【コラム】

シリコンバレー101

182 Digg 3.0対Netscape.com、サービスクローン騒動の結末は……

    Yoichi Yamashita  [2006/06/27]

    ネットの草の根情報は信頼に足るか。掲示板、ブログなど、対象を変えながら繰り返し議論され続けている問題だ。「真実とは何か」という哲学的な問いに発展することもある。最近では昨年後半、ネットユーザーが自由に執筆・編集できるネット百科事典Wikipediaに、ジョークのつもりで書いたニセ投稿が長期間掲載されていたことで論争が再燃した。その議論が、今度はニュースポータルに飛び火した。今回は、サンフランシスコのスタートアップ企業、Diggのユーザー参加型のニュース・情報サービスをNetscape.comがまねたのが発端だ。

    Diggでは、登録メンバーが自由にネット上の情報を登録でき、さらに登録された情報に対して投票・コメントを加えられる。最大の特徴は"投票"を反映した情報の表示である。たとえば投票総数をベースに、過去1日/ 1週間/ 1カ月/ 1年という期間ごとに情報をソートできる。MYCOMジャーナルが毎週金曜日に公開しているアクセスランキングで、1週間分の人気記事をまとめて再チェックしている読者も多いと思うが、投票数順でソートされた情報はアクセスランキングを確認する感じに近い。また投票総数ではなく、その時点での投票の伸びや議論の盛り上がりなどを反映した「最近の人気記事」という表示方法もある。たとえば、松下のデジタル一眼レフカメラ「LUMIX DMC-L1」発表のような瞬間風速の大きいニュースは「最近の人気記事」では最初からトップに表示され、それに引っ張られるようにオリンパスの「E-330」やソニーの「α100」など関連記事も上位にランクされる。話題性を反映させた表示方法と言える。

    ユーザー参加型だから、ブログのちょっとした書き込みでも登録できるし、それが投票を集められるような良質な情報ならば、Diggのトップを飾る可能性もある。一方、読む側にしてみれば、面白さが裏打ちされた情報だけを効率的に入手できる。情報提供側と読者のメリットがうまく相まって人気が高まり、6月26日時点で、DiggはAlexaのトラフィックランキングで124位(ひとつ上の123位はGoogle.cn)となっている。

    このDiggの急成長に着目したのがNetscape.comである。6月15日(米国時間)に、読者投票型の仕組みを取り入れたニュースサービスのベータ版を公開した。Diggとの大きな違いは、アンカーと呼ばれる編集者の存在だ。登録メンバーが自由に活動できるDiggでは、ニセ情報でも面白ければ投票を得て上位にランクされるかもしれない。そのような混乱を避けるために、Netscape.comではアンカーが問題のある情報を監視する。

    これに対してDiggは、不正確な情報や問題のある情報が登録されても、マイナス投票やコメントでの指摘などを通じてコミュニティによって除外されると主張する。さらに6月26日に、サイトの仕組みを大幅にリニューアルしたバージョン3.0となるサービスを公開すると発表。チーフアーキテクトのKebin Rose氏が「Netscapeはサービス公開のタイミングを誤った」と発言するなど、競争を仕掛けてきたNetscape.comをあざ笑うかのような展開となって、今日の公開日を迎えたのである。

    新しくなったDiggでは、これまでテクノロジーとサイエンスのみだったトピックスに、ワールド&ビジネス/ ビデオ/ エンターテインメント/ ゲームなどが追加された。フロントページに表示するトピックスをユーザーごとに選択・変更できるカスタマイズ機能が追加され、情報のソート/ 検索/ アカウント管理などの各種操作が格段に行いやすくなった。これまでのユーザー投票方式を実験するサイトから、サービスとして情報を提供するサイトへと進化した印象である。

    では、DiggとNetscape.comのどちらが便利なのか。Diggのトピックスが増えたことで、さらにNetscape.comと似通ってしまったのだが、同じ仕組み、同じようなデザインでも2つはまったく違うサービスに感じられる。ほんの少しアンカーという要素が加わっただけでNetscape.comはマスコミ的になり、逆にトピックスが増え、サイトのデザインが洗練されてもメンバーによって作られるDiggからは、マスメディアの雰囲気がかけらも感じられない。Netscape.comからは"知っておくべき情報"が得られるし、Diggからは"Diggでなければ知り得ないだろう情報"が入手できる。Netscape.comは安心して読めるが、Diggは読む側のきちんとした判断が求められる。どちらが正しいかではなく、どちらからの情報も貴重なのだ。結局、どのサービスを使うかは使う側の責任なのではないかと思えてくる。

    むしろ、この2つが比較されている現状に違和感を感じた。Netscape.comは従来のマスメディアに対して読者投票型がいかに有効かを議論し、DiggはGoogle Newsのような、機械的に情報が整理されるサービスに対してコミュニティの力がいかに有効かを議論するのが、正しい比較ではないだろうか。

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