本連載の第16回で、窓側・通路側の選択における損得勘定と座席指定について取り上げた。この時は、窓側・通路側の選択に主眼を置いた話をしたが、実は座席ごとの有利・不利はそれだけでは終わらない。

ということで、今回は窓側・通路側以外の点に注目した「座席の選択」に関する話をまとめてみよう。

鉄道は大判時刻表の「列車の編成ご案内」を活用すべし

鉄道の特徴は、1つの列車が複数の「ハコ」で構成されていて、その「ハコ」によって多少の差異が生じる点にある。そこでまず参考にしたいのが、大判時刻表の巻末寄りに付いている「列車の編成ご案内」である。これは決して、伊達や酔狂で付いているわけではないのだ。

このページで知ることができる情報は、大別すると2種類ある。1つは「ハコの中での席番に関する情報」。なお、1つのハコの中で席を選択する際に問題になるのは、窓側・通路側の違いと後述する車端寄り・中央寄りの違いぐらいであろう。

ただし、接客設備の多様化と車種の多様化が進んでいる昨今では、さすがにすべての列車、すべての車両をカバーするには至らない。そこまで調べようと思ったら、時刻表に付属する情報だけでは不足であり、座席の選択について取り上げた書籍を別途、調達する必要がある。例えば、イカロス出版の『乗り物勝席ガイド』がそれだ。

もう1つの情報は、それぞれの列車が何両編成で、号車ごとにどのような違いがあるか(「普通車とグリーン車」「指定席と自由席」など)などだ。「列車の編成ご案内」が威力を発揮するのは、むしろこちらである。

一例を挙げると、東北新幹線と上越新幹線で使われている「E4系Max」がある。基本的には1~3号車(16両編成では9~11号車も)が自由席車、4~8号車(16両編成では12~16号車も)が指定席車という設定だが、列車によっては自由席車が増えることがある。そこで問題になるのが2階席である。

E4系Maxのうち、1~3号車(16両編成では9~11号車も)の2階席は収容力重視のため、3列-3列配置になっていて、しかもリクライニングシートではない。ところが、これらの号車の階下席と、指定席車として使われることがある4~8号車(16両編成では12~16号車も)は、2列-3列配置のリクライニングシートである。

Maxの自由席車2階は3列-3列シート、しかもリクライニングしない(これはE1系だが、E4系のものも似ている)

だから、E4系の列車で自由席車の2階を狙うなら、もしも自由席になっていれば4~8号車(16両編成では12~16号車も)が美味しいという結論になる。また、車窓を気にしなければ、どうしても人気が落ちる階下席を狙うという手もあるのは、第32回でも言及したとおり。

そのMaxにはE4系以外にE1系があるが、こちらは12両編成だから「Max○○」で12両編成の列車が該当する。こちらの3列-3列自由席車は1~4号車となっている。

さらにマニアックなことを言うと、新幹線では高速運転に伴う空力的な理由から、パンタグラフ付きの車両と両先頭車は乗り心地の面で不利だとされている。もっとも、最近ではパンタグラフ付きの車両は1編成中に2両しかないのが普通なので引き当てる確率は低いし、不利を跳ね返すためにサスペンションに工夫するケースも増えている。いくらなんでも、ここまで気にする必要はないかも。

列車ごとの車種の違い、ハコの中のポジションの違い

その「Max○○」をはじめとして、同じ愛称を持つ同じ系統の列車で、異なる複数の車両が使い分けられているケースがある。

例えば、JR北海道では札幌-函館間を走る「北斗」系列で、速い振子車両の「スーパー北斗」と振子ではない「北斗」がある。これは列車名で区別がつくので、時間帯に選択の自由度があれば、好みの列車を選ぶことができる。新青森-函館間を走る「白鳥」系列も同様で、「スーパー」の有無で車種を区別できる。

table class="Photo1" width="50" align="center"

「北斗」系列には、振子車両の「スーパー北斗」(左)と通常車両の「北斗」(右)があるが、列車名で識別可能

困るのは、車種の違いに関係なく同じ愛称を使っている「スーパーカムイ」(札幌-旭川)みたいなケースだ。新潟を拠点とする「いなほ」(新潟-秋田)や「北越」(新潟-金沢)も、車両によってリニューアルの度合に違いがあるので当たり外れが出やすい。こうなると「運任せ」の要素が増える。

このほか、1つのハコの中で有利・不利があるかどうか、という問題もある。実は、鉄道では基本的に、車両の中央は車端より揺れが少ないとされているので、車端寄りの席よりも中央の席のほうが好ましいと言えそうだ。その代わり(?)、車種によっては車端の席に電源コンセントを設けていることもあるので、「揺れより電源だ!」という向きは車端の席を優先すればよい。筆者はどちらかというとこっちだ。

なお、車端のデッキに近い席にいると、デッキとの境目にある自動ドアが開閉するたびにやかましい、という人もいるだろう。他人の通行だけでなく、自分がちょっと手を伸ばしたり立ち上がったりしただけでセンサーが働いてドアが開閉するのも、あまり気分がよいものではない。最近ではそのことに配慮して、タッチセンサーを使って明示的に「開ける」と指示しなければならない車両も少なくないが。

調子に乗っていろいろ書いていたら分量が増えてしまったので、鉄道以外の話は次回に取り上げることにしよう。