有人窓口であれば問題なし

規模が大きな会社であれば、契約している旅行代理店があって、そこで出張などの交通・宿泊手配を委託していることがある。その場合、会社と旅行代理店の間で情報をやり取りするため、交通費や宿泊費の精算に関する経理上の問題は生じないだろう。

ところが、社員が自分で何か手配しなければならない場合は事情が違ってくる。それでも、会社でコーポレートカードを作成して、それで決済するような場合であれば、話はわかりやすい。事前に了承を得た内容の手配なら、それに従ってカードで決済したものはカード会社に記録が残って会社に請求が行く。だから、これも話はスッキリしている。

問題は、社員が自分で交通費などを立て替えておいて、後から伝票を経理部門に提出して精算する場合ではないだろうか。そうした場面では、「確かにこれだけの立て替えを行いました」と裏付けるための証憑、すなわち領収書が必要になる。

個人的経験からすると、旅行代理店のカウンターで手配した時は、何も言わなくても先方から「領収書はこの名前でお出しすればよろしいでしょうか?」と訊かれることが多い。筆者は個人事業主だから自分の名前で領収書を出してもらっているが、会社であれば社名を宛名にして領収書を書いてもらえばよい。これは簡単だ。

また、駅の「みどりの窓口」みたいな有人窓口の場合、黙っていると領収書を作成しなくても、頼めば作成してもらえる。旅行代理店のカウンターと同様、宛名を明記した領収書を作成してもらうには、有人カウンターの利用が必要だろう。

有人カウンター以外の場所では?

では、有人カウンター以外の場所ではどうか?

ネット予約サービスであれば、決済には事前に登録したクレジットカードを使う。だから、これもコーポレートカードの場合と同様に、ちゃんと記録が残るので話は簡単だ。といっても、カード会社の明細書では個別の決済の内容まで書かれていないから、それについては別途、記録を提出しなければならないかもしれないが。

では、機械で発券するものはどうだろうか。例えば、JRの指定席券売機がある。

実は指定席券売機の場合、すべての入力を終えて発券を行う際に、画面に「領収書」と大書したボタンを表示する。それをタッチしておけば、発券する乗車券類などと一緒に領収書も出てくる仕組みだ。ただし、この領収書は宛名が入らないので、金額の証明にはなるが、「確かに自分宛の領収書です」ということの証明としては弱い。宛名入りの領収書が必要な時は、後で「みどりの窓口」に行って領収書を発行してもらう必要がある。

同じように、宛名はないが領収書を出してくれる例として、自動券売機でICカード乗車券にチャージする場面が挙げられる。金額を指定して入金すると、その後に画面に「領収書」と書かれたボタンが表示されるので、それをタッチしておけば領収書が出てくる。ICカード乗車券のチャージでは、チャージ対象になったICカード乗車券の個体識別番号を領収書に印字するので、対象は区別しやすい。ただしセキュリティ上の理由から、下4ケタなど、一部だけを印字する場合もある。

また、ICカード乗車券では利用記録の印字が可能だし、Felicaリーダーが使えるPCがあれば利用記録を読み出すこともできるので、これも証拠を残すという意味では有用だろう。この利用記録のミソは、日付と利用区間を後から確認できる点にある。同じことは、「スルッとKANSAI」を初めとする磁気式のストアードフェアカードにも言える。これもカードの裏に利用記録を印字するので、後から確認するのは容易だ。

自動券売機でも記録を残せることがある

というわけで、領収書などの証拠を残す点からすると、最も面倒そうなのは自動券売機で切符を買った場合とワンマン運転の列車やバスで現金払いした場合ということになる。単に「A駅からB駅までの運賃がいくら」というだけなら確認する手段はいろいろあるが、「実際にA駅からB駅までの運賃を支払いました」という証拠を残すとなると話が違う。

全部が全部というわけではなさそうだが、自動券売機で切符を購入した際に、切符とは別に領収書あるいはそれに類するものを発券してくれる場合もある。例えば、広島高速交通(アストラムライン)の自動券売機で切符を購入した時は、切符とは別に購入を証明する用紙を発行する機能があった。

その点、「ワンマンカーで現金払い」の場合には証憑の残しようがないのだが、これは経理部門と相談するしかないかもしれない。