【コラム】
今年も2月28日から3月11日にサンノゼ市で、インディペンデント系映画を集めた映画祭「Cinequest」が開催される。地方都市の映画祭だから、新しいアイディアを出し続けないとすぐに衰退してしまう。だから毎年、試行錯誤を繰り返しながら、17回目にたどり着いた。今年のポスターには「Revolution」と、でかでかと書かれている。ここ数年の取り組みの集大成と言える"革命的なCinequest"になるそうだ。
Cinequestはサンノゼという土地柄を反映して、テクノロジ導入に積極的だった。米国でブロードバンドが一般普及しているとは言い難かった一昨年に、P2P技術を使ったダウンロード配信を試験的に開始。Intelが協賛企業に加わった昨年は、Viivに対応したオンライン配信を始めた。今年はというと、昨年11月にCinequest Distributionという独自の配給システムをスタートさせ、オンライン配信をCinequestのプログラムに本格的に組み込でいる。
Cinequest Distributionでは、第1段階として昨年11月に35本のDVDタイトルをリリース。第2段階として、インディ映画専門の鑑賞・共有サービス「Jaman.com」を通じたオンライン配信を開始した。そして第3段階として、1月30日からCinequest Onlineでのペイパービューサービスを開始。現在、Cinequest独占タイトルとなるCinequest Exclusive Collectionとして61作品、Cinequest Discovery Collectionとして110作品の配信が行われている。価格は長編が4.99ドル、短編が1.99ドルとなっている。
Cinequestによると、従来スタイルの配給方法で作品を公開できるインディ映画は米国では1%に満たないという。CinequestがDVDのオンライン販売や、オンライン配信のプラットフォームを用意することで、若手映画人のCinequest参加が作品公開につながる。もちろん今はビデオ共有サービスなど手軽に作品を披露する方法があるが、Cinequestの選考を勝ち抜いたという評価、オンライン配信の画質の高さなど、あえてCinequestに挑戦するメリットは大きい。
今年はYouTubeムーブメントを反映して、短編部門が改善された。短編作品のセレクション数は昨年よりも減らされたが、選ばれた作品は期間中に昨年よりも頻繁に上映される。しかも前座のような扱いではなく、長編同様の扱いで上映するそうだ。質の高い短編作品を厳選し、より多くの人が鑑賞できる機会を設けることで、短編映画のさらなる向上を期待している。
オンラインサービスの本格開始に伴い、Cinequest上映枠の最後の長編4本/短編4本をネットユーザーの投票で選ぶビューワーズ・ボイスというコンペティションも行われている。現在、長編31本と短編124本がダウンロード公開中。2月20日まで投票を受け付けているので、日本国内からでも参加してみてはいかがだろうか。
Conequest Onlineに不満があるとすれば、ユーザー同士のコミュニケーション機能の欠如だろう。短編が多いとは言え、ビューワーズ・ボイスは全作品をチェックできるような数ではない。ユーザー同士が感想やおすすめを共有できるソーシャルネットワークのような機能があれば、もっと効率的に楽しめる。
ネットでのユーザー投票で民主的に一部の上映作品を選出し、選ばれた作品にはオンライン配信やDVDなどで広く公開できる場を提供する。これからのCinequestは、インディで映画を作っている人にとって作品を売り込む貴重な場所になりそうだ。ただ他の都市の地方映画祭も同様の場を用意するようになったらどうなるか。あえてCinequestを選ぶ理由が見あたらなくなりそうだ。オンラインサービス開始は、地方映画祭の特色を薄れさせる面もある。だから、逆にサンノゼで開催されるCinequest本番が重要になる。現地で上映してみたい、または現地で作品を鑑賞してみたいと思わせるフェスティバルにならなければ、オンラインサービス開始が自分のクビをしめることになりかねない。
ここ数年のCinequestは、規模の拡大に合わせてサンノゼだけではなく、近郊のサラトガやキャンベル、ロスガトスなどにも上映館を広げてきた。ところが、映画館が分散しすぎていて作品鑑賞に集中できないという不満の声が出てきた。そこで今年はサンノゼのダウンタウンにあるCamera 12 Cinema、Repertory Theater、California Theaterのみでの上映となる。「歩いてはしごできるCinequest」がキャッチフレーズだ。なんだか東京都のオリンピック案のようだが、過去10年でもっとも狭い範囲で行われるCinequestであり、これまでで「もっとも身近に感じられるフェスティバルになる」と主催者はアピールしている。これが本当にフェスティバルの盛り上がりにつながるかは、今の段階では判断できないが、ダウンタウンの会場周辺の商店街はすでに昨年以上に盛り上がっている。この効果については、実際にCinequestが始まってから、またあらためてレポートしようと思う。
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