会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


2014年から新しい投資の非課税制度「NISA」が始まる

最近、テレビのCMで「NISA」という言葉を目や耳にすることがないだろうか? NISAとは「ニーサ」と呼ぶが、これは、もともと英国にある投資の非課税制度「ISA」(アイサ)を、日本版ということでNIPPONのNを前につけて、NISAという愛称になったもの。「少額投資非課税制度」が正式名称で、2014年1月からスタートする。

現在、株式や投資信託の配当、譲渡益に対する源泉徴収税率は10%(復興特別所得税を加えると10.147%)だが、これは軽減税率が適用されているから。本来、預貯金の利子が20%源泉徴収されているのと同じ率なものが優遇されているのだ。しかし、来年、2014年からその優遇が撤廃され、本来の20%の税率に戻される。たとえば、20万円で投資した株が25万円に上昇して、売却した場合、今までなら5万円の売却益(譲渡益)に対して、1割、つまり、5000円の源泉徴収がされていたが、来年以降は1万円徴収されてしまう。

極端に言うと、100万円儲かれば、10万円だった源泉徴収が20万円に上がってしまうということだ。

そのタイミングで登場するのが、NISA、少額投資非課税制度だ。これは、名前のとおり、株式や投資信託に投資して、配当や譲渡益を得た場合でも、非課税、つまり税金ゼロを認めてあげるよ、という制度だ。片や、税率が2割に上がるなか、片や、非課税で投資ができるというのだから、これは利用しない手はないだろう。

今後の証券税制イメージ

1年に100万円まで。非課税期間は5年間

NISAの特徴を大きく分けると3つになる。

1つ目は「少額」ということ。1人年間100万円までの利用だ。これは、1回の投資に30万円、次の投資に15万円、というように、小分けにしてももちろんOKだが、ある年の1月1日から12月31日の1年間に投資する金額という条件だ。

今、手持ちの投資商品をNISA利用することはできず、あくまでも新たに投資した資金100万円(積立もOK)が対象となる。

2つ目は「投資商品」が対象ということ。具体的には「上場株式等と公募株式投資信託」が含まれるが、上場株式には、日本株式、外国株式、ETF、Jリートなどがある。投資商品だが、外国債券や外貨MMF、FXは対象外だ。もちろん、預貯金も対象外。MRFといった公社債投資信託、個人向け国債なども含まれない。

もう1つ対象となるのが公募株式投資信託。ここで少しわかりにくいのが、たとえば毎月分配型で大人気の「グローバルソブリン(グロソブ)」は、海外の国債や公社債に投資する投資信託なので、対象外なのかと思うと、実は公募株式投資信託に分類されている。

投資信託の場合、投資対象を外債や公社債メインにしていても、株式に投資する可能性も考慮して、設定時に株式投資信託に登録していることが多い。利用したいと思う投資信託が、NISA対象かどうかは、販売会社である銀行や証券会社に確認するといいだろう。

そして最後の特徴が「非課税」であること。ただし、1年間に新たに投資する金額100万円までが対象なこと。対象期間は、1年目から数えて5年間有効なこと、この制度は2014年から10年間の期間限定制度であること、などがあげられる。

NISAのキホンは?

1人1口座。既存機関利用でもNISA口座を開設する必要が。

NISA口座でもうひとつ忘れてはいけないのが、利用する金融機関選び。NISA口座は1人1口座しか開けない。つまり、自分が投信積立をA銀行でしており、株式取引はB証券でしているからといって、両方の金融機関にNISA口座を開けるわけではない。A銀行かB証券、あるいは、新たにC証券に開くにしても、どれか1機関を選ばなければならない。しかも、1回開くと4年間は変更することができない。

しかし現実的に考えると、毎年その口座でNISA制度を使って取引をしていたら1年取引をすると5年間非課税が有効だ。しかもそれを毎年4回利用し続けたとしたら、中には元本割れをしている商品や銘柄もあるかもしれない。金融機関を変える場合は、まず今ある口座の商品をすべて売却して解約しなければ、次を開けない。そう考えると、なかなか口座の変更はむずかしいといえるだろう。

つまり1度金融機関に口座を開くと、次の金融機関にはなかなか変更しづらいというのが私の結論だ。それだけ最初に、金融機関選びは慎重にする必要があるということだろう。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。 上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』(株式会社秀和システム)など。