Microsoftのテーブル型PC「Surface」がニューヨーク、アトランタ、サンアントニオ、サンフランシスコなどのAT&Tストアでデビューした。これまで何度かイベントで触れられるチャンスに遭遇していたのだが、その度に同じ時間に取材が入ったりして今だに体験していない。ということで早速、お披露目イベントが開催されたAT&Tストアのサンブルーノ店に行ってきた。

サンブルーノ店を訪れるのは今回が初めてだったのだが、見つけるのに苦労しなかった。店の入り口に大きなSurfaceのポスター、通りの柱もすべてSurface色にペイントされていて、通り過ぎるのが難しいぐらいだ。

ストア全体でSurfaceをアピールするAT&Tストア・サンブルーノ店

店内には6台のSurfaceが設置されていた。遠目には普通のテーブルにしか見えないが、近づくと30インチのディスプレーは迫力がある。表面は硬質プラスチックという感じで、少し表面がザラっとした、サラりとした触感だ。複数の人が直接手で触れるから、ツルっとか、ベタっという感じだったり、表面に指紋が目立つと触りたくなくなると思うが、これなら触りまくられても清潔感を保てそうだ。飲み物をこぼしたり、食器などを落としても大丈夫そうな頑丈な作りである。

機能切替のソフトウエアダイヤル

AT&TモデルではSurfaceの周囲に携帯電話が設置されている

AT&Tモデルは「マップ」「電話」「サービスプラン」の3つの機能を備える。「マップ」を選択すると画面全体に色分けされた米国地図が広がり、AT&Tカバーエリアの受信感度や3Gサービス提供地域などを確認できる。iPhone/ iPod touchのマルチタッチと同様に2カ所に触れて手を開閉するとズームアウト/ズームインとなり、簡単に目的の都市を拡大表示できる。「電話」を選ぶと何も表示されない画面が広がる。Surfaceの周りにはSamsungやSony Ericssonの携帯電話、Blackberry端末などが設置されており、それらをSurface上に置くと仕様や機能、アクセサリなどの説明が表示される。2台の端末を置けば、仕様を並べて比較可能。またカラーパレットから色を選択しドラッグして携帯にドロップすれば、カラーバリエーションが表示される。

AT&Tのサービス提供地域が色分け表示される地図画面。両手や指の開閉で簡単かつスムースな拡大・縮小が可能

携帯電話を置くと現れるメニュー画面

携帯電話2台を置いて機能や仕様を比較

まったくPCらしくないSurface

PCベースだけに、もっと豊富な機能を想像していたが、思っていたよりもずっとシンプルだった。地図はパンフレットで見るよりも分かりやすいし、AT&Tのサイトのオンラインマップよりも操作しやすい。携帯電話の比較も、携帯電話の実物に触れながら、テーブルに置くだけでWebサイトやパンフレットでしか確認できないような詳細情報を呼び出せる。確かに便利なのだが、「Surfaceだから可能になる」という機能デモをもう少し見たかったところだ。今のままでは、Surafaceのタッチ操作の簡単操作に感動して欲しくなる携帯電話と言えば、同様のタッチ操作を利用できるiPhoneになってしまう。それでいいのだろうか……。

AT&Tのスタッフによると、SurafaceはWindows Mobile端末をアピールするためだけのキオスクではないという。ただ将来はユーザーが対応携帯電話をSurfaceに置いて、そこに画像や動画、リングトーンなどをドラッグ&ドロップで転送するようなサービスを検討しているという。それがWindows Mobile端末のみになるのか、それとも幅広いブランドに対応するかは教えてくれなかったが、少なくともWindows Mobile機が対象から外れるということはないだろう。

そもそもMicrosoftは記念すべき導入第一号がAT&Tストアで良かったのだろうか。携帯電話ショップを訪れるのは契約と機種変更の時だけ。そして訪れる時には店員とじっくりと話すことになる。Surfaceのようなキオスクが活躍する余地が少ないタイプのストアだけに、Surfaceの魅力が今ひとつ伝わってこないように思えた。たとえば検索と切っても切れない関係にある本屋やCDショップの方が、よりSurfaceの価値を伝えるソリューションのデモができるだろう。数年ごとにしか訪れないタイプのストアでも、車のディーラーならばカスタマイズや色の違いなどをすぐに手にとって確認できないので、Surafaceのような大きな画面で、その場でカスタマイズを確認できると便利だと思う。

ただしAT&Tのスタッフによると、ユーザーがどのようなサービスや機種に興味を持って比較をし、その上でどのような決断を下したかというようなデータはマーケティングや広告戦略を立てる上で重要になるそうだ。Surfaceの背後で、どのようなデータ収集が行われているかは明かしてくれなかったが、カスタマーが携帯電話の実物に触り、これまでのAT&Tストアでは提供できなかったような情報にアクセスできる上での判断は、Webや従来のストア内よりも質の高いデータ収集になると期待している様子だ。そうなるとカスタマー向けのサービスだけでSurfaceの価値は判断できない。

AT&Tはパイロットプログラムのフィードバックを基に、全米2,200店舗への展開を検討するとしている。正直、面白いけど5,000~10,000ドルの価値は見いだせないというのが、今回AT&Tストア内で使った感想である。それでもAT&Tが現状の機能のままで設置地域を拡大するようならば、カスタマーが気づかないところで、Surafaceのようなハイエンド・キオスクは大きな価値を生み出していることになる。