【コラム】

シリコンバレー101

207 再燃するルービックキューブ人気、燃えに燃えたかつての少年が競技会を観戦

    Yoichi Yamashita  [2007/01/16]

    ギークの力はルービックキューブで証明したのだ

    「頭のいい人」を英語で表現する際に、時々"ロケット・サイエンティスト"が使われる。「ロケット・サイエンティストでなくてもできる……」と言えば、難しくないことを指す。同じく頭のいい人を表すのに「ルービックキューブ」が用いられることもある。たとえば「ザ・シンプソンズ」でホーマーが賢くなる治療を受けた後、猛烈なスピードでルービックキューブを揃えられるようになったり、リアリティショーの「Beauty and the Geek (美女とオタク)」でギークの力を証明するのにルービックキューブを目隠しで揃えていた。

    ルービックキューブ人気は過去のもの……というか、米国でいつの時代も変わらずに人気のロケット科学者と違い、今やルービックキューブで表現される賢さは、どこか笑えるものだ。80年のルービックキューブ・ブームにどんぴしゃりで、燃えに燃えた1人としては、ちょっと寂しい気分である。

    ところが先日、フローズンヨーグルトの店の広告で「ルービックキューブのカラーコンビネーションよりも多い……」という表現を発見。数えられないほどたくさん(ちなみに43,252,003,274,489,856,000通り)の種類をアピールしている。しかも、どう見ても真面目な広告である。「こんなの30代後半以上にしか通じないよ……」と思ったら、どうも最近通用するようになっているらしい。

    米国で80年に登場したルービックキューブは最初の3年間で1億個を突破した。その後も1億5,000万個が販売されたというが、80年後半から見かける機会は少ない。ところが2年ほど前から、ふたたびルービックキューブの売上げが伸びているという。2005年は前年比73%増、さらに06年も80%程度の伸びになる見通し。この再ブームに気分を良くした販売元のHasbroは今夏に電子バージョンを発売するそうだ。

    最近の話題だと、米国で昨年の12月15日に公開された映画『The Pursuit of Happyness』(放題『幸せのちから』)で、ウイル・スミス扮する主人公が自身の可能性を示す小道具として使われている。映画の設定が1981年とは言え、「美女とオタク」の扱われ方とはずいぶんと違う。

    Godspeed Cube

    MYCOMジャーナルにも寄稿している鈴木さんに「今の世界記録は十数秒ですよ」と言われた。

    それを聞いて、なにをバカなことを……と。1分十数秒の間違いだろう……と。

    だって、あのころ私たちは授業そっちのけで必死に手順を探って(結局あんちょこ見て)、なんとか1分台だったんだから……と思った。が、調べてみたら、本当に世界記録は10.48秒。最近はスピードキューブとして、なかば競技化しているようだ。さらに調べてみると、サンフランシスコでは1月に「International Rubik's Cube Competition」が開催されている。第1回の06年の大会では、当時の世界記録となった「11.13秒」が出ている。ということで、さっそく13日に開催された第2回大会の観戦に……。

    場所はExploratoriumという博物館の中で、3×3×3、4×4×4、5×5×5のスピード、3×3×3のブラインドフォルド(目隠し)のスピードなどが行われた。Caltechのキューブクラブのメンバーが中心になって行っている大会で、Caltech Winter Competitionとも呼ばれている。競技者は子供から大人まで、男性に混じって女性の姿も目立った。圧倒的に多いのはアジア人で、ファイナルになるとアジア人同士のような争いになってしまう。

    子供が実験できる科学博物館の中で行われた第2回International Rubik's Cube Competition

    5×5×5の予選

    3×3×3は1/100秒の争いになるため会場はフラッシュ禁止

    男性だけかと思っていたが、会場には女性も多かった

    実際、我々の時代とは比べものにならないぐらい速い。3×3×3が終わったばかりの子供に速さの秘密を聞いたら、「一瞥して色が並ぶ平面が見えるようにならなければダメだ……」と何やら哲学的なことを言われてしまった。会場に行くまでに、すでに究極の手順を見つけていて、いかに素早く回転させるかという勝負になっているのでは……と思っていたのだが、どうも違うようだ。色の配置を読み取り、臨機応変に最適な手順を組み合わせなければ、十数秒の世界は実現しないのだろう。まず一面と上の列を並べて……みたいな感じで、お決まりの手順だけで揃えていた25年前と違って、ずいぶんと奥が深い。

    スピードキューブには総本山と呼べるようなSpeedcubing.comというサイトがあり、そこではイベントや記録に加えて、アルゴリズムやフィンガートリックなどの最新情報が提供されている。これを見はじめると、ルービックキューブを買わずにはいられない。試してみたくなるのだ。今は、このようにネットを通じて多種多様な手順やノウハウを仕入れられる。それでも、まだまだ探求できる奥深さがあるからこそ、ルービックキューブが再び盛り上がっているのだろう。

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