2012年から、首都高速と阪神高速が均一料金制から距離別料金制に移行した。これはETCの普及によって実現可能になったわけだが(だから、現金払いだと一律に上限料金になる)、この移行によって高くなるケースもあれば、安くなるケースもある。

どちらに該当するかは利用形態によるので、人によって事情は異なり、悲喜こもごもといったところだろうか。首都高速でいうと、「横浜線と東京線」「東京線と埼玉線」をまたいで行き来する機会が多い人には確実にメリットがありそうだが、どうだろうか。

首都高速の対距離料金は最短経路で計算する

対距離料金といっても、実際に走行した経路で計算するわけではなくて、入口ICと出口ICを基準にして最短区間で計算する。だから、渋滞回避などの事情で意図的に大回りの経路を選択したからといって、そのために料金が上がるわけではない。あくまで「どこから入ってどこから出たか」が基準である。

これは、途中でどこを通ったかチェックすることは物理的に不可能なので、こうせざるを得ない道理である。その点は、JRの「大都市近郊区間における大回り乗車」と似た話と言える。「首都高速では最短経路で計算」と覚えておけばよいと思われるので、あまり複雑なことにはならないようだ。

そこで実際に試してみたところ、最短距離をはるかに上回る超大回り走行を行ったにもかかわらず、確かに最短距離の料金で課金されていた。「基本的には」という但し書き付きなので、条件が揃うと例外が発生するのかもしれないが、一般的には最短距離で計算すると考えてよさそうである。

ところが阪神高速の場合、Webサイトを見ると「実際にご利用いただいた営業距離で料金が決まります。発着点が同じでも、乗継利用の有無あるいは乗継経路により料金が変わる場合があります」という記述がある。道路網の構成や経路選択の内容に違いがあるので、首都高速とは事情が違うようだ。

阪神高速道路のWebサイト

ちなみに大都市圏の鉄道の場合、事業者によっても規定に違いがあるほか、乗車券と定期券で扱いが違ったり、特定の区間に限定して利用促進・負荷分散のために経路選択が可能になっていたりと複雑な様相を呈している(大都市圏以外の鉄道は一部の特定区間を除いて利用経路どおりに乗車券を購入するから、さほど難しい話ではない)。それと比べるとまだしも、首都高速や阪神高速のほうがシンプルかもしれない。

NEXCOの高速道路には「2倍ルール」がある

では、NEXCO各社の高速道路はどうなのだろう?そこで、NEXCO中日本のWebサイトに掲載されていた解説文を抜粋しよう。

【複数の経路がある場合や、周回(ループ)の場合の通行料金】
高速道路の料金は、実走行距離に応じて課金を原則としていますが、入口ICから出口ICまでに複数のルートが存在する場合、「走行距離が最短ルートの2倍以内」であれば最短ルートの料金が課金されます。「走行距離が最短ルートの2倍を超える」場合や周回(ループ)走行では、実走行距離に応じた料金が課金されます。ただし、ドライブコンパスでは、「走行距離が最短ルートの2倍を超える」場合についても最短ルートの料金のみご案内しています。走行距離が最短ルートの2倍を超える遠回りの場合や、周回(ループ)の場合の通行料金についてはNEXCO中日本お客さまセンターにお問合せください。

また、同サイトには、「複数の経路がある場合の通行料金の計算方法」について、「よくある質問」として説明している。

NEXCO中日本のWebサイト。複数の経路がある場合の通行料金の計算方法を紹介している

早い話が、「実走行距離が最短距離の2倍以内なら最短距離で計算、2倍を超えたら実走行距離に合わせて計算」ということになる。首都高速や阪神高速のように規模が小さい高速道路網では、迂回ルートをとったところで最短ルートとの差分はタカが知れているが、NEXCO各社の高速道路となるとスケールが違うので、「2倍ルール」が出てくるわけだ。

もっとも現実問題としては、高速道路は速く移動するために利用するものだから、意図的に大回りの経路を選択する人はあまりいないだろう。例えば、東北自動車道の川口JCTから北関東自動車道の宇都宮上三川ICまで行くのに、理屈では以下のような超大回り経路をとることも可能である。

川口JCT~(東北自動車道)~岩舟JCT~(北関東自動車道)~高崎JCT~(関越自動車道)~長岡JCT~(北陸自動車道)~新潟中央JCT~(磐越自動車道)~郡山JCT~(磐越自動車道)~いわきJCT~(常磐自動車道)~友部JCT~(北関東自動車道)~宇都宮上三川IC

こんな大回りをする暇人は普通いない(笑)。

ただし、渋滞や通行止区間を回避するなどの目的で、平行する別ルートに迂回するぐらいのことは起きるだろうが、それなら「2倍ルール」の枠内に収まるだろう。ともあれ、この「2倍ルール」も頭に入れておいたほうが良さそうだ。とはいえ、実際にはETCを利用していると「請求されたものをそのまま払う」ということになってしまうだろうが。