先週、AppleとFacebookの1-3月期決算がアナリストの予想を上回る好業績だったことが大きく報じられた。AppleはiPhone、Facebookはモバイル広告と、どちらもモバイルが好調だった。

とは言っても、Macは30周年を迎えてなお健在だし、Facebookはデスクトップ時代を制したSNSである。どちらもPCを根っことするイメージが根強い。そこで、2社の"今"の成長にモバイルがどのくらい貢献しているか計算してみた。その結果は、実に驚かされるものになった。

Appleの1-3月期は、売上高456億4600万ドルで、前年同期(2013Q1)の436億300万ドルから5%増(20億4300万ドル)だった。その内、iPhoneは売上高260億6400万ドルで前年同期比14%増。iPadは76億1000万ドルで同13%減。この2つを足すと売上高336億7400万ドルである。2013Q1の317億100万ドルとの差は19億7300万ドル増である。

全体の売上高の伸び20億4300万ドルに対して、iPhoneとiPadの売上高の伸びが19億7300万ドル。なんとiPhone・iPadの売上高の伸びは売上高全体の伸びの96.6%に相当する。

Appleの2014年1-3月期、売上高の前年同期比を「iPhone/iPad」と「その他の製品」で比較

ちなみに2012年末に発売した初代iPad miniが大ヒットしたことで、2013Q1にiPadの流通量を増やし、今年は逆に在庫調整で出荷数を減らしたためiPadの出荷台数が前年同期比16%減だった。それでも96.6%である。もしiPadをパソコンのグループに含めて、iPhoneとその他の製品で比べたら、iPhoneの売上高が31億900万ドル増、その他の製品は10億6600万ドルのマイナスになる。

Appleの2014年1-3月期、売上高の前年同期比を「iPhone」と「iPadを含む、その他の製品」で比較

続いてFacebook。1-3月期は売上高25億200万ドルで前年同期比72%増。広告売上は2013Q1の12億4500万ドルから2014Q1は22億6500万ドルに増加した。モバイル広告の比率は2013Q1が30%、今年は59%だから、モバイル広告売上高は2013Q1が3億7400万ドル、2014Q1が13億3600万ドルである。つまり、広告売上全体の伸び(10億2000万ドル)の94%がモバイル広告の伸び(9億6200万ドル増)ということになる。

Facebookの2014年1-3月期、広告売上高の前年同期比を「モバイル広告」と「その他の広告」で比較

Facebookの2014年3月末時点の月間アクティブユーザー数(MAU)は、前期比4%増の12億7600万人だった。4800万人の増加だ。そしてモバイルのみのMAU (モバイルアプリまたはモバイルWebサイトのみ使用)が3億4100万人。前期の2億9600万人から4500万人の増加である。FacebookのMAUの増加分のほとんど(93.8%)が、モバイルのみのMAUだったことになる。

Facebookの2014年1-3月期、月間アクティブユーザー数(MAU)の前期比を「モバイルのみのMAU」と「デスクトップのみのMAU」で比較

AppleとFacebookの成長は、本当に大部分がモバイルからもたらされている。これを「モバイル頼み」という人もいるかもしれないが、モバイルへのシフトを断行してきたからこその好業績である。2013年に米国ではインターネット広告の年間売上高がTV放送広告の売上高を上回った。インターネット広告で、成長著しいのがモバイル広告であり、AppleとFacebookの業績は、いずれモバイルがネットのメインストリームになるという予測が現実味を帯びてきた証しと言える。

Facebookのモバイル分野での成長がGoogleの脅威に

Googleもモバイル企業へのシフトを進めている企業の1つだ。Androidを擁する同社は、おそらく最も多くのモバイル広告を販売している。スマートフォンの普及と共に、ペイドクリック数が着実に増加し続けてきた。しかしながら、同時にクリック単価の下落も続いている。これは従来のオンライン広告に対して、モバイル広告の単価が低いのが要因とされているが、すでにモバイルの価値は認められ始めている。Facebookの広告単価はモバイル広告の成長と共に上昇しているのだ。これはGoogleがモバイルを成長エンジンにしきれていないことを意味する。

近年GoogleはAndroidの標準アプリを強化するのではなく、Googleのモバイルアプリを通じてモバイルユーザーをGoogleのサービスに囲い込む戦略にシフトしている。同様にFacebookも、Facebookの機能・サービスを解体し、それぞれに最高の体験を提供するアプリ (例:Facebook Messanger、Paper)を通じてモバイルを攻略するという戦略を打ち出している。Googleの立場から見たら、Facebookのモバイル分野での成長は"侵攻"に等しい。FacebookやTwitterのソーシャルの牙城を崩すなどと言っている場合でない。Androidで築き上げてきたモバイルの優位性がぐらつき始めている。

先週、Google+を率いていたVic Gundotra氏がGoogle退社を明らかにした。Tech CrunchはGoogle+の今後を「歩く屍」と表現、ReaWriteは「Google+の責任者Vic Gundotraが去って、ぐらつくソーシャル戦略の屋台骨」としている。報道によると、Google+の核となる製品だったHungoutsやフォトの開発チームは、Androidに移るそうだ。また、Google+の責任者には、Google+の製品マネージャーだったBradley Horowitz氏ではなく、エンジニアリング担当バイスプレジデントのDavid Besbris氏が就いたという。

ソーシャル分野でGoogleがFacebookやTwitterに対抗するという視点から見たら、迷走しているようにしか見えないGoogle+部門のシャッフル。しかし、モバイル分野で脅威になってきたFacebookに対抗し、しゃにむにモバイルへのシフトを優先し始めたと考えたら、これは理に適った施策である。