会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


確定申告は自分には関係ないと思っている人も多いかもしれないが、そんなことはない。まずは当てはまる項目がないかをチェックしてみよう。

医療費10万円超、住宅購入などの人は対象者

平成25年は、健康保険料、厚生年金保険料が相次いで値上げになったほか、サラリーマンにとって、公的負担が増し、ますます厳しい1年となった。今年は4月から消費税が5%から8%にUPする。家計の負担を取り戻すには、ひとつでも対象項目があれば、確定申告をして税金を取り戻す努力が大切だ。

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得と税額を計算し、翌年2月17日から3月17日まで(平成26年の場合)に提出するもの。申告書の提出は、税務署に期間内に直接持っていくほか、郵送する、近所に設けられた還付申告センターに持っていく、などの方法がある。申告書は税務署でもらえるが、国税庁のHPからもプリントアウトすることができる。

では、まずは自分が確定申告に該当するかチェックを。年収2,000万円超の人や副業などで年20万円超の収入のある人は全員、申告義務がある。また、毎月の給与から所得税が天引きされており、年末調整で会社が払い過ぎた税金を戻してくれていると思っているサラリーマンももう1度確認してほしい。

平成25年に赤ちゃんが生まれたなど、医療費を家族で年間10万円超支払った、平成25年に住宅ローンを組んで家を買った、といった人は確定申告をすれば税金が戻ってくる可能性がある。これらの手続きは、会社はしてくれないので、自分で申告書を書いて、税務署に提出する必要がある。

また、株式やFXなど投資で大損した人も「損失の繰越申告」をすることで、後々収益が出た時に、損失と相殺して税金を減らすことができる。平成25年に金売却で利益を出したけれど、株式では損失を出したといった人も、確定申告で損益の通算をすれば、税金を取り戻すことができる。

また台風などの災害や盗難にあった人も損害に応じて税金が軽減されるので要チェック。平成25年に退職してそのまま再就職をしていない人も、税金を払い過ぎたままになっている可能性があるので、必ず確認しよう。

確定申告というと、計算や書類の作成が面倒と思われがちだが、国税庁のウエブサイト「確定申告書等作成コーナー」を検索してみよう。説明に沿って数字を入力していくと、意外とスムーズに書類作成ができる。「電子申告(e-Tax)」は事前登録が必要だが、入力した書類をプリントアウトして税務署に持っていけば、それでOK。まずはサイトをのぞいて、気負わずにチャレンジしてみることが肝心だ。

基本は源泉徴収票、課税所得を計算する

「そもそも給与から差し引かれている所得税がどうやって計算されているのかわからない」という人がほとんどではないだろうか? 確定申告ではその計算方法を勉強して自分に計算してみることになる。仕組みを知ると、意外と簡単なのでここで確認しよう。

まず押さえておかなければならないのは、所得税とは収入にかかるのではなく所得にかかるということ。会社から年末にもらう源泉徴収票の「支払金額」という欄が収入。その横の「給与所得控除後の金額」が所得となる。所得は収入から必要経費を差し引いたもの。サラリーマンの場合は、給与所得控除を差し引いて計算する。

次に実際に課税対象となる「課税所得」を計算する。これは、「給与所得控除後の金額」から社会保険料など事前に会社が差し引いてくれた金額である「所得控除の額の合計額」と、医療費控除など、自分で申告するものを差し引いて計算する。

確定した課税所得に税率を掛けて、決められた控除額を差し引くと一旦仮の税額が出る。そこから、住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、それを差し引くと、本当の税額が確定するわけだ。

医療費が1年で10万円を超えたら税金が戻ってくる

医療費控除とは、ケガや病気で入院・手術をしたり、歯の治療や妊娠中の健診などで高額の医療費がかかった場合に、年間10万円を超えた分を所得から差し引ける。

しかも、医療費控除は家族単位で申告できるので、夫の歯の治療費、妻の出産費用、子どもの風邪薬などまとめて申告することができる。かかった医療費控除はかかった医療費の総額から10万円を差し引いた分が控除の対象額となる。所得の高い人ほど、税率が高いので、家族の中で年収がもっとも高い人が申告するのがおトクだ。

たとえば、年収600万円の人で総額20万円の医療費がかかった場合、所得税はおおよそ1万200円程度戻ってくる。

平成25年に住宅購入をした人は最大20万円、10年で200万円戻る

住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、10年間にわたって住宅ローン控除が受けられ、最大年間20万円、10年で200万円の減税が受けられる。

減税の対象となるのは、10年以上の住宅ローンを組み、購入した家の広さが50平方メートル以上であること、合計所得金額が3,000万円以下であることなどだ。一般住宅の場合、控除額は最大年20万円、国が認める条件をクリアした認定長期優良住宅・低炭素住宅なら最大年30万円の減税が受けられる。

さらに減税額が所得税額を上回る場合、翌年の住民税からも最大9万7500円まで差し引くことができる。住宅購入をした1年目に確定申告をすれば、2年目以降はサラリーマンなら年末調整で税金が戻ってくるので、1年目にしっかり確定申告をすることが大切だ。

確定申告の仕組みをしっかり理解して、節税対策に役立てて欲しい。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。