ICカード独特のポイント・割引事情

ICカードが普及する前、磁気カードを使用するストアードフェアカード(英語で書くとstored fair card)が各所で導入された。いずれも小銭を用意せずに電車やバスを利用できる点は同じだが、読み取り装置にタッチするだけで通過できるICカードのほうが、利便性の面で優れている。また、ICカードは交通機関の利用だけでなく、電子マネー機能を持っているものが多い。

磁気カードの多くは購入額より多い利用が可能(いわゆるプレミアム)だったのに対し、ICカードはそうした制度が廃止されているケースが少なくない。その代わりといってよいのかどうかわからないが、ポイント制度や割引制度を設定していることがある。

もっとも、事業者ごとに制度の内容が異なるので、自分が利用するICカード乗車券の制度をきちんと理解しておく必要がある。大抵は事前登録手続きが必要だ。いちいち登録しなくても割引が適用されるのであれば、出張などの短期滞在時でも利用できそうだが。

ポイント制度や割引制度の内容は、以下のように大別できる。

  • チャージ(積み増し)の際、自動的に一定比率のポイントを付ける
  • 交通機関の利用額に応じてポイントを付ける
  • 電子マネー機能の利用額に応じてポイントを付ける

最初の方法は、磁気カードの発想に近い。それに対して後二者は、詳細に利用状況を把握できるICカードならではのやり方と言える。ICカードには個体識別を行うための番号が、カードごとに割り振られているからだ。

例えば、「Suica(JR東日本)」)は「Suicaポイントクラブ」に会員登録することで、電子マネー機能を利用した場合にのみポイントが付く。同様の方法をとっているのが、「IruCa(ことでんグループ)」だ。逆に、電子マネー機能ではポイントが付かず、電車に乗った時にポイントが付く例としては、「はやかけん(福岡市交通局)」、「SUGOCA(JR九州)」がある。

さらに、電子マネー利用時と乗り物乗車時の双方にポイントが付くのが、「nimoca(西日本鉄道)」だ(ただし、ノーマルのnimocaには電子マネー機能によるポイント付与がなく、電車・バス利用時のみポイントが付与される)。

このほか、2011年にスタートする「manaca(名古屋市交通局・名古屋鉄道など)」も、利用額に応じたポイント付与を予定している。

興味深いのが、スルッとKANSAI加盟社局で利用可能なICカード乗車券「PiTaPa」だ。「PiTaPa」は一般的な事前チャージ方式ではなく、ポストペイ(後払い)を使用している。1ヵ月ごとに利用額を集計して、利用回数や利用額などに応じた割引を適用したうえで、割引後の金額を銀行口座から引き落とす方式だ。利用状況が支払額にストレートに反映されるため、メリットを理解しやすい。

カードを選ぶのではなく、選択・運用で工夫する

もし、利用する路線において複数のICカード乗車券が競合していれば、最もメリットが大きいものを選ぼうとするだろう。しかし実際は、自分が住んでいる場所や利用している路線によってICカード乗車券の選択肢は固定される。そのため、「別の方法でもっと得する方法はないか?」と工夫することになる。

例えば、「Suica」であれば、前述したように「Suicaポイントクラブ」でポイントを溜め込むことができる。もっとも、次回で詳しく説明するつもりだが、種類によってはポイントクラブを利用できない点には注意が必要だ。

また、クレジットカードと連携してオートチャージを行うと、チャージするたびにクレジットカードの利用額が増えるため、金額に応じてポイントを獲得できる。同じチャージでも現金チャージより有利だ。

JR東日本の場合、「ビューカード」でSuicaにオートチャージすることで、ビューカードにポイントがつく。さらに、そのビューカードのポイントをSuicaのチャージに利用できる。

また小田急電鉄のように、自社ブランドのクレジットカードでオートチャージしたPASMOで小田急線を利用した時に限定して、クレジットカード自体の利用額とは別個に独自ポイントを付けている例もある(このポイントもクレジットカードにつく)。

近鉄グループのKIPS PiTaPaカードは、割引後に後払いする額に合わせてポイントがつく仕組みをとっているが、これも考え方は同じだ。