拙著『ふせんの技100』(えい出版社)でも紹介しましたが、今やふせんの機能やバリエーション、利用シーンはどんどん広がっています。今回は、ISOTに出展されていたものを中心に、新機能を持つふせんやその周辺ツールを紹介していきましょう。あわせて、ビジネスにどう使えるのかも解説します。

ふせんの機能と構造

ふせんの機能の一つにメッセージ伝達があります。書類やものなどに貼り、表面に書いた文言で、そのものに関する情報や指示を伝えるわけです。

ニトムズの「エディターズメモ」。ロディアのような形状のメモ用紙に見えるが、上部にのりがあるふせん

その点で、記入面が机やテーブルに垂直方向に立つタイプは、目立ちやすくとても便利に使えるはずです。この機能を持ったものとしていち早く登場したのは、「SUTTO(スット)」(カンミ堂)でした。ただSUTTOの場合は、どちらかというとパーソナルユースの性格が強いものでした。SUTTOは同社のふせん「PENtONE(ペントネ)」のリフィルを利用し、リフィル保持部に下敷きのようなパーツを組み合わせて、スタンドをつけた構造です。

下敷き部分を利用してユーザーが立ったまま書き込める簡易的なジョッター(メモに特化した文具)としても利用できるようになっています。また、下敷き部分に用意されたスタンドの金具を使うことで直立するので、はがして使うというよりはパソコンのディスプレイの横に備忘録としておいておくような使い方に向いています。

メッセージ伝達目的の立つふせん

そして今回のISOTには、期せずして垂直に立つ、メッセージ伝達目的のふせんが登場していました。

それが「看板ふせん」(ビバリー)です。一般的に記入面上部についている裏面ののり部分を下部に配置し、デザインを看板風にしたふせんです。キャラクターがあしらわれたタイプなのでその派手さに目が行きがちですが、貼った面に対して垂直方向に記入面があり、メッセージ伝達用途に最適化されています。ISOTの展示では、家庭内での利用を想定した記入例が出ていました。

ビバリーの「看板ふせん」。現在はキャラクターがついたもののみ

もう一つは、「タテトコ」(カンミ堂)。これは、同社社屋のプライベートショーでのお披露目でした。同じように直立する同社製品のSUTTOとの違いは、以下の点です。まず素材が紙であること。フィルムふせん専門でやってきたカンミ堂にとって、この「タテトコ」は初の紙素材でできたふせんだそうです。

「タテトコ」(カンミ堂)。製品発表会にて

次に使い方です。詳しくは写真を参照して欲しいのですが、記入面下部を折り曲げます。

「タテトコ」の本体。これは白の方眼タイプ。下部の「はがす」の表示に注目

記入して切り取ったところ。これから貼る

更に下部部分をはがすとのりの面が現れるので、貼りたいものや部分に貼ります。のり面だけだと前方向に倒れてしまいそうですが、「ストッパー」と呼ばれる中央の小さな部分があり、これが支えとなって直立を可能にしています。

下部を下に折り曲げると、中央部分の「ストッパー」が現れる

下部を少しずつ切り取るとのり面が出てくる

立ち上がったところ。立ち上がると目立つ

色は3色(白、水色、黄色)、罫線は2タイプ(方眼、横罫)の合計6バージョンがあります。

「タテトコ」の製品バリエーション。色は白、水色、黄色の3色。それぞれ横罫と方眼がある

ふせんの限界を打破する立体性

もともと、ふせんはコミュニケーションツールとしての役目を持たされていました。ただそれは、従来の二次元的、すなわち書類やものの上に普通に貼るような使われ方だと、ふせんの存在に気がつかれないこともありました。

これはふせんが、裏面にのりが着いている紙またはフィルムであることの限界でもあったと思います。解決策としてのキャラクターの付加や形の工夫によって目立たせることは、その点を打開する一つの手立てではあったのでしょうが、二次元から飛び出るには至らない点で決定的な解決策ではありませんでした。

テーブルに貼り付けたところ。指で押さえているので寝ているが、手を離すと立ち上がる

「看板ふせん」や「タテトコ」は、垂直方向に直立できる機構を設けたことで、ふせんが担っているメッセージ伝達機能をより強く打ち出したものといえます。

また、特に「タテトコ」は、記入面こそ紙ですが、のりがある部分はフィルムでできています。樹脂や金属の面とも相性がいいので、例えばノートパソコンのパームレスト部分に貼っておき、ディスプレイを開くと飛び出すような使い方もできそうです。これは今のところ、「タテトコ」だけに可能な使い方でしょう。

ノートPCのパームレスト部分に貼ったところ。のり面はフィルム素材なので樹脂部分に貼っても比較的はがれにくい

今回は紹介できませんでしたが、ふせんはまだまだ新しい機能と役割を持った商品がどんどん出てきそうなジャンルです。また前掲書の中でも紹介した「ふせん文具」、すなわちふせんとノート、ふせんとカレンダーなどを組み合わせた製品がどんどん出てきています。その一つが、「TAGPLAN」(スージーラボ)です。

ふせん文具の一つ「TAGPLAN」(スージーラボ)。日付記入式の1週間カレンダー。付属のふせんに予定を記入して配置することで1週間の予定が立案できる。また同じ予定はふせんを貼り直すだけでいい。想定されているのは家庭内での利用だが、オフィスにも応用できるかも

この種の商品もその活用方法とともに随時紹介していきたいと考えています。

執筆者プロフィール : 舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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