【コラム】

シリコンバレー101

181 ネットCD交換サービス「la la」は音楽CD業界の救世主となるか!?

    Yoichi Yamashita  [2006/06/21]

    先週末、物置からCDを入れた箱を全部ひっぱり出した。パソコンで音楽を聴くようになってから、CDは取り込んだら物置の箱に直行という状態なので、最も奥の箱は3年ぐらい開けていない。で、古いCDをどうするかというと、オンラインCD交換サイト「la la」に登録するのだ。

    パロアルトのスタートアップが始めたla laは、色々な意味で興味深いサービスである。まずビジネスモデルだ。簡単にサービスの流れを紹介すると、メンバーは聴かなくなったCDを自分に割り当てられたla laのページの「(交換可能な)所有リスト」(Have List)に登録する。同時に欲しいCDの「希望リスト」(Want List)を作る。そして、所有CDの1枚を希望している人が現れると、自分のla laページにメッセージが入るので、la laから送られてきた送付キットにCDを入れて送る。自分が1枚送ると、自分が希望リストに入れていたCDが誰かから1枚送られてくる。これで交換が成立だ。すぐに送らない、あるいは送らない人も出てくるだろうが、もし自分に送られてくるはずのCDが、14日間を過ぎても到着しなければla laに報告する。各メンバーのページには緑/黄/赤のステータスライトがあり、メンバーの評価はポイントに換算され、ポイントが上がるとステータスが緑色になって交換がより成立しやすくなる。逆にトラブルでステータスが赤色になると、ちゃんと交換相手にCDを送らない限りは自分にも送られてこなくなる。サービス停止勧告だ。

    la laから送られてきた送付キットのパッケージ

    送付キット。CDを入れるプラスティックのケースと、切手が貼られた封筒

    メンバー登録は無料だが、CDが1枚送られてくる度にサービス費1.00ドル+送料0.49ドルの計1.49ドルが請求される。la laは「Z Foundation」という非営利組織を作り、売上げの20%をアーティストに還元している。この比率は今後、アーティストの意見を聞きながら調整するそうだ。la laが効率的に運用されるようになれば、将来的に「売上高の90%を、活動しているミュージシャンに届けたいと考えている」と、同社のブログには書かれている。

    la laのもう一つの魅力はサイトのデザインだ。「Ajaxをふんだんに利用して、インタラクティブ性の高い~」と説明すると、「またか……」と思うかもしれないが、la laのユーザーインタフェースには実用性がともなっている。何百枚というCDを所有リストや希望リストに登録するのは面倒な作業だが、la laでは検索ボックスに文字を入力すると、アーティスト名の候補リストが展開され、文字を入れるごとに絞り込まれる。数文字の入力だけで目的のアーティストを選択でき、あとはアルバム・リストで所有か希望かを選択するだけ。CD1枚の登録に10秒もかからない。アルバムのジャケットにカーソルを当てると、楽曲の情報ウィンドウがポップアップで開き、さらに楽曲を選択すると30秒間試聴できる。またブログやコメントなどコミュニティ機能も充実している。最初、la laの話を聞いた時は、"オンラインCD交換"というアイディアだけのお騒がせサービスという印象を持ったのだが、la laの仕組みを実現する技術や、ユーザーが快適に使えるようスマートに作られたサイトを体験すると、見方が変わった。

    検索ボックスに文字を入力すると、候補が次々に絞り込まれるので簡単に目的のアーティストを選択できる

    今後ユーザーが増えれば、la laのビジネスモデルの合法性を問う論争も持ち上がるだろう。米国では、ニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコのような都市以外で、中古CDショップをほとんど見かけない。日本のように全国展開している中古CDショップがないので、地方都市では中古CDショップがあっても品揃えが悪い。中古CDのやり取りが活発ではないだけに、la laのようなサービスの登場をレコード会社は歓迎しないだろう。ただ、すでにeBayやAmazonなどを通じて中古CDの取引が行われていることを考えると、la laだけを攻撃するのも難しそうだ。

    気になるのは、la laのサイト内で、同社がiPodに対して否定的な考えを示している点だ。「もっとCDを購入して、もっとCDを楽しもう」と勧めている。おそらく「交換で入手したCDをパソコンに取り込み、すぐに交換市場に戻すスタイルを促進している」という批判を避けたいのだろう。ただ個人的には、CD交換と、iPodに代表されるパソコン中心の音楽の楽しみ方とを、しっかりと結びつけて説明するべきではないかと思う。実際のところ、聴かなくなったというよりも、パソコンに取り込んだから交換に出す人の方が多いと思う。新しいCDを買う人がいなくなるという懸念もあるだろうが、la laでは、より多くのCD、より人気の高いCDを持っている人ほど交換が成立しやすい。パソコンに取り込むだけで十分と考えている人でも、地道に所有CDの枚数を増やした方が有利である。

    la laは将来的に、CDショップをユーザーコミュニティに加えることも考えているようだ。la laの仕組みでは、ユーザーが特定のCDを確実に入手することはできない。そこで、たとえば「アメーバレコードでは現在10.99ドルで割引販売中」というようなメッセージが入るようにする。

    ビデオ共有サービスのYouTubeが急成長した要因の1つに、テレビ業界がそのビジネスモデルに注目し、著作権侵害を厳しく問わなかった点が挙げられる。そして今ではAOLやYahoo! から対抗サービスが登場しているように、ビデオ配信の新分野となっている。la laも、レコード会社のビジネスを侵害する可能性がある点では決して安泰とは言えない。しかし、音楽業界には、CDの流通数を増やそうというla laの試みや、ユーザーの声をじっくりと検討した上で対応してほしい。縮小傾向にあるCD市場にとって、一度売ってお終いではなく、活発にCDが交換される仕組みを新しく作り、その中で売上げを増やしていくというのは面白い考え方だと思う。

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