元 国税局職員 さんきゅう倉田です。産まれて最初にしゃべった言葉は「1親等」です。

「所得税」という税金があります。労働、モノの売却、ラッキーでお金をもらうとかかる税金が所得税です。日本の所得税は、みなさんが自ら税務署で申告を行って、自ら納めるルールとなっています。これが「申告納税制度」です。ちなみに、住民税は自治体が納税額を通知してくる「賦課課税制度」です。

申告納税制度は、みなさんが自主的に申告をしなければ国が所得を把握するのが難しくなります。そこで、申告しなかったり、申告期限を過ぎてから申告したりすると、「加算税」や「延滞税」といった罰と利息が課せられます。

でも、いま、ぼくの記事を読んでいるほとんどの方が確定申告をしたことがないと思います。日本の労働者の9割が給与所得者、つまり、会社員やパート・アルバイトの方です。

その人たち全員が確定申告をすれば、税務署や国税局はパンクしてしまいますし、多くの納税者に確定申告という携帯を勝手に見る恋人くらい煩わしい作業の負担を強いることになります。

そこで、会社員やパート・アルバイトの方のために、勤務先の会社が「年末調整」をして、みなさんの所得を確定してくれています。この年末調整によって、みなさんは確定申告が不要となっているのです。ありがとう、勤務先!

確定申告が必要になるケースとは?

さて、それでも確定申告をしなければいけない場面がみなさんには訪れます。それはどんなときなのでしょう。主なものをまとめました。

2カ所で働いたとき

2カ所で働くと、確定申告が必要です。あなたがA社とB社で働いていたとします。会社員の方だと2社で働くというのはあまりないので、該当するのはアルバイトの方でしょうか。勤務先A社が年末調整をしてくれても、A社はB社でのあなたの収入を知るすべがありません。A社の収入だけで年末調整をします。そこで、A社とB社から渡された源泉徴収票を使って、あなた自身で確定申告をすることになります。

あなたが論理的な思考を持っていたなら、「B社でも年末調整をするんだからいいじゃないか」と思うかもしれません。しかし、A社で年末調整が行われると、B社では年末調整をしません。「扶養控除等申告書」を提出した勤務先が年末調整をします。この用紙は1枚しか出せません。

給料以外に20万円以上の所得があるとき

会社員からのお給料以外に所得があると確定申告が必要です。でも、20万円以上にならなければ、確定申告は不要なので、優しい制度となっています。例えば、競馬、競輪、アフィリエイト、手作り雑貨の販売といった、一時所得や雑所得に該当するものです。

年収が2,000万円を超えるとき

お金持ちは、会社員でも確定申告が必要です。

家を買ってローンを組んだとき

ローン残高の1%を所得税の金額から控除できます。控除限度額は50万円/年。確定申告によって50万円も還付になるなら、携帯をのぞいた恋人が「連絡先を消して」と言うくらい煩わしくても、頑張れるはずです。

1年目だけ確定申告をすれば、あとは年末調整で会社が対応してくれます。ありがとう、会社!

年末調整のあとに結婚したとき

妻か夫がいて条件を満たすと受けられる配偶者控除は、12月31日に結婚していれば、配偶者がいることになります。

会社が年末調整をしてくれたあとに、籍を入れたなら、確定申告が必要です。税金が還付になりますので、やった方が得。いくら還付になるかは、あなたの年収によって異なります。大体、1万9,000円~17万1,000円です。

家族の医療費が10万円を超えたとき

医療費がたくさんあると、医療費控除が受けられます。10万円以上です。所得が低いと10万円未満でも控除は受けられますが、会社員の方だとほとんど該当者がいないので割愛します。

あなただけの医療費でなく、生計を一にする家族、簡単にいうと、一緒に生活している家族の医療費を合算できます。

会社員、パート・アルバイトの方は、例年と異なるお金の動きがありましたら、「もしかしたら確定申告が必要なんじゃないか」と考えて、調べていただくと良いと思います。

ちなみに、友達や家族にたくさんお金や高価なものをもらったときは、所得税ではなく、贈与税の申告が必要です。110万円以上もらったらご注意ください。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら