【コラム】

シリコンバレー101

155 いよいよ新世代ゲーム機、加州では残虐ゲームにシュワ知事が待った

    Yoichi Yamashita  [2005/11/22]

    先週の金曜日、TARGETに洗剤を買いに行ったら、家電コーナーに子供の輪ができていた。その中心はXbox 360の試遊台である。まわりの棚には周辺機器がズラッと並んでいた。あれ、もう出たんだっけ……と思ったら、やっぱり22日(米国時間)発売だった。

    ゲームの新世代機というと、これまで発売直後はゲームマニアを主なターゲットとして、ゲーム専門店や家電ショップなどを中心にマーケティングが展開された。そして少しずつ価格を下げながらターゲットを広げる。ところが今回Microsoftは、発売前からスーパーマーケットにまでデモ機を揃えている。Xbox 360では先行発売で一気にシェアを獲得しようという同社の気合いが伝わってくる。

    Microsoftはモハベ砂漠でXbox 360の発売イベントを開催。世界中の3500人以上のゲーマーがXbox 360オアシスに集結

    さて、消費者が実際に触れられるようになると、あちこちで話題になることも多く、"いよいよ次世代ゲーム機"という期待感が高まってくる。だが、ここカリフォルニアでは次世代機の立ち上がりに影響しかねない論争が起きている。残虐的なゲームに対する規制である。

    これは残虐なゲームを「成人向け」に指定し、18歳未満への販売や貸し出しを禁止しようという法案で、今年9月に州議会で承認された。成立にはアーノルド・シュワルツェネッガー州知事の承認が必要。ハリウッド出身、「ターミネーター」でトップスターの仲間入りをし、地元ではガバネーターと呼ばれているシュワ知事である。ゲームのエンターテインメント性や表現の自由を理解してくれると、ゲーム業界は期待していた。ところが、シュワ知事は10月にあっさりと法案に署名。カリフォルニア州では来年1月1日から「成人向け」ゲームの未成年への販売・貸し出しが禁止される。

    成人向けはごく一部になるだろうが、米消費者団体が問題視するゲームには「グランド・セフト・オート」「Doom」「Halo」など、大ヒットタイトルが数多く含まれる。これらが軒並み指定されると、新世代機の立ち上げに影響しかねない。そこでEntertainment Software Association(ESA)やVideo Software Dealers Association(VSDA)などのゲーム業界団体が、法案の無効を求めてシュワ知事を提訴するという事態に発展している。先週行ったゲーム専門店Game Spotでは、来店者に規制すべきゲームと対象から外して欲しいゲームのアンケートを求めていた。箱にはかなりの数の用紙が投げ込まれていたので、この問題に対するティーンエイジャーの関心も高そうだ。

    そのような中、サンノゼ市にあるテック博物館でGame On!という特別展が始まった。実際にゲームをプレイしながら、その歴史を学べる催しで、英ロンドンのBarbican Museumで始まり、米国ではシカゴを経由して西海岸にやってきた。「ロンドン発のゲーム専門展をシリコンバレーで?」と訝る声もあるが、これが意外と楽しめる。たとえば、82年に大失敗に終わったE.T.ゲームの売れ残り500万本を、Atariがニューメキシコ州の砂漠に埋めて処分した裏話とか、ナムコの岩谷徹氏が食べかけのピザからパックマンを思いついたとされる説など、ゲーム業界に残された数々の逸話が紹介されている。

    暴力ゲームの代表格として悪名高い「グランド・セフト・オート」も、その影響力の秘密を製作の過程から丁寧に説明

    入場して驚いたのは、入場者の半分以上が子供であるにも関わらず、暴力的と非難されているゲームも、そのまま展示されていたことだ。暴力ゲームを巡るカリフォルニア州の緊張がここには反映されてないのか……と思ったら、実はその逆だった。子供が暴力的なゲームに関心を持つと、キュレーターが寄ってきて、それらのゲームが展示されている理由、社会に与えた影響や現在の論争などを説明する。さらに表現力豊かなゲームは、単なる遊びモノではなく、将来的に医療や教育、各種トレーニングなどに利用されるようになる可能性に言及する。最近少しずつではあるが、広がりを見せている「シリアスゲーム」と呼ばれる新カテゴリーだ。

    売上げ増を狙ってゲーム残虐性が増す傾向を考えると、規制問題が持ち上がるのは避けられない状況である。ただ、ゲームは暴力だけを生み出すわけではない。負の効果があるのと同様に、使い方次第では逆に道徳心を養ったり、コミュニケーションを促すこともできる。規制が話題になるのは、それだけゲームがメディアとしての影響力を持ち始めた証拠であり、毒にもなる一面を見せながら、薬としての効果もアピールするのがGame On!の狙いなのだ。

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