連載『フィンテック(Fintech)の今』では、マネーフォワード取締役 Fintech研究所長の瀧俊雄氏が、金融とITを融合させる「フィンテック(Fintech)」の現状について、分かりやすく解説します。


金融(Finance)を技術(Technology)の力でより便利で効率的なものとする試み

最近、Fintech(フィンテック)という言葉が、金融サービスに関連してよく聞かれるようになりました。

Fintechとは、金融(Finance)を、技術(Technology)の力でより便利で効率的なものとしようとする試みです。米国のシリコンバレーでは新たな金融サービスを提供するFintechベンチャーが急成長しており、日本でもマネーフォワードを始めとして、様々なプレーヤーが生まれている領域になります。

もちろん、既存の金融業がIT技術と無縁だったわけではありません。情報産業でもある金融業は、これまでも何十年もの間、IT技術に対して多額の投資を行い、多くのATMの配置、安心できる送金手段の整備、効率的な資産運用といった生活インフラを提供してきました。

しかし一方で、他のIT産業と比べて、規制産業でもある金融業が、例えばオンラインバンキングや資産運用サービスにおいて、高いレベルのユーザー体験を提供できてきたかといえば、そうとも言えない現実があります。

このような状況下において、昨今、ベンチャー企業による新たな金融サービスの提供が行われています。そのジャンルは、決済や貸付、資産運用やビットコインを使った取引、セキュリティ技術など多岐にわたっていますが、一貫していえるのは、明確なユーザーニーズを汲み上げ、的確なサービス提供を行っている点です。今後、本連載で様々なベンチャーを取り上げていきますが、これらのベンチャーに共通していえるのは、まさに「かゆくて手が届かなかった領域」に、「実に収まりの良いソリューションを提供している」ことです。

例えば、国際間での送金はこれまで、数十万円単位からで、数千円の手数料が必要となり、送金まで数日掛かっていました。しかし、新たに登場したベンチャーによって、数万円単位から、百数十円の手数料で、即時かつ有利な為替レートでの国際間の送金が行えるようになりました。このサービスは、自国を離れて出稼ぎをしている人達による、自国の家族への送金ニーズと合致し、大きく成長を遂げています。

また一方で、ロボアドバイザーと呼ばれる資産運用サービスでは、証券会社や既存の投資信託にはできるだけ手数料を払いたくない、けれども、自動で適切な商品を選んでもらい、投資の結果のケア(高くなったら少し売る、安くなったら少し買う)はして欲しい、という若い富裕層の要望を叶えています。それまで、同様のサービスを受ける場合には資産額の2-3%が運用手数料として支払われていた世界において、人が担ってきた機能を自動化することで、手数料率が0.5%を切るサービスを提供するプレーヤーが米国では登場し、注目を集めています。

Fintechが最近になって取り上げられるようになったのはなぜ!?

Fintechが最近になって取り上げられるようになったのはなぜでしょうか。それは、他の産業でも見られてきた、サーバー代や開発にかかるエンジニア・技術の入手コストが下がる中で、様々なサービスの作り手たちが生まれやすくなっているという潮流が、金融の世界にも一足遅れて入ってきたためといえます。

従来、金融の世界ではこのような技術的な潮流が、なかなか展開されづらい状況がありました。他の産業と比べると、セキュリティ保持やデータ活用の観点で高いレベルの運営を求められたり、当局への報告体制を求められたりしてきたことが背景としてあります。しかし、様々なデータがAPIを経由して利用可能となったり、ある一側面に限定したサービス展開を行ったりすることでこれらの問題を克服するプレーヤーが出てきたことで、潮流が変わってきました。

さらに、スマートフォンが多くの人口に浸透したことで、新しい技術を活用するメリットが一層増大しました。

様々なベンチャーが誕生し、既存の金融業と競争する力を持ったプレーヤーに

結果、様々なベンチャーが誕生し、その中でも多くのユーザーを獲得したビジネスモデルが、既存の金融業と競争するだけの力を持ったプレーヤーとして育ってきています。

こうしたFintechに関するイノベーション動向は、日本ではまだ緒についたばかりですが、今年の2月以降、金融機関のあり方を法制度・規制の側面から検討する団体である金融審議会でも、Fintechが重要な要素として議論され始めています。

今後の金融機関の新たな取り組みやベンチャーとの協業、そして今はまだ存在しない新しいベンチャーやサービスの誕生が待たれるところです。様々なプレーヤーの活躍により、日本における金融サービスの質が向上し、よりユーザーの役に立つサービスが生まれてくることが期待されています。

執筆者プロフィール : 瀧 俊雄(たき としお)

株式会社マネーフォワード取締役 マネーフォワードFintech研究所長。2004年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究に従事する。2011年スタンフォード大学経営大学院に留学。卒業後は野村ホールディングスCEOオフィスに所属する。その後マネーフォワードを創業し、経営全般やカスタマーサポート、お金やサービスに関する調査・研究を担当。TechCrunchや週刊金融財政事情などに寄稿。