【コラム】

シリコンバレー101

189 ネット上の"第2の世界"のコミュニティ会議 - 現実との関係が論点に

Yoichi Yamashita  [2006/08/22]

サンフランシスコ市で8月18日~20日にMMOG「Second Life」のコミュニティコンベンション(SLCC)が開催された。Second Lifeは、文字通り仮想の"第2の世界"でプレイヤーが生活するゲームだ。ザ・シムズに近いが、シムズではプレイヤーは、シムズによって作られた世界に生きるのみである。Second Lifeでは、物理シミュレートのスクリプトがプレイヤーに開放されている。プレイヤーは様々なアイテムを自由に作成し、自らSecond Lifeの世界を作り、変えていけるのだ。プレイヤーに自由が与えられているから、何が出現するか、何が起こるか全く予想できない。

と書くと、Second Lifeではとんでもないことが起こっていると思うかもしれない。たしかに奇抜なドレスアップでの生活を楽しむ人、夢の乗り物の設計に取り組む人、巨大な建造物に取り組む人など、現実の願望を実行しているプレイヤーは多い。その一方で、自由だからこそ可能になる"仮想世界での現実"がSecond Lifeの新たな面白さになっている。たとえば現実の世界でビジネスをしている人が、その事業をSecond Lifeの世界にも持ち込もうとしている。Second Lifeでは"Lindenドル"という通貨が使用されており、米ドルとLindenドルの交換の仕組みがある。そこにビジネスチャンスの匂いがするから、Second Lifeは注目されているのである。

現実世界同様、技術があれば教会のような大規模な建造物も建てられる(提供: Linden Lab)

Second Lifeでお買い物(提供: Linden Lab)

では、まずSLCC2日目に行われたコンベンションのセッションタイトルを紹介しよう。「メインランドグループコミュニティとプロジェクト」「Second Lifeでの異性関係」「Second Lifeにおける現実世界のビジネス」「Second Lifeでの非営利活動」「ブランド作りとマーケティング」「Second Life内のメディア」である。これでSecond Lifeで今何が起こっているのか、おぼろげながら見えてくるのではないだろうか。

SLCC会場。Second Lifeを開発するLinden Labがメインスポンサーだが、企画・実行したのはSecond Life内のコミュニティ。各所に手作りの跡が見られたコンベンションだった

コンベンションでは、Second Lifeが3段階の進化を遂げると言われていた。最初はシムズ同様、ソーシャルライフを広げるゲームだ。Second Lifeにはリラックスできるリゾート島もあれば、アダルト専用の危ない地域もある。検索機能を使って、自分の興味があるイベントや場所を探してテレポートし、様々な人と出会う。遊びの要素が濃い段階だ。

次がビジネスである。今は、この第2段階にさしかかったところだろう。

表情やボディランゲージで感情が伝わってくる3Dキャラクターは、表現力が豊かである。そこでSecond Lifeを、遠隔授業や会議に利用しようと試す学校や会社が出てきている。それには教室や会議室が必要ということで、Electric Sheepという、Second Life内に施設を作ってくれる仮想建築屋が現実世界に登場した。また今回のコンベンションでは、Rivers Run Redという代理店が、アディダスがSecond Life内で製品調査を行うことを明らかにした。製品だけではなく、プロトタイプも提供してブランドを広めるとともに、ユーザーからのフィードバックを集める。Second Lifeは、マーケティング活動の場としても注目されているのだ。英国のバンド、デュラン・デュラン(Duran Duran)は、Second Life内の島で大規模なライブを開催すると発表した。主催はBBCのRadio 1で、9月開催予定。サイモン・ル・ボンは生で歌うのか。ライブじゃなくて単なるイベントになるのではないか。いや、打ち込みやサンプリングを考えたら、楽器を弾くことがライブではないかもしれない……等々、色々と想像してしまうが、現実には存在しないライブがどのようなものになるか楽しみである。Radio 1は、Second Life内でDuran Duranへのインタビューを行うそうで、ラジオ局と仮想世界の関係もどうなるのか、興味深い。

ビジネスの次はずっと将来の話になるが、"ミックスワールド"と呼ばれる環境だ。現実とSecond Lifeのイベントが同時に起こる。たとえば第1回目のコンベンションの前夜祭では、パーティの様子がWebカムを通してSecond Lifeに中継された。パーティ会場の人がWebカムに向かって手を振れば、Second Lifeの住人も手を振り返す。そんな環境が作られていたそうだ。

さて、Second Lifeの盛り上がりに触れると、仮想世界に輝かしい未来が存在しているように感じられるが、正直、現実のビジネスと連動させるには、Second Lifeの表現力はまだまだ十分ではないように思う。今後、ビジネスを動かすプラットフォームへと進化できるかもあやしいところだ。それに、Linden Labという一企業のゲームが、そんな大それた世界になったら、色々と問題も出てくるだろう。

では、なぜ様々な企業がSecond Lifeに興味を持っているのか。彼らは、未来のネットをシミュレーションしているのではないだろうか。たとえば今は、世界中のブランドの新製品をネットでチェックして注文できる。だが、実際に着ることなく購入するのは不安である。そこで、もし自分そっくりのキャラクターが仮想世界で生活しているとしたら、仮想世界のオンラインショップで、自分の代わりに試着してもらうことができる。ファッションとオンラインショップの問題が、ちょっとだけ埋まるかもしれない。

ネットが伝える情報は世界を狭くしたが、フィジカルな距離とのギャップは広がっている。その差を埋めるのが"ミックスワールド"への道と言える。Second Lifeの世界は、現実と結びつけて"第2の世界"というにはまだまだ稚拙だが、未来のネットの実験場と考えると、面白い世界が開けている。

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