会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


2014年からスタートしたNISA制度。もうすぐ1年が経とうとしていますが、皆さん、利用しましたか? 実は、来年2015年1月から、一部、ルールが変更になります。利用金融機関を4年間変更できなかったのが、15年1月から毎年変更できることになったのです。実際の手続き方法などご紹介します。

NISA口座は「1年に1人1口座」が大原則

今年から始まったNISA制度だが、金融庁の調査では、6月末の口座数は約727万口座。総買付額は1兆5631億円という半面、8月末現在で約3分の2の口座が空(=未投資)であるという。1人に対し、1年に100万円の枠が認められているのに、その権利をみすみす放棄しようとしている人がたくさんいるということだ。

NISA口座で売買すれば、売却益や配当金の源泉課税が非課税になる。たとえば、50万円で投資した株式が80万円に上がって、売却すれば、通常の口座であれば売却益の30万円に対して2割の税金がかかる。つまり、手取りは24万円になるということだ。それがNISA口座なら、まるまる30万円が手元に残る。こんなおトクな制度を使わない手はないと、私は思うのだが。

しかし、なぜ、NISA口座の3分の2が空口座なのだろうか? 私は、そのひとつの理由が、1年に利用できる口座が「1人1口座」だからではないかと思っている。そのために、思わぬ落とし穴にはまった人がいるのではないか、ということだ。

NISA口座開設の流れを説明しよう。口座開設の申し込みを受け付けた金融機関は、NISA口座が二重に開設されていないかの確認のために、税務署に「非課税適用確認書」という書類を提出する。税務署はこの申請書を受けた順番に処理していく。そのため、間違えて複数の金融機関に口座開設依頼をしてしまった、ということがあると、最初に交付申請手続きを受理された金融機関だけに、NISA口座が開設されるのである。

2015年から毎年利用金融機関を変更できるように

ここで問題だったのは、現行の制度の場合、1度ひとつの金融機関に口座を開くと取り消しができないことだ。さらに、最初の4年間(2014年1月1日から17年12月31日まで)はNISA口座を開設した金融機関を変えることができないのである。

たとえば銀行に口座を開いた場合、いざ、NISA口座で株式投資をしようとしても、銀行では取り扱っていないため、株への投資ができない。

また、証券会社に口座を開いたとしても、そこでは、自分が投資したい分野に投資する投信を取り扱っていなかった、となれば、投資機会を失うことになってしまう。

こうした落とし穴に落ちた人が、せっかくのNISA口座をうまく使いこなせていないという結果になっているとも考えられる。

その使い勝手の悪さを改善するべく、2015年から1年ごとに金融機関を変更できることになったわけだ。

「勘定廃止通知書」の堤出で金融機関の変更ができる

このルール変更によって、例えば、14年にはA銀行でNISA口座を利用して投信に投資、2年目の15年にはB証券に口座を開設して株式に投資。という風に毎年金融機関を変えれば、最高5つの金融機関にNISA口座を保有することができるようになる。

では、2015年に利用するNISA口座を変更したい場合、どのような手続きをとればいいのだろうか。下の図(1)を見ながら、確認してみよう。

図(1)

まず、利用金融機関を変更するには、「勘定廃止通知書」の堤出が必要となる。そのためには、今利用している金融機関に翌年は金融機関を変える旨を伝え、その金融機関から「金融商品取引業者変更届出書」が郵送されてくるので、記入して、返送する。

すると、金融機関から「勘定廃止通知書」が郵送されてくる。金融機関の変更には、この用紙が必ず必要になるので、最初に入手するようにしよう。

次に変更したい金融機関にNISA口座の申し込みをする。その際、堤出するのは、今年利用した金融機関から発行してもらった「勘定廃止通知書」。それに「非課税口座開設届出書」、本人確認書類の3点が必要となる。

NISA口座を初めて開設する際は住民票の写しが必要だったが、変更時は本人確認書類で大丈夫。もちろん、住民票の写しでもOKだが、免許証、健康保険証、印鑑登録証明書、といったものでも代用できる。

15年の変更手続きは、15年1月1日から受付

ちなみに、来年15年の口座を変更する手続きは、15年1月1日から9月30日までに手続きをする。その間に、旧口座で買い付けをしてしまっていたら、その年の変更はできない。

15年分の口座変更は、制度改正の施行が来年、15年1月1日からなので、今年のうちに手続きをすることはできない。

ただ、来年16年分の口座を17年から変更したいということになれば、15年10月、つまり前年10月から変更手続きをできるようになる予定だ。

注意点もある。15年に口座を変更したからといって、14年にNISA口座で投資した分まで移るわけではない。あくまでも、14年分は最初に投資をした金融機関で5年間保有される。その点は勘違いしないようにしてほしい。

また、14年にNISA口座で運用していた投資商品を5年経過後に、さらに5年NISA口座で運用することができる。これが「ロールオーバー」制度と言われているものだが、ロールオーバーはあくまでも同一金融機関でのみ利用が可能。ロールオーバー時に金融機関を変えることはできない。その点も注意が必要だ。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。