ぼくの通ってた美大はなぜか校内での焚き火が黙認されていて、学校も24時間開門されていたので、(当時は)夜な夜な学校に残っては楽器を鳴らし、火を囲んで友人らと語らっていました。

大学を卒業し、上京したら、焚き火をする場所が無かった。夜の音楽とおしゃべりはクラブに移行した。(これも最近、風営法で問題になってますが)べつに、深夜、皆で集まらなくとも一人、本を読んだり、映像を観たり、思索に耽ったり、パソコンはなかったけど自分の内面に深く潜る時間は「創作のための意欲」を炊き上げる貴重な時間だなぁと実感していた。昼と夜の逆転はもちろん、たとえ朝起きても世の中騒々しくて何もやる気が起きない。草木も眠る丑三つ時になってようやく創作の意欲が起ち上がる。心身ともに不健康にちがいない。けど、この深夜の誰の邪魔も入らないシンとした時間は自分だけの時間、独り占めの自分専用貸切の貴重で贅沢な時間。祈りにも似た、おおげさだけど、宇宙と繋がってるような気分で、創作に打ち込めた。

ザ.夜型生活。このまま歳をとったらどうなるんだろうか? 世のご老人のように、僕もいつしか早朝に起きだして健康的な生活にシフトするんだろうか? そうなってもこの創作の貴重な時間は守られているか? クリエイティブはどうなるんだろう?

深夜の友人との語らいはクラブからファミレスに移り変わった(体力的にも)。そこで、何時間もしゃべった。大勢の前ではおとなしい奴も少人数だとやたらにしゃべった。少人数でのおしゃべりが一番いい。話しの内容がぐっと深くなる。ドリンクはコーヒーだから覚醒、脳の言語野が刺激されっぱなし。

同じテーブルで20時間しゃべり続けたことがあって、気づけばそこで4回食事をし、バイトのシフトが一巡するのを目撃。後日、そのファミレスの前を通ったら入り口に張り紙があった。

「おれたちのことだよな」

「完全に、そうだな」

しかし、それは突然にやってきた。

ある日をさかいに、今までの自分や友人を裏切るかのように僕は朝型になってしまった。朝から活動すると一日がとても長く感じる。宅急便もシャキ!っとした顔で受け取れる。でもまたどうせいつものようにズレてって、夜型に戻るんだろうと思ってた。そういうのをこれまで幾度となく経験しているから。

けど、戻らない。で、結局、この朝型が8年も続いている。これはもう戻りそうにない。深夜0時には寝てしまうからしばらく夜の世界を知らない。夜はどうしたって寝てしま う。抗う気力がない。そうか~気力がなくなったってことなのかな。多くの動植物がそうであるように、日が昇れば起きて、沈めば寝る。それが一番余計なエネルギーを消費しないんだな。そして健康的。

では、クリエイティブはどうなる!?

つづく。

タナカカツキ


1966年、大阪府出身。18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。音楽アーティストのアートディレクションも多数手掛ける。