【コラム】

シリコンバレー101

170 「リビングルームにPCを」と「デジタルホーム」の違い

Yoichi Yamashita  [2006/03/29]

サンノゼの春のイベントといえば独立系の映画祭「Cinequest」だ。多彩な人種が集まるシリコンバレーを反映した"国際"映画祭であり、地元に根づいた"地方"映画祭でもある。そこで、この2つの特性を結びつけて「世界中から参加できる地方映画祭」とするために、2004年から参加作品のオンライン配信が始まった。

Cinequest Onlineを始めるにあたって、著作権保護の問題が懸念されたが、過去2年の間、特にトラブルは起こっていない。ただ、順風満帆というわけでもない。オンライン配信作品を再生できるのは、基本的にその作品をダウンロードしたPCのみ。米国では、PCのディスプレイでテレビや映画を観る人が少なく、著作権保護の仕組みに伴う鑑賞方法の制限に不満の声が集中した。サポートページに「PCとテレビを接続するには」という解説が用意されているが、PCを、マウス/キーボードごとテレビの横に持っていき、RCAケーブルやSビデオケーブルでテレビと接続している。お世辞にもスマートな方法とは言い難い。

そこで今年、2006年のCinequest 16では、Intelが協賛企業となり、Viivに対応したオンライン配信が行われた。テレビの横に置かれたViiv PCに作品をダウンロードすれば、そのままテレビで鑑賞できる。またViivならば、ホームネットワーク内で著作権を保護した形で自由にコンテンツをやり取りできる。たとえば、DMA(デジタルメディアアダプター)を接続したテレビで、PC内の映画にアクセスしてストリーミング再生することができる。自室のPC、テレビ、外に持ち出すノートPCなど、好きな方法で、いつでも映画を楽しめる。もちろん、登場し始めたばかりというViiv製品の状況を考えると、今年のCinequest作品を"Viivで共有した"という人は少ないだろう。だが、その可能性が示されただけでも、2005年に比べると大きな進歩である。

Intelがスポンサー企業となったCinequest。開催期間中はサンノゼの街中が看板やポスター、旗などで埋め尽くされる

まだComdexが健在だった頃、PCメーカーが「リビングルームにPCを」と言い始めたのは、映像コンテンツが、ケーブルテレビによって米国の各家庭にもたらされていたからだ。だが、STB(セットトップボックス)やPVR(パーソナルビデオレコーダ)に比べると、価格の高さやサービスとの連携がカベとなった。そのような苦戦状態が、ブロードバンドの普及で、PCにも直接マルチメディアコンテンツが流れ込むようになり、変わろうとしている。Microsoft Windows eHome部門のJoe Belfiore氏によれば、米国のケーブルテレビ事業者の間では、昨今の流れとして、PCがケーブルに比肩しつつあるという見方が広まっているそうだ。ブロードバンドネットワークに接続しているPC数と、ケーブルネットワークに接続しているTVの数がほぼ同数になってきたという。

リビングルームでゆったりと鑑賞できる従来スタイルと、オンデマンドで楽しめるPC向けコンテンツ。これらをいかにして結びつけるかが、今後の課題である。カギはホームネットワークだ。だから最近「リビングルームにPCを」を聞かなくなった代わりに、「デジタルホーム」という言葉をよく耳にするようになった。

Apple Computerも、2月28日に開催した新製品発表会で、テレビの横にMac miniを設置する方法をアピールしていた。キーボードとマウスは使わない。ホームネットワーク経由でコンテンツを共有できる「Bonjour」に対応した「Front Row」を使って、リモコン操作でMac mini内のコンテンツおよびホームネットワーク内のPC内のコンテンツにアクセスする。

「Appleもリビングルームに進出!?」という感じだが、同社のスタッフは「Macをリビングルームで楽しむにはテレビをディスプレイにするのも1つの方法だ」と説明しており、あくまでも「MacはPC」という姿勢を保っている。

リビングルームを模した展示室でテレビに接続したMac miniの利用方法をデモ

Front Row+Bonjourで広がるMacの世界

Mac miniのデモでは、ビデオ/写真/音楽へアクセスするのに599ドルのPCは高すぎると言う人もいたが、ユーザーがどの程度デジタルエンターテインメントにおいて、PCに依存しているかで評価は分かれた。すべてがHDD上に存在するのなら、一考の価値はある。

テレビ番組の録画機能がないことも議論になったが、「PCはPCのやり方で、テレビを取り込むべき」という意見に同意する人が多かった。iTMSのテレビ番組販売は、その一例である。たしかにSTBやPVRの代わりを目指すあまり、これまでのリビングルームのPCは、新鮮味に欠ける面があった。むしろPC側のエンターテインメントを強調してリビングルームに進出した方が、PCを使う必要性が明確になる。

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