【コラム】

あの素晴しいトイをもう一度

9 オセロ(3) - 発売から34年、オセロは変わらない

    野口智弘  [2007/03/08]

    かつてツクダオリジナルでオセロを商品化し、日本人なら誰もが知っているゲームにまで成長させた立役者、和久井威さんにお話を聞く連載の最終回。最後に、和久井さんにこれからのオセロの展望についてうかがった。

    「オセロをネットでやってても、対話のきっかけにしてほしいね」と和久井さん

    「いま有名な(ニンテンドー)DS、あれは基本的にはひとりですよね。テレビゲームが定着してからは、ひとりで遊ぶものが多くなっちゃった。オセロもネットでやっている人が多いですが、やはり人間と人間の対話を大事にしてほしいですね」

    ――DSと言えば、脳を鍛えるブームでオセロも脚光を浴びています。

    「これももちろんリハビリにいいですよ。最初に長谷川さんが病院に普及させたぐらいですから(笑)。老人ホームに行くとほとんど置いてありますね。2007年からはねんりんピック(全国健康福祉祭)にもオセロが正式種目として加わります。そういえば最初のブームのときにかなり年配のおばあさんから手紙をいただいてね、『オセロでおじいさんに勝った』って。そのころまだ女性の地位はいまほど高くなかったでしょ。『何十年間のうっぷんを晴らした』っていう感謝の手紙をもらったことがありましたね。やっぱりオセロはそういう逆転が面白いんですよね。時間もそんなにかからないでしょ。せいぜい15分ですから。まあでも20年30年続くのは本当に珍しいですよ。3年ぐらいでなくなっちゃうゲームが多いですから。僕も世界大会の50回目ぐらいまで元気にやっていければと思います(笑)」

    オセロシリーズの現在と今後

    さてここからは番外編として、現在のオセロを取り巻く状況をメガハウスマーケティング部の臼井一夫さんにお話をうかがったので、最後に紹介しておきたい。

    ――現在のオセロシリーズの展開状況を教えてください。

    「現在展開しているオセロは10種類ほどありますが、主流は『NEWスーパーオセロ』と『ナイスオセロ』、携帯用の『マグネットオセロ』ですね。『NEWスーパーオセロ』は『オフィシャルオセロ』に次ぐ大きさで、限られた売り場に置くにはちょっと大きいので、量販店では小さめの『ナイスオセロ』がよく売れています」

    ニュースにもなった「世界選手権大会30回記念オセロ」。すべて手作りでコマは無垢のユリア樹脂製。限定200台で31,500円

    盤とコマが一体となっている「オセロ極(きわみ)」。2005年には姉妹品の「オセロ極Jr.」とともにグッドデザイン賞を受賞している

    このようにチップを置く部分が回転し「白・黒・無地」となる。ユニバーサルデザインで黒のコマには溝が彫られており、視覚に障害がある人も楽しめる

    ――今年で発売から34年となるオセロシリーズですが、近年の売り方に変化はありますか?

    「大きくはないですね。ただ実際のところシリーズとしては(バリエーションを)減らしていく方向なんです。種類を増やしても販売的にそれほど伸びるものでもないですし。ですからある程度絞って、なおかつ安定して売るマーケティングでやっています。それから例えば『おもちゃ売り場を作ります』というときに、流通さん側はオセロやルービックキューブを必ず置いてくれるんです。定番商品というのは放っておいても売れるから放っておく、という面もあるんですね」

    ――現在オセロを扱うメガハウスは、キャラクター商品に強いバンダイナムコグループの傘下です。例えばオセロをキャラクター商品として展開する可能性はあるのでしょうか?

    「キャラクター商品として親しんでいただく方法もあると思いますが、やはりバンダイとしてもロングセラー商品は大事にしたいし、逆にツクダオリジナル出身の僕たちはキャラクターの扱い方がよくわかってないので、無理にキャラクターをつけてもしょうがない。今後も大きくは変えないと思います。要は『オセロはオセロ』なんです」

    蛇足ながら状況を整理しておくと、オセロやルービックキューブで人気を博したおもちゃメーカーのツクダオリジナルは、2002年にバンダイの子会社となっている。2003年にはツクダオリジナルから「パルボックス」と名称を変更。2005年にパルボックスは一部の事業を譲渡する形で、メガハウスと営業統合を行った。現在オセロをはじめとした旧ツクダオリジナルに関する事業は、バンダイナムコグループであるメガハウスの「パルボックス事業部」として運営されている。

    2005年10月発売の「オセロ極Jr.」。コマをなくさないだけでなく、マグネット式のオセロよりしっかりと固定されるので、中断・再続行が格段にしやすい。1,050円

    2005年に食玩として発売された「ファミリーゲームコレクション」にもオセロは登場。ご覧の小ささだが、実際に遊べる。すでに販売終了

    ――今後の展開は?

    「すでにオセロは大きく認知されているので、認知させるよりもいかに押入れから引っ張り出してもらえるか、という点に絞ってやっていくつもりです。いままでは大人と子供をひとまとめにしてやっていたんですが、昨年からは小学生6年生以下を対象としたジュニア大会を始めました。『チームで参加したい』という意見も出たので、ゆくゆくは学校同士の団体戦などにも発展させて、裾野を広げていければと考えています。諸先輩方の商品を僕らのマーケティングで壊すわけにはいきませんからね」

    ツクダオリジナル、パルボックス、メガハウスと窓口を変えても、人と人との対話を大切にするオセロの基本理念は何も変わらない。その証言を顧問の和久井さん、そして現在のマーケティング担当の臼井さんから共通して聞けたことをもって、ひとまずは今回の取材の区切りとしたい。

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