高速道路は意外と田舎を通っている

筆者は現在、某携帯電話事業者のデータ通信サービスを利用しているが、その前はPHSでデータ通信を行っていた。PHSは都市部では速度はともかくほぼ確実につながるのだが、田舎に行くと事情が違ってくる。

実際、関越自動車道の某サービスエリアで電波が弱すぎて接続できず、頭を抱えてしまったことがあった。地図を見るとわかるのだが、高速道路は意外と人里離れた場所を通っていることが多い。そうなると、当然ながら基地局のカバー範囲を外れる可能性が高くなるし、電波の出力が弱いPHSなら尚更だ。

携帯電話のデータ通信サービスに変えてからは速度も接続性も向上したが、公衆無線LANサービスが利用できればそれに越したことはない。NEXCO中日本、続いてNEXCO東日本が主要サービスエリアにFREESPOTを導入したことで、一気に高速道路のネット環境が良くなった。

今さら説明する必要はないかもしれないが、FREESPOTは周辺機器メーカーのバッファローが旗を振っている、無料の公衆無線LAN接続サービスだ。ESS-IDを「FREESPOT」に、暗号化の設定は「なし」に設定することで接続できる。ホテル・飲食店・公共施設などでの設置例が多いが、これが高速道路にも入ってきたわけだ。

とはいうものの、高速道路では電源付きのテーブルまで用意してくれている場所は少ない。FREESPOTの検索画面では、施設の種類や所在地に加えて電源の有無を条件に指定した検索も行えるので、そこで最新情報を入手するとよいだろう。

写真は上信越自動車道・横川SA(上り線)。ここでも、FREESPOTを利用できる

SA/PAでFREESPOTを利用する時の注意点

もっとも、FREESPOTは無料で自由に利用できるとはいうものの、利用時に注意しなければならない点はいろいろある。

まず、やり取りするデータやアクセスする先には注意したい。SSLで保護されているHTTPS通信なら脆弱度は低くなるが、電子メールを受信する際に用いるPOP3でパスワードの暗号化を行っていない場合はリスクが高まる可能性がある。

FREESPOTのアクセスポイントにはプライバシーセパレータという仕掛けがあり、同じアクセスポイントに接続しているクライアント同士での通信を遮断できるようになっている。フリースポット協議会では、プライバシーセパレータ付きのアクセスポイントを導入するよう推奨しているが、(特に設置時期が古いと)プライバシーセパレータがない可能性も否定はできない。それに、自分が利用している場所のアクセスポイントがプライバシーセパレータ付きに該当するかどうかは、利用者の立場では把握できない。

また、利用可能なプロトコルに制約が課せられている場合もある。例えば、中央自動車道の某サービスエリアに設置されているFREESPOTではSMTPが遮断されているようで、メールの受信はできても送信ができなかった。しかし、どうしても送信したいメールがあったので、いたん無線LAN接続を切って、携帯電話で発信し直すことで解決(?)した。

これはおそらく、spamメールの送信に悪用されることを避けるためだろう。誰でも自由に利用できるからこそ、悪用のリスクも高い。そう考えると、SMTPを規制する事情は理解できるが、何とか折り合いを付けられないものかとも思う。

このほか、FREESPOTに限らず公共の場のインターネット接続サービスではよくある話だが、VPNも利用できないと考えたほうがいい。例えばホテルなどのインターネット接続でも、PPTPで自宅のLANにVPN接続しようとして失敗した経験は多い。

では、わざわざサービスエリアでFREESPOTを利用するメリットは何かという話になるが、基本的には「移動体データ通信サービスより速い(ことが多い)」に尽きると思う。ストレスなくネット接続を行えれば、ニュースや渋滞情報の把握も容易になる。大きなサービスエリアなら渋滞情報を検索できる端末機があるが、大抵は混雑している。自分のPCでパッと確認できれば、そのほうが気楽だ。

ここまで取り上げてきたのは高速道路の話だが、上述した検索画面で捜してみるとわかるように、一般道に設けられている「道の駅」でも、FREESPOTが導入されている。休憩や買物の拠点というだけでなく、ついでにネット接続もできるのであれば便利なことこのうえない。

FREESPOTの設置場所を検索する画面。「道の駅、高速SA/PA」と「無料で電源が利用可能」という条件で検索したら20件出てきた