09年以降、各種デバイス上にウィジェット・プラットフォームが普及

ウェブ上およびPCのデスクトップを中心に、ウィジェットが着実に普及しています。その背景に、企業によるプロモーションでの利用増加があり、質の高いコンテンツが提供されたことで需要の拡大につながりました。そして、2009年以降はインターネットが楽しめる様々な機器(デバイス)に、「ウィジェット」普及の波が訪れようとしています。中でも特に注目を集めているのが、パーソナルユースの「携帯電話」リビングユースの「テレビ」です。

利用目的やシチュエーションの違う両デバイスにおいては、「ウィジェットが果たす役割」そして「企業がマーケティング目的で利用する際のポイント」においても同様に相違があります。そこで、「ウィジェットプラットフォーム」を提供する視点から、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、ソニーの3社より、それぞれコメントをいただいたのでご紹介します。

NTTドコモに聞く「ウィジェットマーケティング」

NTTドコモ コンシューマサービス部 ネットサービス企画担当部長 前田義晃氏(左)、同ネットサービス企画 サービス戦略担当主査 山田和宏氏(右)

――キャリアとして「ウィジェットサービス展開」の狙いとは?

2001年に503iシリーズを発売した際、「iアプリ」(Javaプラットフォーム)を導入しました。以来、多種多様なアプリが提供されており、多くのお客様にご利用いただいております。ただ、現状のiアプリではひとつずつしか起動ができないという課題もありました。そこで、デバイスの性能向上に基づき、アプリのマルチタスクを実現した新サービス「iウィジェット」をリリースしました。

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「iウィジェット」では、利用者の好みに応じて最大8個のウィジェットアプリを登録できます。同時に、操作性の面で、従来のiアプリの利用状況を参考に、待ち受け画面に常駐させるスタイルではなく、専用ボタンよりウィジェット画面に切り替える形式に変更しています。また、ウィジェットとStar対応iアプリとを連携させれば、携帯電話本体にある機能(アドレス帳、メール等)との連携を行なうことも可能となります。

このように様々なタイプのウィジェットが提供されることで、携帯電話のインターネットライフに、新しい世界観を提供できると考えています。

――企業がウィジェットを提供する際の条件は?

これについては、これまでのiアプリと同様です。iメニューサイトとしての掲載を希望される企業様に関しましては、企画書をご提出いただき、コンテンツ内容などに関する審査を行わせていただきます。企画から提供までに要する期間は、平均で3カ月程度です。提供されたウィジェットについては、企業ジャンルに該当する場合は自動的に登録(サイトへのリンク)されます。また、ウィジェットは、iメニューに掲載されたサイトの中で自由にご提供いただけます。なお、iメニュー以外で企業様独自のサイトとしてご提供される場合には、これまでのiアプリ同様に、手続きなどの必要はございません。

――企業がウィジェットだけをPR目的で配信したり、ウィジェット上に広告を配信したりすることは可能ですか?

可能ではありますが、やはり、ユーザーに利用してもらえるかどうか? という点が課題になると思います。

携帯電話の利用者にとって、パーソナルな領域に置くウィジェットだからこそ、コンテンツの質が非常に重要になります。単純に広告情報だけが表示されるもので支持されるかどうか? という点で疑問が残ります。

携帯電話の利用者からは、その目的や利用シーンからも「シンプル&使いやすさ」「利便性」という点が求められています。よって、ウィジェットを制作する際にはこれらの点を意識したうえで、企業が持つオリジナリティの高いコンテンツや情報を提供する必要があると思います。


ソフトバンクモバイルに聞く「ウィジェットマーケティング」

ソフトバンクモバイル プロダクト・サービス本部 コンシューマーサービス企画部 村山貴一郎氏(右)、同通信プラットフォーム開発部 三木静思氏(左)

――キャリアとして「ウィジェットサービス展開」の狙いとは?

ソフトバンクモバイルが掲げている「モバイルインターネット」をより気軽に、ユーザーに体験していただくために、ウェブと親和性の高い「モバイルウィジェット」をオープンなプラットフォームとして提供することにしました。

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また、携帯電話の待ち受け画面という一等地をオープンにしただけではなく、技術面から見ればAjax/ HTML/ CSS/ Flashと標準的なものを採用しましたので、PC向けにWebサイトやウィジェットを開発されている方々にとっても気軽に参入できる環境です。ユーザーにとっては、これまでのモバイルコンテンツとは違い、様々な場所や提供先から、好みの機能やデザイン、情報を自由に選択することができます。

モバイルウィジェットはユーザーにとって「新しいモバイルライフ」を実感できるサービスであり、「モバイルインターネット」の定着は、今後のモバイルビジネスを変えていく契機になると思っています。

――企業がウィジェットを提供する際の条件は?

特別な条件は一切ありません。技術仕様、配信方法、動作確認のためのエミュレータをすべて公開しておりますので、それらを利用して自由に開発・配信していただけます。また、開発したウィジェットを公開できる、ウィジェットストアを用意しましたので、こちらに投稿していただくことで、より手軽でかつ効果的にユーザーへ届けることができます。

――企業がウィジェットだけをPR目的で配信したり、ウィジェット上に広告を配信したりすることは可能ですか?

PCでの事例同様に、モバイルウィジェット、つまりユーザーに一番近い場所をぜひたくさんの企業様に使っていただきたいと思っております。ただ、ユーザーが待ち受け画面に設定しなければ効果はないと思いますので、コンテンツには+α(プラスアルファ)の要素が必要かと思います。

(後編につづく)

著者プロフィール : 竹下直孝

2001年 ソニー株式会社に入社。インターネットサービスを手掛ける部門に属し、利用したコミュニティサービスに関する事業企画を担当する。2005年に有志で「新しいネットメディアの開発」をコンセプトに、ウィジェットサービス「FLO:Q(フローク)」プロジェクトを発足。06年10月にブログパーツサービスを、07年11月にはPCデスクトップ・ウィジェットサービスをリリース。2009年1月現在、ブログパーツはサービス全体で月間1.8億インプレッションを保有、独自の広告モデルを展開中。デスクトップウィジェットについても、昨年末に10万ダウンロードを突破し、本格的にビジネスメニューの提供を開始。さらに、1月から国内で発売されるパーソナルコンピューター「VAIO」の新機種に管理ソフト「FLO:Q Widget Manager」のプリインストールを開始した(※一部、機種を除く)。