6月7日(米国時間)に始まった1文字ドメイン名「e.co」の慈善オークション。B52 MediaのLonnie Borck氏らが81,000ドルで競り落とした。

e.coオークションには10カ国以上から20名以上が入札した。これは単一のドメイン名オークションでは過去最高記録だという。Borck氏はドメイン名を扱う投資家で、2007年にscores.comを1,200,000ドルで売却したことがある。さて今回のe.coに81,000ドル(約740万円)という金額……みなさんは賢い投資と考えるだろうか?

Disrupt、Web 2.0 Expoなど、ここ数カ月の間に米国のITイベントで.CO Internet S.A.S.のロゴを見かける機会が急増

e.coのオークションは.coドメインのレジストリ運営企業.CO Internet S.A.S.が「.co」販売のプロモーションの一環で主催した。オークションの収益は落札者が選択する慈善団体に寄付される。今回e.coが選ばれたのは、セカンドレベルとトップレベルの組み合わせがecoになるからだろう。だが将来このドメイン名を入手するのは環境に関わる企業や団体ではなく、eBayのような"E"からイメージされる企業ではないかと予想されている。8日(同)にTwitterが「http://t.co/」を用いた短縮URLサービスを今夏から提供する計画を明らかにしたが、これも.coドメインと1文字のセカンドレベルドメインを組み合わせたものだ。

グローバルに開放されるコロンビアの国ドメイン

そもそも.coドメインとは何かというと、コロンビア共和国に割り当てられている国ドメイン名である。これが様々な理由から、国識別の枠を超えた存在になっている。

まず「.com」との類似性だ。2007年にカメルーンの国ドメイン名「.cm」について、ある米国の会社が、存在しないURLの転送先を指定する権利をカメルーン政府から買い取って話題になったことがある。Webユーザーが.comのつもりで.cmと入力してしまうことが多く、その会社は入力ミスしたユーザーを誘導して広告収入を上げようとした。こうした入力ミスは悪質なフィッシングサイトへの誘導にも利用されており、ブランドイメージを守るためにWebユーザーの入力ミスが考えられる様々な国のドメイン名を押さえている企業は多い。.comと1文字違いの.coも、悪用される可能性が高いドメイン名である。

.coの場合、.co自体がCOmpanyまたはCOrporation、COmmerceなどを連想させる。同ドメインを用いれば、企業やEコマースサイトが入力しやすい簡潔なURLをユーザーに提供できる。こうしたマーケティングに利用できる価値が認められた国ドメインはいくつか存在する。例えばツバルの「.tv」、西サモアの「.ws (Web Siteの略)」、モンテネグロの「.me」、トンガの「.to」、ココス諸島の「.cc」などだ。ただ、これらは利用する側のイメージ戦略や業種に合致すれば効果的だが、当てはめられる範囲はあまり広くはない。その点、.coは企業・ビジネスをあらわすドメインとして幅広く使える。また日本や英国などいくつかの国で企業向けのセカンドレベルドメインとしてcoが使われているのも、企業・ビジネスをあらわすイメージの定着につながっている。

そこで2001年にロスアンデス大学が、.comと同様に.coをgTLD(generic Top Level Domain)として全世界の人々に開放してはどうかと提案した。しかしコロンビア政府がこのアイディアに異議を唱え、その後サブコントラクタを置いた .coの商業化にシフトして今日に至る。

今年春にスタートした.coドメインの登録プロセスは以下の通りだ。

  • 4月1日~4月20日:サンライズA。コロンビアのトレードマーク所有者が優先される。
  • 4月26日~6月10日:サンライズB。グローバル規模でトレードマーク所有者が優先される。例えばCoca-ColaやIBMなどグローバル規模の企業が.coドメインを取得可能。
  • 6月21日~7月13日:ランドラッシュ期間。商業的な価値の高いドメイン名の登録受け付け。複数が競合する場合はオークション。
  • 7月20日:一般登録受け付け開始。

「.co」のイメージ戦略、着々と展開

ようやくグローバル規模の開放に至った.coだが、このタイミングになってしまったのは.coにとっても、またネットユーザーにとっても好ましい結果かもしれない。

Twitterが短縮URLに用いるt.coは、.CO Internet S.A.S.とのパートナーシップによって実現した。Twitterが8日にt.coの計画を公表したのは、おそらくe.coのオークションにタイミングを合わせたのだろう。これはe.coオークションの経緯だが、Twitterの発表によりオークション後半に向けて入札に弾みがついた。.coが.comのイメージを残しながらコンパクトなURLを作れる価値が数年前と今日では異なることに、Twitterの発表で気づいた人も多かったのではないだろうか。

ちなみに慈善オークションを主催した.CO Internet S.A.S.は、コロンビア企業のArcelandia S.A.と米Neustarが設立したベンチャーである。Twitterの例でも分かるように、実に戦略的に.coをアピールしている。

TechCrunchが5月24日~26日に米ニューヨークで開催したスタートアップイベント「Disrupt」のWebサイトをdisrupt.coで構築したが、これも.CO Internet S.A.S.とのパートナーシップによるものだ。破壊的なインパクトを備えたスタートアップというイメージをURLで伝えるブランディングである。

もちろん今.coを使っても、.comの間違いだと思われるケースの方が多いと思う。特に米国ではそうなるだろう。この先.coが一般消費者にしっかりと認識されるようになるかは分からない。が、.coは企業や団体がグローバル規模のオンラインプレゼンスを改めて考え直すきっかけになっている。簡潔で、カンパニーやコマースをイメージさせる.coアドレスを効果的と感じた方は、今が.coドメインを取得するチャンスである。