【コラム】
市内全体で無料、または低料金の無線ブロードバンドサービスを実現しようとしているサンフランシスコ市で、2月21日に公募していたサービス案の提出が締め切られた。昨年夏のプロジェクト発表後、情報やコメントを集めるRFI/C(Request for Information and Comment)が行われ、さらに45日間をかけて具体的なサービス案を求めるRFP(Request for Proposal)が行われていたのだ。RFPには、GoogleやIBM、Cisco Systemsなどを含む、6つの企業・団体の案が集まった。しかも、六者六様と言えるぐらい、異なった提案となっているのが面白い。
注目のGoogleは、意外にも単独ではなく、米大手ISPのEarthlinkとの共同提案となった。Tropos Networksのメッシュ技術を採用し、街灯の上に約1,500台のトランスミッターを設置する。費用は600万から700万ドル程度。今後10年間で、約1,500万ドルの維持・管理費が必要になる。これらはGoogleとEarthlinkで負担する。ビジネスモデルは無料と有料、2つのサービスの組み合わせだ。Googleが担当する無料サービスは、スループットが300Kbpsと比較的低速。広告モデルを採用することになる。Earthlinkが運営する有料サービスは、上り/下り共に1Mbpsのサービスとなる。料金は20ドル程度で、充実したカスタマーサービスも受けられる。
同様にメッシュアーキテクチャを採用するMetroFiは、下り1Mbps/上り256Kbpsというサービスの無料提供を提案している。機能豊富な有料サービスもオプションとして用意しているが、主な収入源は「ユーザーの個人情報を保護した上で、的確な内容を配信する」という広告である。それで十分にまかなえるのかという疑問は残るが、MetroFiはすでに、ベイエリア南部のサニーベールやサンタクララで、同様のサービスを展開しており、その実績をアピールしている。
CiscoとIBM、そして非営利の技術コンサルタントSeaKayによるジョイントベンチャー、SF Metro Connectは、ネット接続に関して、「ユーザーが受け取るサービスに差があってはいけない」という姿勢を示している。広告の有無、ユーザーの広告ターゲットとしての価値なども"差"に含まれる。そこで米PBS(Public Broadcasting Service)に代表されるような公共放送モデルを採用している。PBSは、主に教育番組や教養番組が中心で、商業的な広告は入らず、無料で視聴できる。運営資金は寄付金、連邦や州の交付金、スポンサー料などでまかなわれている。そのため、社会に貢献できるプログラムであることが重要になる。たとえばPBSは、「セサミストリート」の制作局として知られている。SF Metro Connectのネット接続サービスも同様のアプローチとなり、実現すれば、ネット道徳の向上という意味でも面白い存在になりそうだ。
nextWLANは、DSL回線をつなげて市全体をカバーするWi-Fiネットワークを実現しようとしている。現在、AT&Tが提供しているDSLサービスの卸価格が1カ月11ドル。1つのDSL回線を10~12人で共有すると、1カ月のコストは1人あたり1ドル程度である。これにサポートや管理費などを加えると、1カ月2.50ドル程度になるそうだ。これらのコストを広告や有料サービスでまかなう。
DSL回線を用いるnextWLANの技術は、低コストで短期間に導入できるため、商店街のような小規模コミュニティで利用されている。また、比較的小さな機材を屋内に設置するだけなので、外観を損なわず、歴史的な価値のある建物にも設置しやすいというメリットがある。
Razortooth Communications(RedTAP)は、サンフランシスコの低所得者地域で、デジタル格差の解消に挑む事業を展開している。その提案は生協(COOP)方式だ。コミュニティメンバーによる会員制の格安有料サービスを、小さな範囲からスタートさせる。月々5ドル程度という料金だ。コミュニティがネットワークを運営し、その通信範囲を広げるために、必要な人や企業をコミュニティに勧誘する。たとえばサービス無料と引き替えに通信機器を設置させてもらう。これにより5年間で、サンフランシスコ市の90%をカバーできる、コミュニティベースのネットワーク構築が可能になると見込んでいる。ある程度、Wi-Fi COOPが行き渡ったら、無料サービスの提供も開始するという。
最後のCommunication Bridge Global(CBG)は、WiMAXをベースにした、ベーシックで3Mbpsという高速なサービスを提示している。無線ネット接続サービスを、水道や電気などと同様に考えており、市と民間のパートナーシップでの運営を提案している。接続料金や回線使用料、広告、サービスなどからの収入を、ネットワークを所有する市が80%、サービスを管理するCBGが20%という様に分配しながら、維持・運営に充てる。
サンフランシスコ市では、RFP審査会で6案を検討し、市の条件に見合う案があれば4月初旬を目途に、議会への提案としてまとめるそうだ。6案を読むと、いずれも「試してみたい」と思わせるもので、中にはサンフランシスコよりも、もっと小規模な都市向きと思われる案もある。サンフランシスコで採用されなかったとしても、公開されている提案に興味を示す地方政府や、コミュニティが現れそうだ。
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