その部屋の壁には何も無いと想像します。

あまりに殺風景なので、そこには窓がほしくなりますね。

窓から見える景色は、流れる雲、四季折々に変化する木々の様子、雨や雪、もちろん光も入ってくる。目にみえるものだけじゃなく、小鳥のさえずりや子どもたちの無邪気な笑い声、花の香りも入ってくるかもしれません。入ってくるだけじゃなくて自分はそこから出ることもできます。そこは拘置所でなく、身柄は自由です!

窓を空けても殺風景、隣の壁だったりした場合、

ロールスクリーンを下ろして、自分のお好みの風景を垂れ流せばいいですよね。

有機ELディスプレイになっているから、テレビに切り替えてもいいし、離れた恋人の部屋に繋げてもいい。でもそれはもうちょっと未来。時間の問題で何年後か、すぐにでもできそうですよね。

スクリーンから出力するものは、走ってる電車の車窓でもいいし、海中でもいい、コンピュータが創り出すサイケデリックな映像でもよし、映画でもいいし、ゲームでもいい、なんでもお好み。

でも結局、穏やかで豊かな風景が一番しっくりきたりして。

映像じゃなくてやっぱりリアルな窓が欲しいなあ。実体感がほしい、暖かく優しい気配が欲しい。

昔の人は庭園などで自然を表現したんだよな。

この絵が本物だったらいいな。ホンモノって何だ?

はい! そこで水景画が再び登場します。前回の水草水槽のことでございますが、なぜ水槽が「画」なのかというと、ほら、こうやって出来上がった絵のイメージラフから始めるからです。

これ、僕のアトリエにある現在の水草水槽です(初公開)。あと1カ月程待てばラフで描いた絵の完成です。

この絵からは酸素がでております。

水中に二酸化炭素を添加し、施肥し、水草を繁茂させる。ガラスケースの中では風の流れのように水流があり葉を揺らせます。部屋の壁にこんなビジュアルを19世紀後半の印象派画家たちが見たら、どう思うでしょう? 自分の部屋に自然の一部を切り取ってもってくることができる。それでも彼らは油絵具に夢中になっていたでしょうか? 印象派は写真技術の台頭という時代背景に於いて、絵画は写真にできないこと、より抽象的な表現に向かったということもあるのでしょうが、自宅に庭園を造りその庭を自分の「最高傑作」と言っていたモネならきっと……。

水景画は現代の絵画表現だと僕は思っています。個人史になりますが、マンガ、CGと渡り歩いてきて、再び、水彩画やアクリル絵画制作のように手を濡らしながら絵を描く、そんな画材や環境が整ったように思えます。CGはコンピュータとのセッションだったとすれば、水景画は自然、神とのセッション! なのかっ……。

あなたならどんな窓を想像しますか?

次回、クリエイティブのさらなる未来像について、考えてみたいと思います。

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タナカカツキ


1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。