【コラム】

システムの評価、できてますか?

1 「反省」するだけじゃダメ、失敗を評価してますか?

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底なしに見えた不況もどうやらどん底を脱出し、我が国の経済もなんとなく明るさを取り戻しつつあるようだ。これまで緊縮財政を強いられてきた分、そろそろ情報化投資でも、と考えている企業も多いのではないだろうか。

だが、ちょっと待って欲しい。いや、システム屋のはしくれとしては、もちろんどんどん情報化には投資して頂いた方が有り難いのであるが、無計画にお金をばらまいてもらっても、結局はまたあの忌まわしき「なんとかバブル」の繰り返しで、ベンダーにもユーザにも幸福な結果にはならないと思うのである。

……と、第一回からトばして申し訳ないが、これだけはあらかじめ言っておきたい。ただ闇雲にお金をばらまいてみたところで、企業の情報化というのは絶対に「よくならない」。

もちろんどんなシステムでも、計画があり予算があって、きちんと設計を行った上で開発、導入されているはずだ。だが、自社の情報化の歴史をもう一度振り返ってみて欲しい。過去に導入したシステムには、かけたコストに見合うだけの価値があっただろうか? 導入前に思い描いていた「業務の効率化」や「競争力の向上」といった理想は、具体的な形で実現できただろうか?多くのシステムが、理想を実現することなく、手痛い失敗の記憶とともにホコリをかぶっていったはずだ。

ただ、システムの導入に失敗することが、全て悪いことだとは言わない。個人であろうと企業であろうと、大切なのは失敗から何かを学ぶことである。問題は、企業のような「組織」では、失敗を「自覚」することが個人よりも難しい点にある。

例えば、システムの導入に失敗した企業では、まず導入プロジェクトの担当者の責任を問うだろう。それはそれで正しいが、失敗した担当者をクビにしたところで、次のプロジェクトが成功するとは限らない。個人ならば失敗を悔い、次こそ頑張ろうと思うところでも、組織ではその忌まわしき記憶ごと消し去ろうとしてしまうことが多くはないか。かけたコストは経費計上できるから、償却しちゃえば損にならないから、などと誤魔化して臭いものにフタをしてしまったら、いつまでたっても「失敗から学ぶ」ことにならないのだ。

情報システムの導入では、企画や開発・導入と同じように、その後の運用と改善にも努力をしていくべきだ。導入に失敗したら、その失敗を「評価」し、なぜ失敗したのか、どこが間違っていたのかを正しく認識すればいいのである。そうすれば、次もまた失敗するとしても、前回よりは少しマシなシステムになるはずだ。そうして失敗と評価の連環の中で、情報システムを「育てて」いくことこそ、失敗を失敗に終わらせないための唯一の方法なのではないだろうか。

ここで重要なのは「評価する」という作業だ。失敗を評価するという習慣づけと、実際にどう評価を行うのかをよく考えなければならない。

さて、こんなことが「言うは易し」なのは、筆者も百も承知である。一口にシステムを「評価」すると言っても、「コンピュータのことはわかんねぇしなぁ」という経営者だって多いのである。私だって、経済のイロハもわからず社長やってるのだから、コンピュータやネットワークがわからない経営者をあれこれ言う資格はない。

第一、システム屋の私にしたって、システムを組むことはできても、「評価する」となると非常に難しいものである。情報システムは、ハードウェアからアプリケーションやネットワークに至るまで、複雑で多様な要素によって構成されているのだし、ユーザのニーズによっても重点を置くべき評価の軸には幅がある。ユーザに「使いやすい?」と聞いて「はい」なら成功、「いいえ」なら失敗、なんていう単純なものなら楽でいいが、それでは何も評価していないのと同じである。

では、どうしたらいいか?

システムの評価にあたって、非常に重要なことがひとつある。それは、常に「定量的」な評価を行う、ということだ。

性能でも使い勝手でもコストパフォーマンスでも、「評価」というからには、結果をなんらかの値、指標としてデータ化しないといけない。現在のITには、上手に使えば失敗を成功に変えられる「錬金術」がいくらでもある。

だが、それもデータありき、だ。正確で客観的なデータを集めること、これが全ての成功の基礎となる。

そんなわけで、正直非常に荷の重い連載になりそうな予感がひしひしとしているが、筆者にとってもこれは研究し甲斐のあるテーマである。私ひとりの脳味噌であれこれ考えるのでなく、時には業界のエキスパートのお知恵も拝借しつつ、読者の皆さんと一緒に学んでいきたいと思っている。

まずは次回より、よく用いられる評価手法や使えそうなツールを紹介していきたいと思う。アカデミックな話よりは現場で活かせる内容にしたいと考えているので、肩ひじ張らずにエッセイでも読むつもりでお付き合い頂ければ幸いである。

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インデックス

連載目次
第25回 Webサーバの定量評価 - アクセスログとデータマイニング
第24回 「OSDL DBT-1」を試してみる - DBT-1の出力結果
第23回 「OSDL DBT-1」を試してみる - テストを実行してみよう
第22回 「OSDL DBT-1」を試してみる - テストを実行するための最終的な設定
第21回 「OSDL DBT-1」を試してみる - サンプルデータの作成
第20回 「OSDL DBT-1」を試してみる
第19回 OSDL Database Test Suiteでデータベースを評価する
第18回 トリアージ値の定量化はいかにして行われたか
第17回 トリアージ値、ご存知ですか?
第16回 セキュリティの国際基準を見てみよう
第15回 セキュリティの定量評価(1)
第14回 使いやすさの定量評価 ユーザの操作をロギングする
第13回 「使いやすさ」の定量評価
第12回 ハードディスクの温度をグラフ化する
第11回 もっと高度なS.M.A.R.T監視を体験
第10回 ハードディスクをS.M.A.R.Tで診断
第9回 Webサーバの信頼性を計算したい! - 信頼性と「バスタブ」のいろいろ
第8回 信頼性評価のキホン
第7回 身近な定量評価 - sa2で毎日のレポート
第6回 身近な定量評価その4 - Mac OS Xでの情報収集
第5回 身近な定量評価その3 - perfmon.exeで継続的に情報収集
第4回 身近な定量評価その2 - Windowsのperfmon.exeを使ってみる
第3回 定量的な評価を身近で体験してみる
第2回 定性的と定量的って?
第1回 「反省」するだけじゃダメ、失敗を評価してますか?

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