パーソナライズ化の基本データを収集するHunch.comがiOSユーザーとAndroidユーザーの人物像を比べたインフォグラフィックを公開した。調査の回答者数は1万5818人で、使用OSの内訳はAppleのiOS(32%)、Android(21%)、Windows Phone(8%)、その他のOS(23%)、分からない/スマートフォンを持っていない(16%)となっている。

iOSユーザーはリベラルでアーリーアダプター
iOSユーザーは女性である確率がAndroidユーザーよりも18%高く、また35歳以上である確率が29%高い。しかしながら、テクノロジが苦手な女性ユーザーや年齢の高いユーザーではないようだ。新しいテクノロジのアーリーアダプターである確率が50%も高い。また大学院卒が多く、そして収入も高めだ。機能が絞り込まれた優れたデザインのデバイスを好む傾向が122%高いことを考えると、Appleの製品デザインや、テクノロジを表に出さない思想が女性や年齢の高いユーザーへの浸透につながっている模様だ。1992年以前にインターネットを使用し始めた確率、複数のEメールアドレスを所有している確率、パソコンのデータをバックアップする習慣を持つ確率が、それぞれ50%、22%、67%高く、むしろテクノロジに強いユーザーが多い。政治的にはリベラル。寿司やパッドタイなどエスニック料理にも挑戦し、アイスクリームの好みも塩キャラメルやミントチップなど変わったフレーバーが目立つ。

Androidユーザーは若いのに保守的
一方Androidユーザーは男性である確率が10%高く、年齢は18歳-34歳が多い。テクノロジに強そうな印象だが、Eメールアドレスを1つしかもっていない確率、パソコンのデータをバックアップしたことがない確率が、それぞれ35%、33%高い。またYahoo! Mailを使っている確率が50%高いなど、あまりテクノロジにこだわりのないユーザーが多い。原因として、Androidスマートフォンにエントリー価格帯の製品が多い影響が考えられる。デザインをそれほど重視せず、むしろ見た目が悪くてもあらゆる機能を搭載している製品を好む。保守的で中流意識を持ったユーザーが多く、収入をバケーションなどで費やさずに、こつこつと貯蓄し続ける。メインコースに選ぶのは、サーロインステーキや中華料理の定番メニューなど。アイスクリームの好みもバニラやチョコレートチップなど、王道と呼べるようなフレーバーだ。

Hunch.comは今年4月にMacユーザーとPC(Windows)ユーザーを比べたインフォグラフィックを公開している。MacユーザーとiOSユーザーの人物像は多くの項目で似通っており、またAndroidユーザーとPCユーザーも保守的という点で共通点が多い。

ただ、年齢の傾向がまったく異なる。Macユーザーは18歳から34歳である確率がWindowsユーザーよりも22%高く、PCユーザーが35歳から49歳である確率はMacユーザーよりも22%高い。iOSユーザーが高い年齢に広がり、Androidユーザーが若いのとは逆の状況だ。この違いは何だろう? まず保守的な35歳以上のPCユーザーがスマートフォンに移行していないと考えられる。さらにAppleユーザーの視点から考察してみると、この年齢分布から現在のPC業界が抱えている苦悩が浮き彫りになる。

Androidユーザー(左)の傾向は若い男性(18-34歳)、iOS(右)は女性と、35歳以上に浸透している。

今のMacユーザー(右)はPCユーザー(左)よりも年齢が若く、都市在住者が多い。

GartnerのPC出荷台数調査によると、今年第2四半期の米国のPC市場は前年同期比5.6%のマイナスだった。トップ5のうちプラス成長だったのは3位のアップル(8.5%プラス)と4位の東芝(3.5%プラス)のみ。大きな原因の1つとしてGartnerはタブレットの影響を挙げている。タブレットの品揃えを拡充したい小売店がパソコンの発注を控え始めたという。Appleも例外ではなく、決算報告のカンファレンスコールでCOOのTim Cook氏がiPadとノート型Macの食い合いを認めている。ただ同社の場合はタブレット市場でiPadが強く、iPadやiPhoneを体験してからMacに関心を持ち始めるユーザーがプラス要因になっている。だから同社は、iOSデバイスからMacに流れてくるユーザーを満足させられるように、OS X LionにiOSのインタフェースや使い勝手を取り入れたのだろう。

Hunchのデータによると、Macは従来のPCに関心を持たなくなった若い世代に使われ、かつ新しもの好きのアーリーアダプターの心をがっちりとつかんでいる。一方でiPhoneやiPadは、従来のPCを愛用していた世代に浸透している。この年齢分布は、Appleが従来のPCからポストPCデバイスに、またはポストPC世代のPCへのトランジションを上手く進めている証しと言える。翻ってPCは、新しい世代のPCユーザーを開拓できないまま、市場の縮小に直面している。

さて、Hewlett Packard (HP)がwebOS端末事業の閉鎖を発表し、さらにPC事業の切り離しを検討していることを明らかにした。同社は世界のPC市場でシェア1位だが、PCは利益率が低く、第2四半期の数字は黄信号の点灯と言えるだろう。PCは儲からないのか? 2010年の米国におけるPCの平均販売価格は景気変動や価格競争、タブレット人気などの影響を受けて600ドル台から700ドル台前半という低い水準を激しく動いた。価格崩壊寸前で、先行き不透明な製品と言える。

しかしながら低価格で勝負できるアジアのメーカーでなければ、PC市場で生き残れないというのは早計だ。ネットや一般的な利用において従来のPCのピークは過ぎ去ったものの、PCという製品が儲からなくなったのではない。それはiOSデバイスユーザーを強く意識したMacの好調な売れ行きが証明している。円高の影響で日本国内ではMacが値下がりしているが、米国でのここ数年のMacの平均販売価格は1200ドル台後半を推移しており、むしろじりじりと上昇している。それでも売れているのだ。

ポストPCデバイスはタブレットやスマートフォンだけではない。PCもまたポストPCデバイスになり得ることに挑む米国のPCメーカーが今のところAppleだけというのは、なんともさびしい。また、それこそPC市場の先行きが懸念される要因である。