アプリストアでキーワード検索した時、最も上にリストされたアプリに「広告」と表示されていたら、あなたはクリックするだろうか?

GoogleがGoogle Playのアプリストアにスポンサード検索結果を導入する計画だ。キーワードに応じた広告主のアプリが「Ad」というマーク付きで検索結果のトップに表示されるようになる。

Google Playはたくさんのアプリであふれ、FacebookやPandoraのような有力開発者のアプリならともかく、無名の開発者の新しいアプリはなかなか見つけてもらえない。Androidユーザーと優れたアプリを結ぶ"発見"が大きな課題であり、スポンサード検索結果は効果的なソリューションの1つになるとGoogleはアピールしている。

左は「hotel apps」で検索した結果、「Ad」のマークが小さく広告であるのがわかりにくいという声も。右の「travel apps」で検索した時のように結果がカテゴリ表示されていると、広告は見分けやすい

ユーザーやメディアの反応はさまざまだ。歓迎する開発者がいれば、アプリストアの検索結果の一等地に広告を配置することへの拒否反応もある。個人的には広告をビジネスモデルとするGoogleが広告をアプリ検索に拡大するのは自然な流れだと思う。でも、効果については半信半疑で、本当に役立つアプリやサービスを提供している開発者やベンダーがスポンサード検索結果を活用するか、様子を見たいと思っている。

良質なWebコンテンツが見つからない

Google Playのスポンサード検索結果の発表を読んで、1カ月ほど前にSeth Godin氏の「Is Google making the web stupid? (GoogleがWebを愚かにしてる?)」という記事が話題になったのを思い出した。Webページをインデックス化し、リンクに基づいてランクしたGoogleは、Webに品質の高いコンテンツを増やす原動力になった。同社は世界中のあらゆる情報を整理して、検索ユーザーに最高の情報を届けることを目指してきた。

でも、そんな未来がやってきているだろうか。オンライン広告市場を生み出したGoogleは、Webからマネタイズする流れも作った。トラフィックを稼ぐための記事、トラフィックを上げる仕掛けがあふれ、その結果「深みがあり、表現も素晴らしいオンラインマガジンが、それらを探している人たちから見つけられにくくなった」(Godin氏)

この記事を受けてMarco Arment氏は「ブログを持ってる? 過去1、2年のトラフィックはどうだい? 私のブログは明らかに平坦、むしろゆっくりと減少している。たくさんポストした時でも変わらない。下落するトレンドは初めてのことだ」と書いた。つまり、良質なコンテンツの提供を心掛け続けているからこそ、ここ1、2年は減少に転じていると言いたいのだ。

モバイルアプリの世界はWebに近い。「優れたアプリがユーザーに届く」という理想を肌で感じられるものの、本当に近づいているかというと確信を持てないのが現状である。

ただ、それほど悲観的な気分ではない。Arment氏はブログ記事の最後に「今はまだ兆しが見えていないが、間もなく振り子が逆に振れ始めると願っている。好転する前ほど、状況は一層悪くなるものだ」と書いているが、兆しがまったく見えないというわけではないのだ。

「Desk」というMac用エディタソフトを開発・提供するJohn Saddington氏が、John Gruber氏のブログ「Daring Fireball」のスポンサーになった成果を公開した。Deskはデザインに優れたマークダウン対応エディターであり、優れたパブリッシングツールである。プロブロガーであるJohn Gruber氏はApple好きの論客として、(Appleに偏ってはいるが……)優れたコンテンツをDaring Fireballで提供している。Apple製品ユーザーの間では有名なブログだ。オンライン広告は掲載せず、ブログの内容に共感するスポンサーの支援をビジネスモデルとしている。

Saddington氏はGruber氏の立ち位置や考えを理解し、Daring Fireballの読者がDeskのユーザーターゲットになると判断してスポンサーになった。結果は「成功」だった。Daring Fireballでスポンサーの製品として紹介されたことでDeskの売上が伸び、Mac App Storeでも注目のソフトとして取り上げられた。効果的に潜在ユーザーに"発見"されたのだ。ちなみに、このスポンサー成功のブログ投稿はHacker Newsなどにランクインし、バイラルイベント的に大きなアクセスを獲得したが、そっちのほうはDeskの売上増につながらなかった。ただ、トラフィックが増加しただけではうまくいかない。難しいものである。

Daring Fireballはスポンサーの支援を受けながら良質なコンテンツを提供し、Daring Fireballの読者はスポンサー広告記事からでも自分たちの役に立つソフトを発見できている。Saddington氏はDeskの立ち上げに成功した。素晴らしい製品(アプリ)やコンテンツ、それを必要とする人たちが結びつくことができれば、すべての人が満足し、ビジネスとしても成立する。Daring Fireballを利用したDeskの成功は、Arment氏の言う振り子を逆に振らせるヒントになるはずだ。