【コラム】

シリコンバレー101

154 普通の映画館で3D映写、未来の映画を垣間見せる「チキン・リトル」

      [2005/11/15]

    先週末サンフランシスコのメトレオンで、ディズニー製作では初のフル3DCG映画「チキン・リトル」(11月4日全米公開)の3Dバージョンを鑑賞した。ディズニー映画なのに、主人公があまりにもかわいくない(見かけも性格も、「20世紀少年」のヨシツネを彷彿させる)ため、苦戦を予想する声もあったが、フタを開けてみれば、初登場から2週連続1位である。短い時間でめまぐるしく展開が変わる脚本なのだが、1本スジが通っていて、なおかつキャラクターをうまく表現している。その辺りのうまさがヒットに結びついているのだろう。

    チキン・リトルは通常バージョンと全米85館のみの3Dバージョンの2種類が用意されている。3Dバージョンは、Dolby Laboratories、ジョージ・ルーカスのIndustrial Light and Magic(IL&M)、そして3Dプロジェクション技術のReal Dの協力で実現した。ディズニーは「Disney Digital 3D」と呼び、Real Dは「Real D Cinema」と呼んでいるが、簡単に言うと3Dメガネを使って鑑賞する立体映像バージョンである。ディズニーランドなどの3Dアトラクションとほぼ同じだ。ただ、スターウォーズも3Dバージョンになって復活するというし、「IL&Mがからむ3Dデジタル映画って、どんなもん」と思って、大人2人でチキン・リトルとなったのだ。

    チケットの値段は通常バージョンが大人1枚10ドルであるのに対して、3Dバージョンが12.50ドル。チケットと一緒に3Dメガネが手渡される。説明書には、「劇中でチキン・リトルがかけているのと同じメガネで、公開中にしか手に入らないリミテッド、すごいお宝」みたいなことが書かれている。その形はともかくとして、このメガネのおかげでDisney Digital 3Dでは従来よりも鮮明かつ快適に3D映像を鑑賞できるそうだ。ところが映画が始まると、動きの速いシーンでは絵がパラついたりする。「こんなんでスターウォーズは大丈夫……」とはげしく不安になる。しかも、ディズニーワールドの「Hunny、I Shrunk the Audience」の方が立体感にも深みがあったような気がする。そんな不安を抱えながらしばらく経過。この映画では「空が落ちてくる」というのが1つのカギになっているのだが、実際に空が落ちてくるシーンはかなりの迫力だった。ほかにもドッジボールや宇宙船内など、3Dが効果を発揮するシーンの動きは見事だった。思うに、終始3D効果をアピールするのが目的のHunny、I Shrunk the Audienceと違って、映画では話に合わせて3D効果にも強弱がつけられているのかもしれない。またDisney Digital 3Dでは、頭を傾けたり、少し横を向いても、映像に影響はなく、楽な姿勢で鑑賞できた。長時間3Dというのに不安を感じる人もいるかもしれないが、気分が悪くなったり、頭が痛くなったりする人は、これまで体験した3D映像よりも少ないのではないかと思う。

    3Dメガネ、チケット売り場でもらった状態

    チキンリトルのメガネと同じはずだが、人間がかけるとほぼエルトン・ジョン

    立体映像というと、子供だましという印象をもたれやすいが、今年の夏に開催されたDirectors Guild of Americaのデジタルデイのイベントでは、映画館の魅力を維持する方法の1つとして3D映写の可能性が真剣に討議された。ジョージ・ルーカスが関心を持っているのも同様の理由である。決してSFと3Dを短絡的に結びつけているのではない。実際、今年は映画館での興行成績のスランプが続いている。全米映画協会(MPAA)は違法ファイル交換やDVDコピーなどの影響を挙げているが、問題はそれほど単純ではない。

    米家電協会(CEA)のレポートによると、2005年1月時点で、米家庭の32%がホームシアターを導入済みだそうだ。米国の場合、ホームシアターというカテゴリーの範囲が広いため、日本人の感覚ではもう少し少なくなる。だが、一般に家屋の大きい米国の方が導入しやすいのは事実であり、今年の年末商戦でも売れ筋商品になるのは間違いない。価格も下がってきているため、無理をしなくても、場末の映画館よりも快適な環境を自宅で手に入れられるのが現状だ。また2929 Entertainmentのように、映画館での封切りとDVD販売を同時に行う革新的な企業も登場している。しかも、それを支持する映画製作者も増えている。売上げのチャンネルを増やすという意味では正解だろう。ただ、映画館という巨大なビジネスはどうなるのか。映画館が生き残るには今後、ホームシアターでは不可能な体験を提供する必要がある。

    思い返してみると、ここ数年マトリックスレボリューションズとか、ハリーポッター・シリーズなど、IMAXシアターで公開されている作品は3ドル増しでもIMAXで観ている。3Dは正直なところ微妙な感じもするのだが、映画館が娯楽の殿堂であり続けるためには、このような意欲的な挑戦(体感シートとか……)を続けてほしい。とりあえず、3Dデジタル版スターウォーズが公開されたら、また挑戦しようと思う。

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