地下鉄の乗換通路と地下街のネットワーク

例外はあるものの、地下鉄とは基本的に地下を走っているものである。だから、駅施設は地下に設けられているし、複数の路線が接続する駅では乗り換え通路も地下に設けられる。ということは、地下鉄同士の乗り換え通路を歩いている分には、外が雨でも関係ないわけである。

また、「連絡駅」として路線図で繋いで表示している駅の間だけでなく、「連絡駅」として明示していない駅の間であっても、地下道あるいは地下街で繋がっていることもある。特に大都市の都心部にある繁華街では、そうした例が少なくない。さらに、その地下道や地下街がビルの地下商店街などと繋がっていると、ますますネットワークが広がることになる。

このように地下道を駆使して地上に出ないで広範に移動できる場所として、パッと思いつくところでは、東京駅近辺、新宿、銀座~有楽町~日比谷、梅田、天神がある。名古屋の名駅近辺や栄界隈は言うまでもない。

5月に札幌に行った時、北海道としても季節外れの(?)低温に見舞われて、気温が一桁まで下がって震え上がってしまったことがあった。ところが、札幌駅から大通公園(実際にはさらに南方まで延びているようだ)まで地下道が通じていたので、そこに逃げ込んで一息ついた、なんて経験もある。

意外なところでは、上野-御徒町間で中央通りの地下に駐車場を新設した際、その駐車場の上に地下道を設けたので、上野から御徒町までずっと地下で移動できることになった。雨や雪の日には、これがなかなか重宝する。最終的な目的地が地上であっても、最寄の出口まで地下を移動すれば、雨に影響される距離は最小限で済む。

それに、雨や雪に見舞われていなくても、冬場は屋外を歩いているだけでそもそも寒い。地下通路を歩いているほうが、その点、いくらかマシである。濡れたり冷えたりして風邪を引けば、仕事にも日常生活にも差し支えるが、そこまでいかなくても、身体が冷え切って頭の回転が悪くなっても嬉しくない。

副次的メリットとして、地下連絡通路や地下街につきものの商業施設を活用する機会ができる点も挙げられそうだ。福岡市営地下鉄で、空港線の天神駅と七隈線の天神南駅の間で乗り換えを行う際に天神地下街を通るようになっているのは典型例だが、意図的にやったことなのかどうかは知らない。

ちなみにこのケース、乗り換えに際して改札を出る必要があるのだが、改札を出てから再入場するまでのタイムリミットが90分と長いので、その間に食事でもちょっとした打ち合わせでもできてしまう(東京の地下鉄では、改札外乗り換えのタイムリミットは30分である)。

地下街・地下通路は地図で探す

ところが、そういう便利な地下街や地下通路の存在をどうやって把握するのか、という問題がある。いくら便利な存在であっても、場所がわからなければ存在しないも同然だからだ。

まず、鉄道路線図で「乗換駅」として繋がっているケース。これはわかりやすい。路線図では「つながっているかどうか」しか分からないが、鉄道事業者各社がWebサイトで公開している「駅構内図」を調べれば、通路の配置や出入口の所在、駅との位置関係はわかる。

地下鉄銀座駅の構内図。3つの地下鉄が乗り入れている銀座駅は地下街も実に広い

また、地図サイトで使用している地図は大抵、地下街や鉄道絡みの地下連絡通路の存在を明示しているものである。地図を利用することのメリットは、単に地下街や地下通路の存在を知ることができるというだけではなく、駅、ビル、各種の施設などの相互の位置関係と距離を把握できる点にある。駅構内図の場合、位置関係や通路の配置こそ正しく書かれているが、形状の面ではデフォルメされているので、位置関係と距離をしっかり把握するにはやや辛い。

幸い、スマートフォンが流行してきたおかげで、いわゆるガラケーよりも大きな画面でインターネットを介して地図情報や駅構内図の情報にアクセスできる環境にいる人は増えているはずだ。それを活用すれば、不慣れな土地で道に迷うことも少なくなるだろう。

ただし、地下街や地下通路には、GPS(Global Positioning System)のNAVSTAR衛星が発信している電波を受信できないという難点があるので(衛星は宇宙空間にいて、頭上から電波を飛ばしているのだから当然である)、GPSを使ったナビ機能に頼ろうとすると、ひょっとすると問題が生じるかもしれない。

そこは1つ、GPSという文明の利器にばかり頼らず、地下道や地下街に掲出されている地図と現在位置の情報を活用するなど、古典的なナビゲーションに関する経験を蓄積する機会でもあると、ポジティブに(?)考えてみても良いのではないだろうか。GPSに盛大に依存している米軍ですら、「GPSがなくても測位できるようにする技術」を真剣に検討している御時勢である(なんのこっちゃ)。