元 国税局職員さんきゅう倉田です。最近気になっていることは、「浦島太郎が玉手箱を受け取ったときに一時所得に該当するかどうか」です。

今年、国家公務員の夏のボーナスは前年比1.9%増でした。公務員の賃金は民間の給与を基準とされていますので、会社員の方々の賃金も増加しているはずです。月給はベースアップ、安倍総理の大好きな「ベア」によって、会社ごとの給与改定の時期に増加しますが、業績が良ければ直近の賞与が割り増しになることも往々にしてあるでしょう。

では、従業員の賞与が増えたとき、社長やCEO、代表取締役の賞与も増えているのでしょうか。答えは、「否」。社長などの役員は給与の支払いに制限があり、簡単にボーナスを増やしたり、月給を上げたりすることはできません。副社長や専務、常務など、登記されている取締役も同様です。

これら役員に対する給与や賞与の支払いは、税法上制限されています。これが、「役員給与の損金不算入」です。

@社長・CEO・代表取締役は、業績が良くてもボーナスがもらえない?

3つの役員給与

税法上の経費として認められる役員給与には3種類あります。「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」です。これらに該当しなければ、役員にお金を払っても、会社の経費にできません。3つとも宮本武蔵に時間を守らせるよりも難しいので、短くまとめました。

定期同額給与とは「事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」です。つまり、「役員の給与は毎月同じ金額にしなさい」といっています。会社の総勘定元帳を見ると、「役員給与1,500,000/当座預金1,500,000」などと0並びの同じ金額が毎月記帳されていることが多くなっています。ただし、役員の職制上の地位や職務内容の変更があったときや法人の経営状況が著しく悪化したことによる減額であれば、金額の変更ができることがあります。

また、「継続的に供与される経済的利益で毎月おおむね一定のもの」も損金にできます。経済的利益とは、住居や食事の提供に代表される「お金じゃないけど、もらうか安く借りられるとうれしいもの」です。それらも、急に「はい!」って渡したら損金にできませんが、毎月同じ金額なら損金にできるのです。あ、「損金にできる」とは「経費にできる」という意味です。

事前確定届出給与とは、「役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」です。つまり、役員に対するボーナスは事前に決めて届出を提出しないと経費として認められないこととなっています。例えば任天堂が「今年はNintendo Switchが売れたから夏のボーナスは2倍だ」と、急に役員のボーナスを増やすことはできません。従業員であれば、可能ですが、役員は制限されています。それではかわいそうだということで、利益連動給与があります。

利益連動給与は「同族会社以外の法人が役員に対して支給する利益に連動した給与」です。形態はボーナスに近いといえます。有価証券報告書などに基づいて金額を決めるなど、条件が厳しくなっており、同族会社であるほとんどの中小企業は利用できません。利益連動給与は、おおむね大企業のみと考えて良いでしょう。

【さんきゅう倉田による用語解説~同族会社~】
社長や社長の関係者が株を50%超持っている会社。同族会社になると、合法だが経済非合理的な取引を容易に行えるため、ため込んだお金に税金がかかることなどがあり、税制上不利になる。

また、法人が事実を隠ぺいし、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する報酬は、損金の額に算入できません。例えば、法人が売り上げを除外し、その除外した金額を社長が個人的に使い果たしていたことが税務調査によって分かったとします。その金額は社長の給与として所得税がかかりますが、給与として税金はかかるのに会社の経費にはできません。役員給与とは、このように厳しく制限されているのです。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら