【コラム】

シリコンバレー101

196 米ソニーの電子ブックリーダー、半年遅れで登場

    Yoichi Yamashita  [2006/10/17]

    米Sony Electronicsが電子ブックリーダー「Portable Reader System PRS-500」の出荷を開始するようだ。これまで"予約"だった同社のオンラインストアのステータスが"順次出荷"に変わった。今年1月のCESでデモが披露された時は、春発売予定だったが、結局秋になってしまった。それでも米消費者の注目度は高いようで、これからのオーダーについては出荷が11月30日以降となっている。

    気になるのは電子書籍の配信方法だが、現時点で同社のオンライン書籍配信サービスCONNECT eBooksは準備中のままだ。日本国内に比べると、米国では書籍の値段が高い。なので、ネット配信のメリットを十分に反映させたサービスを実現すれば、iTunes Music Storeが登場したときのようなブレークを期待できる。Sonyの場合、音楽でAppleの先行を許したという前例があるだけに、今回も大胆な一手を打たないと思う人も多いと思う。ただ音楽の時とは、多様な対応フォーマット(BBeB/ PDF/ JPEG/ MP3/ AACなど)という点で異なる。この間口の広さをユーザー重視の姿勢と受け止めて、ユーザーにとって魅力のある配信サービスの展開に期待したいところだ(保険的な考え方をすれば、CONNECT eBooksに失望したとしても、個人的なドキュメントを持ち歩くための端末として十分に活用できる)。

    ディスプレイにE Inkの電子ペーパーを利用したPRS-500

    New York Timesがベータテスト中のTimes Reader

    前々回にTimes Readerという電子版New York Timesの専用リーダーを紹介したばかりだが、ここ最近デジタルブック/マガジンが面白い。たとえば数週間前から「Shooting War」というサイトのRSSを登録している。これは2006年5月からオンラインマガジンのSMITHで連載が始まったグラフィックノベル、いわゆるデジタルコミックスである。

    ストーリーは、ニューヨーク市に住むジミー・バーンズというブロガーのアパートがテロリストによって爆破されるところから始まる。設定は2011年だが、イラク戦争を土台にした市民ジャーナリズムがテーマであり、PCや各種オンラインサービスなど読者であるPCユーザーが身近に感じられる話題が常に登場する。アート面では、絵と写真を組み合わせたグラフィックス、チャプターごとにトレーラーが用意されるなど、デジタルコミックスならではの表現を楽しめる。また前述の通りRSSが用意されているので、RSSリーダーに登録しておけば更新をしっかりとフォローできるし、コミックス・ページに読者の書き込みスペースが組み込まれているのも面白い。来年にはハードカバーに移植されたバージョンがWarner Booksから出版される予定だという。

    コミックスはネットに不向きと言われていたが、ネットならではの表現とサービスで読者を獲得しているShooting War

    このShooting WarとTimes Readerには通じるものがある。Times Readerは、Windowsの新プレゼンテーション・サブシステム「Windows Presentation Foundation(WPF)」を利用して、PCで新聞を読みやすく提供することを追求したリーダーソフトだ。

    Shooting Warは、デジタル版ならではの表現、サービスを追求している。これまで電子版というと、印刷版をそのまま転用するケースが目立ったが、どちらもコンテンツをネットで配信することを前提に、「PC上で読んでもらう……」ための表現にこだわっている。

    本や雑誌、新聞が、音楽のように急激にネット配信にシフトするとは、今でも考えていない。だが、Times Readerのようなソフト、PRS-500のような端末、Shooting WarのようなWebサイトなど、関係のないピースが1つずつ埋められることで、ネット配信という大きな絵が見えてくる。そんな雰囲気が感じられる。

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