【コラム】

あの素晴しいトイをもう一度

5 せんせい(3) - 主力となった「カラフル」、そして「2カラー」へ

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定番のお絵描き玩具「せんせい」の秘密に迫る連載も3回目。今回はいよいよ現在の主力商品「カラフルせんせい」と、最新の「2カラーせんせい」が登場する。区分けしたスクリーンに赤・青・黄・緑の磁性粉を封入し、制限つきながらカラー化を成し遂げたカラフルせんせい。そして黒ペンで書くと黒い筆跡が残り、赤ペンで書くと赤い筆跡が残るという、画期的な進化を果たした2カラーせんせい。長年の試行錯誤のなかでブレイクスルーを起こしたのは、やはり根本的に新しい技術を投入したふたつの商品だった。引き続きタカラトミーの石橋さんと門間さんに聞く。

史上初、2色を使い分けられる「2カラーせんせい」。この夏に発売された(4,179円)

カラー化のために投入された新技術

石橋「カラフルせんせいは2000年の登場です。シリーズの主力商品としてかなり出ました。いまでもスタンダードな白黒より売れています。結局はスクリーンのブロックごとに色が決まってるものなんですけど、それでも『すごい』と」

2000年に発売され現在も主力の「カラフルせんせい」。線を書くだけでも赤から青、黄色と変化するので、楽しいお絵描きができる

――1977年の初代からかなり時間がかかっていますよね。やはりそれだけ難しい技術だったのでしょうか?

門間「色をつけると重さが変わるので、液と粉の配分が難しくなるんですね。もうひとつ難しいのは、磁性粉が黒いことなんです。無色のものに色をつけるより、黒いものに色をつけるほうが大変じゃないですか。『塗装しても磁性は帯びていないといけない』とかいろいろあって、カラー化まで苦労したと聞いています」

カラフルせんせいの拡大写真。磁性粉がしっかりと着色されているのがわかる

「ハローキティ カラフルせんせい」。通常のカラフルせんせいとは違い、赤を中央に配置。全体を塗りつぶすとハートマークが浮き上がるという仕組み

6年前のカラフルせんせいと言えど、十分に新たな技術が投入されていることがわかる。しかしその次に登場した2カラーせんせいとなると、どんな仕組みなのかさっぱり見当もつかない。

「2カラーせんせい」には2種類のマグネットペンが付属しており、黒ペンで書くと黒い字が、赤ペンで書くと赤い字が書ける。……しかしどうやって??

門間「さて、どうなっているでしょうか?」

「せんせいの先生」である門間さんに出題されてしまった。難問を前にとりあえず思いつく範囲で答えてみる。

――黒の層と赤の層があるんですか?

門間「うーん、惜しいですね」

頭を抱えていると、同行した編集部の日高さんが助け舟を出してくれた。

――ひとつの粒子の表裏ですかね?

門間「あ、当たりです。すごい」

しかし正解が出たのはいいが、果たしてそんなことが可能なのだろうか? 最初にせんせいの基本を教えていただいたときのように、門間さんが2カラーせんせいを使って図で説明してくれた。

門間「磁性粉の粒子の半分が黒色、半分が赤色で、それぞれS極とN極に分かれてるんです。黒いペンで書くと磁性粉が黒い側を表面にして上がってきます。逆に赤いペンで書くと赤いほうを表にして上がってきます。ミクロン単位の磁性粉を色分けすることで2色の反転が可能になったんです」

色分けの図解。黒ペン・赤ペンそれぞれの磁極に引き合う側の色が上になって磁性粉が表面に上がってくる

……と説明されると頭では理解できるがやはりまだ信じられない。その上、一度書いた部分を黒から赤、赤から黒に変化させる「カラーチェンジスタンプ」という付属品もある。

――カラーチェンジスタンプはどういう仕組みなんですか?

門間「スタンプはS極とN極が入っている弱い磁石です。微妙な磁力の加減で、表面に上がっている磁性粉だけをそのまま回転させてくれるんです」

石橋「最初はカラーチェンジスタンプなんて発想はなかったんです。開発中にたまたま弱い磁石で試してみたら『あれ? 色変わるじゃん。これ面白いんじゃない?』って。事前の調査でもカラーチェンジスタンプは子供たちにすごくウケたので『じゃあ商品にしちゃえ』って」

カラーチェンジスタンプ。弱い磁石が入っており、これでスクリーンをこする方向によって、黒い部分を赤に、赤い部分を黒に反転できる。まさに魔法のスタンプ

――原理的には黒と赤以外の2カラーにもできるんですか?

門間「できるんですが、実際には赤と黒が一番明度の差がはっきり出るんですね。赤と青とかでもいいんですけど……」

石橋「試作段階で赤と青もあったんです。キャラクターの絵を書きやすくするために赤と青にしようという案もあったんですが、結局せんせいの基本である知育玩具の部分を大事にしたいという結論になりました。黒と赤なら例えば文字の練習――お子さんが黒で書いて、お母さんが赤で丸をつけてあげる――とかできるじゃないですか」

門間「先ほどいくつか紹介したなかに、声でほめてくれる『せんせいシリーズ あいじょうパズル』という商品がありましたけど、ほめられると子供ってすごく喜ぶんですね。絵に赤ペンで花丸とかをつけてあげると、本当にいい表情をしてくれるんです。子供調査でのそうした反応もあって赤と黒を採用しました」

――市場での反応はいかがですか?

門間「みんな仕掛けがわからなくて『どうなってるの!?』って。商談会のときにスクリーンに描いて説明すると反応がすごくて『これ見て見て!』とか、まわりの方を呼んでくれるぐらい熱心に聞いてくれて」

石橋「業界に長くいる方や、せんせいの仕組みを知っている方ほど驚きますね。『こんな技術あり得ない!』って。お父さん方もそういう技術に興味を持ってくださるんですが、逆にお母さん方のなかには驚かない方もいたりします。いまはおもちゃが進化してるから2色で描けても『あ、そうなんだ』って。ちょっと悔しいんですけど」

――ああ、先にカラフルも出ているし。

石橋「『そっちのほうが楽しそうじゃん』って(笑)」

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インデックス

連載目次
第12回 ジグソーパズル(3) - 定番を作り出した日本のジグソーパズルの父
第11回 ジグソーパズル(2) - 球体、世界最小、妖怪? 広がる新機軸
第10回 ジグソーパズル(1) - いまも人気の「富士山・桜・金閣寺」
第9回 オセロ(3) - 発売から34年、オセロは変わらない
第8回 オセロ(2) - 最初はたった3,000個、オイルショックを乗り越え世界へ
第7回 オセロ(1) - パッケージにタバコ? 大人向けだったオセロ
第6回 せんせい(4) - 驚きの新製品の舞台裏と、これからの「せんせい」
第5回 せんせい(3) - 主力となった「カラフル」、そして「2カラー」へ
第4回 せんせい(2) - パズル、両面、コンピュータ? 知られざる幻の商品
第3回 せんせい(1) - あの魔法のスクリーンの種明かし
第2回 博品館TOY PARK(2) - 大人が自分のためにおもちゃを買いに来れる場所
第1回 博品館TOY PARK(1) - 銀座のおもちゃ屋さんの意外なお得意様とは?

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