遊ばないと、いい仕事ができない。遊びの体験がいい仕事に繋がる。遊びは想像の源である。というようなことが、よく言われます。本当かなあ。そんなに遊びと仕事が結びついてたら、遊んでんだか仕事してるんだか、遊んでても、この遊びはいい仕事に繋がる! と、どこか仕事のことを考えることになって中途半端なことになりはしないか? などと考えながら、僕は今、サウナに来ております。

僕がサウナに行くのは良い仕事をするため。その証拠にパソコン持参です。このサウナ施設は広いくつろぎスペースがあって、Wifiが飛んでて、食事もできるので、今日はここで、原稿を書くことにします。

サウナで原稿書きなんて、ずいぶん御気楽なもんだ、と声が聞こえてきそうだけど、喫茶店やファミレスで環境を変えて仕事がはかどった! なんて体験のある人も少なくないと思います。サウナは喫茶店の比じゃありませんよ。サウナと水風呂のセッションは強制的に血管を収縮させ、脳や毛細血管の隅々までフレッシュな酸素を運んでゆきます。メインは水風呂のあとの休憩です。ここで心身が生まれ変わる! 生き返る!

生き返ることをプロのサウナーたちは「ととのう」(整う)と言います。元気は元の気と書いて元気、命の元の状態、リセット状態になるんですね。心身のリセットは気持ちのよいもんです。サウナ後のビール(筆者は飲めませんが)、美味いものを食べれば(サウナ施設はリーズナブルで美味いとこが多いです)生きているという実感、心身が気持ちいいと感じることにより、生きることを大肯定したい気持ちになる。これがないとクリティティブもクソもない。

「英気を養う」という言葉があります。「英気」は単体の言葉としてはあまり馴染みがありませんが気力や元気、才覚のことです。身体が気持ちイイ~~! と感じることによって「英気」が生まれるこの溢れんばかりの英気をターボエンジンに、本日の原稿の筆はバンバン進む予定です!

先人の「遊ばないと、いい仕事ができない」という言葉。この真意は、遊びによる経験が仕事に活かされるということだけではなく遊んで「心身を喜びで満たそう!」そして「英気」を養おう! ということもあるように思います。なんか、あたりまえの話しをしてるかな。

このサウナ施設にはクラゲが泳ぐサウナがあるらしいのです。5度の低音サウナだって。 行ってみよー。

うわ!狭い!けど、高温サウナで火照った身体に低音サウナは心地いいです。壁一面にくらげ水槽。クラゲの動きはなんていうんだろう、このゆったりとした動き……。動きの分野でもトップレベルのいい動き。みてたら眠たくなります。心身ともにリラックス、そうとうなセラピー効果が期待できますぞ! って思ってたら甘かった!ノソノソとトドのような体型のおばはんが入ってきたああああ! そのサイズのサウナ着よくあったなあ……。

サウナ室はかなり狭いので、なんだか妙な空気が流れる。まるで水族館デートしてるみたいではないか! 身体も冷えてきたので、退出したいとこだけど、すぐに退出するのは気がひける。入ってきてすぐこちらが退出すれば気になさるのではないか。トドのような体型だけど、相手はレディーです。ここは紳士的な態度で少し余裕の間をとって、と思ったら、トドの方が先に出て行った。おいコラ、トド!

一瞬にして「英気」を失う結果と相成りましたが、クリエイティブはその具体的な創作の下準備、心の準備がとても重要なのです。ていうか、そこからが大いなるクリエイティブがはじまっているのです。というようなことを言いたかったのでした。

タナカカツキ


1966年、大阪府出身。18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。音楽アーティストのアートディレクションも多数手掛ける。