元 国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな日本の昔話は「3枚のお札(さつ)」です。

「交際費」という言葉を聞いたことがあると思います。税務上は、「接待交際費」と言いますが、一体何なのでしょう。末尾に「費」とつくからには、経費であることは何となく分かります。

「交際費」の定義とは?

交際費について、国税庁はこんな風に言っています。

■交際費等の意義
「『交際費等』とは、交際費、接待費、機密費その他の費用。得意先、仕入れ先、事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答のために支出する費用」

(国税庁「租税特別措置法関係通達(法人税編) 第8章 交際費等の課税の特例 第61条の4 『交際費等の損金不算入』関係 第1款 交際費等の範囲」より)

つまり、取引先や仕事に関係ある人を接待、あるいは、プレゼントをあげたときの支払いです。従業員や仕事と関係ない人、例えば家族や友人と食事をしたり、お歳暮をあげたりしても交際費にはなりません。

ここで、親を大事にするくらい大切なことを書きます。基本的に、「経費は交際費にならない方がいい」です。経費が交際費に該当すると会社は損をします。なぜかというと、交際費は原則として、その全額が税法上の経費になりません。お金は払ったのに経費にはできないのです。そんな馬鹿な、無茶苦茶だ、と思うかもしれませんが、そういうルール。経費になるのは特例に該当する場合のみです。

交際費と資本金の関係性

交際費がどのくらい経費になるかは、会社の資本金によって違います。「資本金」をご存じない方、簡単にいうと、会社を作るときに、事業資金として用意したのが資本金です。のちのち、増やしたり減らしたりできます。経費の扱いは、資本金額が1億円以下かどうかで変わります。

■資本金1億円以下の場合……次のいずれか多い金額を選んで経費にできます

(1)交際費のうち、飲食の費用の50%(プレゼントとか旅行に連れてったりとかゴルフやったりとかは駄目です)
(2)交際費のうち、800万円(飲食以外でも大丈夫)

■資本金が1億円を超える場合
・交際費のうち、飲食の費用の50%(資本金が多いと交際費チャンスが減るのです)

つまり、資本金が1億円を超えようが超えまいが、経費にできる金額に制限があるわけです。たくさん交際費を使っても、経費できるのは一部だけ。そうなると、会社側は役員や従業員が使ったお金がなるべく交際費にならない方が喜ばしい。でも、交際費に該当してしまったら仕方がありません。それが経費になるかならないかで会社のお金に差が出ますので、具体的に計算してみます。

法人税の実効税率を30%とします。実効税率というのは、法人税+法人税に似ている税金です。

1,000万円の収入があったとして、

(1)交際費100万円が経費になる場合
1,000万円-100万円=900万円の30%→270万円の納税

(2)交際費100万円が経費にならない場合
1,000万円の30%→300万円の納税

(1)と(2)はどちらも100万円の交際費を使ったのに、(2)は支払いが30万円多くなります。経費にならないときは、100万円の交際費のために、計130万円の支払いが必要になるのです。

交際費になりそうでならないもの

交際費になってしまうと、経費にできない可能性があるので、なるべく交際費以外の経費にしたい。そこで、税法やルールを把握して、正しい判断が必要になります。ここからは、交際費になりそうでならないものを発表します。

会議費

・一人当たり5,000円以下の飲食

内容が交際費に該当するものでも、金額が低いので「会議費」にして全額経費にできます。

・会議での茶菓子、弁当

取引先とかに提供しても交際費に該当しません。

広告宣伝費

・カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいの贈与
・不特定多数の人に宣伝的効果を意図した費用
・抽選で金品を与えたり、旅行や観劇に招待したり
・商品を買った人への景品
・工場見学者への試飲、試食
・得意先に対する見本品や試用品
・製品のモニターやアンケートの謝礼

福利厚生費

・従業員のための運動会、演芸会、旅行
・社内の行事
・創立記念日、国民の祝日で従業員に与える社内での飲食
・従業員に支給される結婚祝い、出産祝い、香典、病気見舞い

宴会のときの福利厚生費と交際費の違い

あなたの会社が好きなだけ交際費を使わせてくれるなら、とっても太っ腹な会社です。社長に足向けて寝られません。他の経費と異なることを思い出しながら、大切に使いましょう。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら