【コラム】
Android携帯を手に入れて、まず最初に「Google Sky Map」をインストールした。携帯でなければ実現できないユニークな機能を備えたAndroid版の天体マップである。
宇宙を詰め込んだようなGoogle Earthの「Skyに比べると、AndroidアプリのSky Mapから得られる情報は限られる。星、星座、メシエ天体、惑星を確認できるのみだ。その代わり、Android携帯を天体望遠鏡のようなツールに変える自動モードを備える。Sky Mapを起動した状態で同モードでAndroid携帯を持つと、その方向の天体マップがディスプレイに表示されるのだ。「あの星は何?」と思ったら、自動モードでAndroid携帯を重ねるだけで、すぐに名前が判る。星の見えない昼間でも天体を確認できるし、足下に向ければ地平線の下に隠れている星も見える。同モードは検索機能でも利用でき、例えば「moon」と検索したら画面に矢印が現れ、その方向に従ってAndroid携帯を動かし、実際の月と重なったら「You foud Moon!」となる。
Sky Mapを入れて以来、星空のきれいな真っ暗な場所に行くと、つい車を停めてAndroid携帯を取り出してしまう。外で手持ち無沙汰の時も、メールやRSSリーダーをチェックせずに夜空を眺めたくなる。本物の星空がプラネタリウムに変わるところがSky Mapの魅力であり、リアルな世界とクラウドを結ぶモバイルWebサービスの可能性を感じさせる点だ。
ほかにも、観光ポイントの風景をカメラで切り取ると、その場所の解説が表示されるMobilizyの「Wikitude」や、現在地を仲間同士で共有する「Google Latitude」など、Android携帯にはiPhoneのユーザーが使っても新鮮に思えるアプリやサービスを数多く存在する。予想以上に楽しめている。
iPhoneとAndroid携帯の両方を手にして考えたのは、iPhone OSとAndroidの関係である。
しばらく前に、Google CEOのEric Schmidt氏がGoogleとAppleの取締役を兼任していることについて、米連邦取引委員会(FTC)が調査していると米New York Times紙などが報じた。米国の反トラスト法は、競合する2つの会社の取締役の兼任を禁止している。両社はいくつかの事業領域が重なるが、特にiPhoneとAndroidの競合関係にスポットライトが当てられている。
この文章は米AppleがサンフランシスコでWWDCを開催する前日に書いている。おそらく公開される時には、同社が基調講演でiPhone OS 3.0の機能や対応サービスをアピールした後だろう。例えばコンパス機能やW3CのGeolecation APIのサポートによって、Sky MapやWikitude、Google LatitudeがiPhoneでも実現可能になる。
これでもiPhoneとAndroidは競合していないと言えるのだろうか?
iPhoneとAndroid携帯は、明らかに競合する。だが、GoogleとAppleはどうだろう。Googleの開発者会議Google I/Oにおいて、同社エンジニアリング担当バイスプレジデントのVic Gundotra氏は「iPhoneがモバイルWebの扉を開けた」とし、その上で「Androidは、それをよりオープンにしようとしている」と付け加えた。
Googleの事業戦略は"オープンなWeb技術の推進"であり、それはAndroidにおいても同じである。これはAndroidの強みであり、そしてAndroid携帯に課題を残す。GoogleがAndroidを通じてオープンなモバイルWeb標準をサポートする以上、その技術は遅かれ早かれiPhoneやPalmのPreなどでもサポートされる。iPhone OS 3.0のSafariでGoogle Latitudeが利用できるようにだ。そうなるとユーザーにとって重要になるのは各モバイルプラットフォーム独自の使い勝手や機能である。開発者も同様で、必ずしもAndroid携帯になびくとは限らない。
AndroidはGoogleが手がけているだけあって、WebサービスやWebアプリを便利に利用できるプラットフォームだ。また、これからのモバイルWebで標準となるべきと考えられる数多くの技術が盛り込まれており、今後の指針としての魅力も備えている。しかしながらHTC Magicを使った限りでは、多機能携帯としての使い勝手ではiPhoneに及ばないというのが個人的な印象だ。だからといってAndroidが力不足というのではなく、AndroidをiPhoneのライバルとするのは携帯端末メーカー次第という部分があるのだ。
AndroidはモバイルWebを前進させるためのプラットフォームであり、その恩恵はAndroid携帯に限らず、iPhoneやPreなどモダンブラウザ技術を採用しているモバイル端末全体に及ぶ。それによってモバイルWebの成長が加速し、消費者に選択の自由がもたらされる。
AppleがiPhoneを米国でリリースした時に、Webアプリのみでサードパーティをサポートするとしてブーイングを受けたが、Webアプリをローカルアプリと同様に扱った同社をGundotra氏は「先見の明があった」と高く評価していた。結果的にiPhoneはクローズドな部分に加えて、Androidがもたらすメリットもうまく受け止めている。
残念ながらモバイルWebの加速に比べると、Androidがもたらす消費者の選択の自由は浮き彫りになっていない。ただWebOSを採用するPalm Preも面白い存在だし、着実にAndroidベースの端末も増えている。モバイルWeb標準をサポートする他の端末の巻き返しに期待したいところだ。
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