【コラム】

シリコンバレー101

169 GoogleのWebワープロサービス取得はうれしいけれど……

    Yoichi Yamashita  [2006/03/15]

    シリコンバレーのスタートアップ、Upstartleで開発されていたWebベースのワープロサービス「Writely」がGoogle傘下となった。今後はGoogle Writelyチームとして開発が継続される。ブログを通じて発表されてから、Writelyのベータサービスはユーザー登録を制限する状態が続いている。

    Writelyの特徴はWebサービスであることだ。作成した文書はWritelyのサーバに保存されるので、インターネットに接続し、対応Webブラウザを利用できる環境ならば、どこからでも過去に作成した文書にアクセスできる。また招待を受けた第3者がWeb上で文書に手を加えられるコラボレーション機能も備えている。

    英語ベースだが、日本語での文書作成は可能。日本語のFAQも用意されている

    Webベースのワープロサービスはいくつか存在するが、Writelyは使い勝手の良さが魅力となっている。一般ユーザーの文書作成に必要な、基本的な編集機能を備え、それらをAjaxによるリッチなインタフェースで操作できる。しかも、Webベースながら、普通のワープロソフトを使っているような軽快な動作である。OpenDocument Format(ODF)に対応しており、MicrosoftのWordやオープンソースのOpenOffice.orgなどで作成した文書をWritelyにインポートできる。また逆にRTF、Word、OpenOfficeなどの形式でローカルに保存できるので、ファイルの扱いに困ることもない。最終版では有料のプレミア機能になる可能性があるが、PDF出力も用意されている。

    MicrosoftのOffice対抗と言われているが、OfficeとWritelyはライバルであるというよりも、共存共栄の関係で、そのメリットの方が大きいと思う。Officeの機能を必要としている人はWritelyに不満を感じるだろうし、Writelyは非Officeユーザーのためのサービスという印象がある。Writelyユーザーにとっては、クロスプラットフォーム、クロスデバイスがキーワードになるだろう。

    個人的には、エディターがあれば十分というタイプなので、Writleyにはベータ開始時から惹かれていた。Writelyで原稿を書いておけば、または書いた原稿をWritelyに取り込んでおけば、ファイルがHDDのどこかに行って行方不明ということも無くなりそうだし、出張時でもすぐに調べがつく。しっかりタグを付けておけば、管理・検索がとても楽だ。それに編集部とのやり取りも、ファイルを行き来させるのではなく、コラボレーション機能を使って赤を入れてもらった方が間違いも少なさそう……などと思っていた。ただUpstartleが、どのような形で正式サービスを提供するかをはっきりさせていなかったので、本格導入という訳には行かなかった。その意味で、Google傘下となったのは朗報である。

    Googleは大容量のWebメールサービス「Gmail」によって、特定のPCでしかEメールにアクセスできないというユーザーの問題を解決した。Writelyは同様のソリューションを文書作成・編集にもたらすだろう。Googleは3月2日にアナリスト向けの説明会を開催しており、その中で検索インデックスとパーソナル化を拡大する方針を示した。Writely獲得は、パーソナルサービスを強化できるという点でも理にかなった動きだ。

    広告を土台にしたGoogleのビジネスモデルと、ワープロサービスには接点がないように思えるが、ユーザーにより長く自社のサービスを利用してもらうのが、パーソナル化の狙いである。加えてユーザーのタイプを判定する材料も取得できれば、さらに効果的な広告を提供する手助けになる。

    ただ、Gmailをレビューした時にも書いたが、パーソナルなオンラインサービスを利用する際、気になるのは出口である。別のサービスに乗り換えようと思った時に、向こう側に保存してある数GB規模のデータをどうするかだ……。

    個人的には、Gmailと写真共有サービスの「Flickr」を利用しているが、GmailはPOPアクセスで手元のPCにもすべてのデータを保存しているし、Flickrは有料になるがCD/DVDバックアップサービスを利用している。この手のサービスの利用に踏み切る時は、いざという時にデータを引き取れるかがポイントになる。だが、出口をちゃんと用意しているサービスは少ない。「ユーザーを引きつける」というパーソナル化の狙いと矛盾するのは分かるが、深入りしたくなっても、底なし沼の印象が邪魔をするのも事実だ。Writelyのような魅力的なサービスも脱ベータの兆しなのだから、Webサービス全体がユーザーをしばりつけない方向に動いて欲しいものだ。

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