【コラム】
オンラインCD交換サービスのLala.comで、エイミー・マンがサンフランシスコのBimbo's 365 Clubで行ったコンサートのライブキャストが行われた。エイミー・マンはクリスマスアルバム「One More Drifter in the Snow」をリリースしたばかりで、12月上旬に行われたライブもクリスマススペシャルとしてベイエリアで話題になっていた。そんなライブがラジオではなく、Lalaで公開されたのだ。
本コラムで紹介してから、半年も経たない間にLalaはずいぶんと変わった。
Lalaは"所有しているCD"と"欲しいCD"のリストを作成したメンバー同士をマッチングしてくれるサービスだ。CD交換が成立すると手数料1ドル+送料0.75ドルとなる。手数料の20%はアーティストに還元される。各ユーザーのページにはレビューやブログを掲載できるようになっており、さらにメンバー同士でメッセージを交換し合える。音楽専門のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のような一面を持っているのも特徴だ。
その後の変化を紹介すると、CD交換サービスが落ち着いた頃に、CD販売の窓口となるLala Storeを開始した。これが良心的な価格でなかなか……なのだ。メンバーが所有するCD数が増えなければ、CD交換も行き詰まる。それに安くしなければ、交換一辺倒のユーザーばかりになってしまうから、当然と言えば当然なのだが、安い。交換がなかなか成立しないCDの横に、[11.89ドル]というボタンが付いていたりすると、ついついポチッと押してしまう。
10月には、放送がとまったネットラジオ局のWOXYを復活させ、その技術を土台にLala.comでも、メンバーがDJとなってお勧めの曲をストリーミング提供できるLala Radioを開始した。これがまた、なかなか……と言いたくなるサービスだ。アルファ段階なのでDJになれるのはLalaに貢献している一部のメンバーのみだが、12月19日時点で458の市民ラジオステーションが設けられている。
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Lala Radio。「誰でもネットラジオのDJになれる」という正式サービス開始が待ち遠しい |
リスナーはステーション(DJの選曲)に対して「おすすめ」または「ダメ出し」できる。DJをやっているメンバーのページのラジオセクションに行くと、お勧め率や過去24時間の視聴状況などを確認できるので、DJとしての人気が一目瞭然だ。
ラジオはWebベースの専用プレーヤーで聞く。プレーヤーにはアルバムジャケットやアーティストの情報と共に、"欲しいCDリスト"と"購入"用のボタンが配置されており、再生中の曲を含むCDをワンクリックでCD交換リストまたはショッピングカートに入れられる。お勧め率の高いメンバーの中には、今まで聞いたことがないのに、思わずうなってしまうような曲を連発するDJがいる。おかげでアルバムジャケット下のボタンをポチっと押してしまう……。
Lalaの収入源はCD交換と新譜販売の手数料だが、サービスの軸は音楽専門のSNSと市民ラジオである。とにかくメンバーが音楽に出会えるチャンスづくりを徹底した上で、CD交換やCD販売をかぶせている。
正直、Lalaがサービスを開始したときは、CD交換というアイディアは面白いものの、リスクが高いと思った。いくらCD販売を活発にすると訴えても、パソコンに取り込んですぐに交換に出すユーザーの温床になればレコード会社は黙っていないだろう。
その時期を乗り越えられたのは、ユーザーコミュニティの力である。「もっと音楽に触れるチャンスを…」というLalaの主張への賛同。さらにLalaユーザーが好む音楽は、ヒットチャートの曲よりも、息の長い曲やマニアックな名盤など、いわゆるロングテールに属するアルバムが多い。Lalaが本当にCD販売を促進するビジネスモデルを構築できれば、アーティストやレコード会社にとっても損はない。ちなみにCD交換の発送作業は、基本的にユーザー任せであるにもかかわらず、苦情のレポートは2%程度だという。そのような安心感のあるクリーンなコミュニティを実現できたのがLala成功の要因である。
さて、TIME誌のパーソン・オブ・ザ・イヤーに今年は「You(あなた)」が選ばれた。表紙はパソコンのイラストで、ディスプレイ画面にはアルミホイルのようなシールが貼られていて、読者の顔が映るようになっている。レポーターやDJ等々、有名でパワフルな存在でなくても、ネットを活用すれば、"あなた"でもメディアをコントロールできる。実際に、それが起こっているから今年の人は"あなた"だ。
記事では、YouTube特集のほか、Amazon、Blogspot、Facebook、Flickr、MySpace、Wikipedia、YouTubeなどの有名ユーザーが紹介されている。Amazonを除いて、これらのサービスの1年前、さらには2~3年前の姿を思い起こすと、新人賞とMVPを同時獲得したようなパーソン・オブ・ザ・イヤーである。それを可能にしたのはユーザーコミュニティの力であり、そういう意味でも"You"は2006年のパーソン・オブ・ザ・イヤーだった。
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