【コラム】

あの素晴しいトイをもう一度

12 ジグソーパズル(3) - 定番を作り出した日本のジグソーパズルの父

    野口智弘  [2007/03/29]

    海外渡航が珍しかった1950年代から世界を飛び回っていたという矢野満相談役。なんと御年82歳(!)とのこと

    ジグソーパズルの秘密に迫る連載の最終回。前回、前々回ではおもにジグソーパズルの現状と最新の商品を紹介してきたが、日本にジグソーパズルが持ち込まれた最初期については筆を割かないできた。そこで今回は、やのまんの創業者である矢野満相談役に登場していただき、ジグソーパズルの黎明期についての貴重な話をうかがった。矢野相談役はジグソーパズルを日本に導入し、日本ジグソーパズル界の父として長く業界を引っ張ってきたパイオニア。相談役を55年に渡って支え続けた夫人の矢野美津子会長にも立ち会っていただいた。

    ――まず最初におうかがいしたいのですが、やのまんという社名の由来はやはり相談役の「矢野満」というお名前から?

    「ええ、中学ぐらいときから『やのまん』ってあだ名でね」

    美津子夫人「『まんちゃん、まんちゃん』って呼ばれて。私と結婚したときも『やのまん』という名前で会社を興したい、ということをよく言ってましたよ」

    ――なるほど。創業は1954年(昭和29年)に大阪でなされて、最初は雑貨やおもちゃの輸出を行い、のちに海外製おもちゃの輸入を手がけられたとのことですが、ジグソーパズルに関わることになったきっかけは?

    「1973年に(昭和48年)に当時の田中角栄首相がモナ・リザを日本に持ってくるというニュースを聞いたんですね。僕はそのころドイツのニュルンベルクとか、フランスのパリの見本市に毎年行ってましたから、モナ・リザと聞いて『あっ』と思ってね。向こうにあるモナ・リザのジグソーパズルを日本に持ってくれば売れると思ったわけ」

    ――直感だったんですね。

    「そう、僕が勝手に想像してね(笑)。それで最初は2万個しか買わなかったんだけど、そしたらその2万個が5日でなくなってしまった。それで『これは10万個売れますよ』とか言われたんだけど、僕は『そんなには売れないだろう』と渋っていたんですよ。ところがそれではおもちゃ問屋の前を歩けない。『どうしてうちに持ってこないんだ?』ってどこに行っても言われるからね。『じゃあ2万個でいいわい』ってまた注文したら、そいつが入ってくるのが5月の連休のあとになっちゃってね、今度は1個も売れないのよ(笑)」

    ――ブームが過ぎちゃってた。

    「それで『困ったなあ』と思って、今度は国産で616ピースの金閣寺、銀閣寺、富士山、姫路城とか、そういうものを6点ほど作って売ったら、そしたらそいつがぼちぼち売れるわけ。だから『これは日本でもジグソーパズルをやれば売れる』と思ってずっと作っていったのが始まり。最初は『売れてるとかってみんなに言うなよ?』って言ってましたよ(笑)」

    ――それはなぜ?

    「真似されるからね。すぐバレちゃったけど(笑)」

    ――日本にジグソーパズルを持ち込んだ当初はどんな反応でしたか?

    「一番最初は『あんな面倒くさいやつ、気が短い日本人には向かないよ』って言われましたよ。『バラバラなものをなんで売るんだ』とか『こんな紙くずみたいなのは売れないよ』とかね。モナ・リザのおかげでうわっと出て、それからだんだん定着しましたけどね」

    ――ご自身でもジグソーパズルは作られますか?

    「やっぱりやりますよ。どのぐらい難しいかというのも絵柄によって違うからね。お客さんの立場で一度作ってみないといけませんから」

    ――これまで長年やられてきて、ピンチのときもあったかと思うんですが。

    「いやあ、そんな危ないことはしないもの(笑)。輸出の場合は先に注文を取りますからね」

    美津子夫人「ドルショック(ニクソンショック)の前に輸出から輸入に切り替えましたから、運もよかったんだと思いますよ」

    「そうですね。やっぱり運がよかったんだと思いますね。偶然が重なって売れていきましたから。ただやっぱり次々と新しいものがないといけませんから、海外の見本市にも毎年行って『何かないか? 何かないか?』という探究心は絶えず持っていました」

    ――人事を尽くして天命を待った結果ということですね。

    参考:日経流通新聞・昭和49年のヒット商品番付

      西
    マフラー 横綱 ネックレス
    オセロ 大関 ジグソーパズル
    キャラクターウォッチ 大関 金属製バット
    関脇
    ニットキャップ 小結 スカーフ

    ジグソーパズルが西の大関に選ばれている。奇しくも東の大関には、以前取り上げた「オセロ」がライバルとして選ばれている


    さて、ロングセラーホビーについて特集するこの連載も今回でひと区切り。「マイコミジャーナル」へのリニューアル後に、新たなホビーコラムを展開する予定なのでご期待いただきたい。

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