【コラム】

シリコンバレー101

143 インド・中国への仕事流出にど田舎ITファームで対抗

    Yoichi Yamashita  [2005/08/30]

    シリコンバレーに住み始めてほぼ3年が経過。4世帯がひとまとまりの長屋風のタウンハウスに住んでいるのだが、ウチを除く3世帯は全て入れ替わってしまった。周りの棟でも、ずいぶんと顔ぶれが変わっている。

    このぐらいの規模のタウンハウスは、実にビミョーな位置なのだ。住んでいるのは20代後半~30代が中心である。生活費の高いシリコンバレーに腰を落ち着けるか、それとも他の地域に移るかの選択で悩んでいる人ばかり。それにリストラのホットスポットとも重なっているらしく、規模縮小、プロジェクトがつぶれた、契約を更新してくれなかった等々、さまざまな理由でタウンハウスを去っていく人も多い。

    先々週、左側の棟に住んでいた夫婦が住宅の販売契約で久しぶりに戻ってきたのだが、現在オクラホマの強烈な田舎に住んでいるという。人口は1,000人弱。自転車で20分も走るとトウモロコシ畑の地平線が広がる。車で1時間弱のとなり町にマクドナルドはあるが、スターバックスに行くには3時間近いドライブが必要。ガソリンスタンドは街に2軒。しかも、そのうち1軒はなんでも屋という感じのスーパーマーケットにくっついている。住人たちは、そのスーパーに週1回商品が入荷されるのを心待ちしているという、「まるでノーザンエクスポージャー(アラスカの小さな町を舞台にしたドラマ)の世界だ」と今の暮らしぶりを説明していた。Google Mapsで検索してみたら本当に小さい。衛星写真モードで見ると、国道と国道の交差点にしか見えないが、マップモードで拡大すると、たしかに街である。

    なんで、そんなところに引っ越したのかというと、プログラマからトウモロコシ農家へ転職した……わけではない。プログラマの仕事を見つけたからである。そんな田舎町にIT業務を請け負うコンサルタント企業のオフィスがあるのだそうだ。

    実際に調べてみると、たしかに"ある"。しかも、同様のコンサンルタントやエージェントはいくつかある。どこも規模は小さいが、その中でもCrossUSA( http://www.cross-usa.com/ )という会社は積極的に人材を募集している。勤務地は聞いたことのない町なので、Google Mapsで調べてみると、やっぱり交差点のような町ばかり。しかも、ミネソタとか、ノースダコタとか、冬には氷の世界になってまう過酷な地域も含まれる。ただ、どこも車で2~3時間程度の距離にそれなりの規模の町があるので、一応陸の孤島は避けているようだ。

    このような会社の狙いは海外へのアウトソーシング対策である。インドや中国に流出している仕事はリモートで対応できる業務だから、コストの差を埋められれば、米国の方が有利である。時差も少ないし、言葉の問題がなく、顧客のニーズも理解しやすい。いざとなれば顧客のところに出向いてトラブルを解決することも可能だ。

    ちなみにオクラホマでの仕事からの所得は、シリコンバレーとは比べものにならないほど少ないそうだ。しかし、アパートの賃貸料はシリコンバレーの1/4以下でベッドルーム数は1つ多くなる。それに、今は全米どこに住んでいても郵送レンタルでDVDは借りられるし、Amazon.comを使えばある程度の買い物はできる。田舎の生活を楽しめる人ならば、豊かな生活を送れるという。ただ、それでもカントリーライフを選択する若い人はまだ少ないのが現状で、オフィス内は何らかの理由で職を失った後、年齢的に再就職できなかった50~60代が多いそうだ。

    国土が広く、ブロードバンドのインフラがなかなか整わない米国で、よくそんな地方の街でブロードバンドが使えるものだと思ったら、オフィス開きがその街のブロードバンドの開通日だった。逆に考えると、田舎の小さな町でもインフラを整えれば、ミニシリコンバレーも不可能ではないということだ。18日に米Intelが地方自治体のワイアレス技術活用を支援するイニシアチブを発表したが、デジタル・コミュニティというコンセプトは「こんなところが……」と思える場所にも、面白い成果をもたらしてくれそうだ。

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