こんにちは、阿久津です。最近ではデスクトップPCとノートPC。もしくはネットPCの普及も相まって、据え置き型ノートPCとネットPCといった組み合わせで、"一人数台"の環境を保有している方が多くなってきました。それぞれを組み合わせた利便性はさておいて、問題は複数のコンピュータに導入したOS環境を、どのように維持するのか、という点ではないでしょうか。

例えばInternet Explorerの"お気に入り"ひとつ取っても、コンピュータAで登録したお気に入りをコンピュータBで参照するには、互いに共有フォルダを作成し、インターネットショートカットファイルをコピーするか、ネット上でブックマークを管理するソーシャルブックマークの導入が必要となるでしょう。Windows OSには、アカウント情報やユーザーデータをサーバ上で管理する「移動プロファイル」という機能を備えていますが、ドメインサーバの構築が必要となるため、個人ユーザーが同環境を拘置するには、ハードルが高くなってしまいます(図01)。

図01: 「ユーザープロファイル」ダイアログからプロファイルの種類を変更できますが、ドメインに参加していないコンピュータでは、ローカルプロファイルしか選択できません

そこで考えられるのが、一部のユーザーフォルダをサーバ上に構築するチューニング。Windows OSでは、通例的に各ユーザーフォルダの場所をレジストリ上の、HKEY_CURRENT_USER \ Software \ Microsoft \ Windows \ CurrentVersion \ Explorer \ User Shell Foldersキーで管理しているのをご存じでしょうか。例えばアプリケーションデータを格納する「%USERPROFILE% \ AppData \ Local」フォルダは、複数行文字列値「Local AppData」で制御され、データ値には先のフォルダ情報が格納されています。もちろん環境変数でも定義されていますが、こちらはあくまでも二次的なもの。ユーザーログオン時にレジストリ情報を読み込み、各フォルダの場所を把握しているのです(図02)。

図02: HKEY_CURRENT_USER \ Software \ Microsoft \ Windows \ CurrentVersion \ Explorer \ User Shell Foldersキーでは各ユーザーフォルダを管理しています

そこで、今回は各ユーザーフォルダを共有フォルダ上に作成し、共有するチューニングを行ないましょう。ここではWindows Vistaをサーバとしていますが、Winodws XPでもWindows Serverでも問題ありません。本稿では割愛しますが、Linux+Sambaという構成でも細かい調整を行なえばサーバ化も可能です。

まずは、サーバーとなるコンピュータ上で「\ Profiles \ {ユーザー名} \ Favorites」を作成し、プロパティダイアログの<共有>タブから起動する「詳細な共有」ダイアログで共有設定を行ないましょう。この際、誰でもアクセスできる「Everyone」のアクセス許可をすべて解除し、参照可能なユーザーアカウントを追加して「フルコントロール」を許可します。なお、サーバ側にアカウントがない場合はあらかじめ作成してください。最後に別のコンピュータから共有設定を行なったコンピュータにアクセスし、共有フォルダが表示されれば準備完了です(図03~08)。

図03: データを格納するコンピュータ上でフォルダを作成しましょう。ここではルートから「\ Profiles \ kaz \ Favorites」を作成し、共有設定の準備を行ないます

図04: 次に「Profiles」フォルダ下に作成したサブフォルダ「kaz(ユーザー名)」を右クリックし、メニューから<プロパティ>を選択します

図05: プロパティダイアログが起動したら<共有>タブにある<詳細な共有>ボタンをクリックします

図06: 「詳細な共有」ダイアログの<このフォルダを共有する>をクリックしてチェックを入れてから、<アクセス許可>ボタンをクリックします

図07: 「グループ名またはユーザー名」セクションにある「Everyone」を選択し、「読み取り」の<許可>をチェックオフします。次に<追加>ボタンで共有フォルダにアクセスするユーザーを追加してから「フルコントロール」の<許可>にチェックを入れ、<OK>→<OK>→<OK>とボタンをクリックしてください

図08: 別のコンピュータから共有設定を行なったコンピュータを開き、共有フォルダが表示されれば設定完了です

今度はインターネットショートカットファイルを共有フォルダに移動します。「%USERPROFILE% \ Favorites」フォルダと、共有フォルダの「{ユーザー名} \ Favorites」フォルダを開き、サーバー上にインターネットショートカットファイルをドラッグ&ドロップなどで移動してください(図09)。

図09: 「%USERPROFILE% \ Favorites」フォルダの内容を、サーバー上の「{ユーザー名} \ Favorites」フォルダに移動します

次にクイック検索やファイル名を指定して実行などから「regedit」を実行してレジストリエディタを起動し、HKEY_CURRENT_USER \ Software \ Microsoft \ Windows \ CurrentVersion \ Explorer \ User Shell Foldersまでキーをたどって開きます。複数行文字列値「Favorites」をダブルクリックし、値のデータを「\\ {コンピュータ名} \ {ユーザー名} \ Favorites」に変更して<OK>ボタンをクリックしてください。後はレジストリエディタを終了し、Windows Vistaに再ログオンしましょう(図10~12)。

図10: 「ファイル名を指定して実行」や「クイック検索」のテキストボックスに「regedit」と入力して[Enter]キーを押します

図11: HKEY_CURRENT_USER \ Software \ Microsoft \ Windows \ CurrentVersion \ Explorer \ User Shell Foldersまでキーをたどって開き、複数行文字列値「Favorites」をダブルクリックし、値のデータを「\\ {コンピュータ名} \ {ユーザー名} \ Favorites」に変更して<OK>ボタンをクリックします

図12: データ値の書き換えを終えたら、レジストリエディタを終了し、Windows Vistaに再ログオンしてください

それでは動作確認に移りましょう。今回の移動ターゲットはお気に入りアイテムですので、Internet Explorerを起動し、<お気に入り>ボタンをクリックしてお気に入りアイテムを表示させてみましょう。画面のように各アイテムが表示されれば設定完了です。なお別のコンピュータでも同様の手順でサーバー上のインターネットショートカットファイルを参照し、お気に入りアイテムが表示されます(図13~14)。

図13: Internet Explorerを起動し、<お気に入り>ボタンをクリックして、各お気に入りアイテムが表示されれば設定完了です

図14: 念のため別のコンピュータでも同様の設定を行ないました。ご覧のようにサーバー上のお気に入りアイテムが表示されています

デスクトップPCならば、これでチューニング完了ですが、常にネットワーク環境を確保できないモバイルPCの場合は、オフラインファイル機能も併用してください。共有フォルダを右クリックし、<常にオフラインで使用する>を選択すれば、ターゲットとなるフォルダのオフラインファイルをローカルディスクに作成し、ネットワーク接続環境がない場合も、共有フォルダ内のファイルにアクセスできます(図15~17)。

図15: 共有フォルダを右クリックし、メニューから<常にオフラインで使用する>を選択します

図16: 自動的にオフラインファイルの作成が行なわれます。完了後は<閉じる>ボタンをクリックしてください

図17: ご覧のようにファイルやフォルダにオフラインファイルを示すオーバーレイアイコンが付加されれば設定完了です

今回はお気に入りファイルだけで誌面が尽きてしまいましたので、他のユーザーフォルダに関する設定や注意点は、次号までお待ちください。

それでは、また次号でお会いしましょう。

阿久津良和(Cactus)