず、ARM SoC向けに開発したデスクトップアプリも署名が必要です。

そのため、Windows RT上で実行できるのは、ハードウェアベンダーがバンドルした各アプリケーションのみ。ユーザーによる入手経路はWindowsストアに限られてしまいます。しかも同ストアで提供できるのは、Windows RT対応を表明したWindowsストアアプリに限られ、デスクトップアプリは配布できません。

この他にもデバイスドライバーを起因とする周辺機器の対応制限や、標準添付されるWindows Defender以外のウイルス対策ソフトが選択できないなど、残念ながら従来のWindows OSを想定、もしくは同等の使い方を求めるユーザーにWindows RTは制限だらけのOSとなります。非公式情報ですがWindowsストアアプリは3万5,000本を超え、充実し始めましたが、それでも長年蓄積してきたデスクトップアプリの数にはほど遠く及びません。

このように欠点を挙げ連ねますと、Windows RTを選択するメリットが皆無のように思えてしまいますが、事実上ゼロから開発されたOSのため、同等の能力を持つハードウェア構成であれば、Windows 8よりもWindows RTの方が軽快に動作します。また、省電力設計もARM SoCの能力を最大限に活かせるため、OSとして見れば優位に位置するのは事実でしょう。このようなWindows RTですが、セキュリティ研究者であるclrokr氏はカーネルのぜい弱性を利用して未署名のデスクトップアプリを実行可能にしたそうです。

The Vergeの記事によると、あくまでも実行できるのはARM SoC向けデスクトップアプリに限られ、Windows RTを再起動すると未署名のデスクトップアプリを実行できなくなるといった制限はあるとのこと。後日報じられたTHE NEXT WEBの記事によると、同ぜい弱性はセキュリティホールにはなり得ないというMicrosoftの調査結果を発表。緊急対応する予定はないと報じていますが、今後のアップデートでぜい弱性をふさぐ可能性は大でしょう。

残念ながら筆者はWindows RTマシンを所有していないため、この脱獄(ジェイルブレイク)を試すことはできませんが、なかなか興味深い試みです。すぐさまWindows RTを取り巻く環境に変化が生じる訳ではありませんが、クローズドな環境に一石を投じる出来事として紹介しました。

さて、日本国内では2月7日から正式リリースされる「新しいOffice(Office 2013)」ですが、MSDNやTechNetなどに参加している方は既にお使いの方も少なくありません。新しいOfficeはMicrosoftのオンラインストレージサービスであるSkyDriveを保存先として使用できるといったクラウド機能がポイントですが、Word 2013などを使用する際は、Microsoftアカウントや組織の独自アカウントによるサインインを求められます。しかし、従来のOfficeスイートと同じく、あくまでも保存はローカルディスクでよい、という方もおられるでしょう。そこで今週はサインインせずに新しいOfficeを使用可能にするチューニングをお届けします。

1. 管理者権限でレジストリエディターを起動します。
2. HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\15.0\Common\SignInキーを開きます。
3. DWORD値「SignInOptions」を作成し、値のデータを「3」に変更します。
4. [F5]キーを押してからレジストリエディターを終了します。

これでチューニングが終了しました(図01~06)。

図01 [Win]+[R]キーを押して「ファイル名を指定して実行」を起動し、テキストボックスに「regedit」と入力して<OK>ボタンをクリックします

図02 レジストリエディターが起動したら、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\15.0\Common\SignInまでキーをたどって開きます

図03 SignInキーの右ペインを右クリックし、メニューから<新規>→<DWORD値>とクリックします

図04 値名を「新しい値 #1」から「SignInOptions」に変更します

図05 DWORD値「SignInOptions」をダブルクリックし、値のデータを「3」に変更して<OK>ボタンをクリックします

図06 操作を終えたら[F5]キーを押して設定内容をシステムに反映させた後、<×>ボタンをクリックしてレジストリエディターを終了させます

それでは結果を確認してみましょう。Word 2013など任意のOfficeアプリケーションを起動してください。するとサインイン処理が行われず、デスクトップアプリが起動します。図07はMicrosoftアカウントでサインインしたものですが、ユーザー名やアイコン、模様などが右上に表示され、ファイルの参照先としてSkyDriveなどが並んでいます。しかし、チューニング後となる図08はそれらが一切なくなり、シンプルな構成になったことにお気付きでしょう(図07~08)。

図07 こちらは初期状態のWord 2013。サインイン済みを示すユーザー名およびアカウント画像や模様と、参照先としてSkyDriveが一覧に並びます

図08 こちらはチューニング後のWord 2013。未サインイン状態のためシンプルなウィンドウフレームとなり、SkyDriveやその他の参照先が選択できなくなります

DWORD値「SignInOptions」は、文字どおりサインインに関する動作を設定するエントリで、初期状態もしくはデータ値が「0」の場合はMicrosoftアカウントもしくは組織のアカウントによるサインインを求められます。「1」の場合はMicrosoftアカウントのみ。「2」は組織のアカウントのみ。そして「3」ではサインインを無効にします。もちろんMicrosoftアカウントと連動するサービスも使用できなくなりますので、その点を踏まえて本チューニングをお試しください。

それでは、また次号でお会いしましょう。

阿久津良和(Cactus