【コラム】

シリコンバレー101

141 ISPに対する開放義務撤廃、ケーブルと対等になったDSL

    Yoichi Yamashita  [2005/08/12]

    まず本題とは関係のない今日気になった話題から。日本ではサマータイム法案が見送られたが、米国では8日ブッシュ大統領が、省エネ目的でサマータイムを延長する法案に署名した。2007年から、4月の第1日曜日だったサマータイムの開始日が3月の第2日曜日になり、終了日が10月最後の日曜日から11月最初の日曜日に変更される。つまり約1カ月、サマータイム期間が伸びるのだ。

    サマータイム中は、夕食の後でも明るく、時間を効果的に使える。個人的には、毎年サマータイム入りを待ちこがれている。ただ、期間を長くしすぎると逆効果で、新期間では子供たちの学校帰りが薄暗くなってしまうと心配されている。また10月31日のハロウィンもサマータイムになってしまうため、子供たちが暗闇の中をキャンディ集めで徘徊することになるとも言われている。賛否両論である。

    「明るい時間の活用」と「省エネ」。同じ結果を生み出すはずなのに、微妙なズレが生じている。両立しないようならば、期間設定に無理があるということだろう。

    さて本題である。5日に米連邦通信委員会(FCC)は、DSLの分類をテレコミュニケーション・サービスから情報サービスに変更した。これにより地域通信会社に課せられていた、インターネットサービスプロバイダー(ISP)などに対するDSL用のメタル線の開放義務が免除される。1年間の移行期間が設定されており、EarthlinkやAOLなど、DSLサービスを提供しているISPは、1年後に契約者にサービスを提供できなくなる可能性がある。

    この変更は以前にも取り上げたことがあるBrand X訴訟に起因している。ケーブル会社に対してISPなどがオープンアクセスを求めていた問題で、6月末に米最高裁がテレコミュニケーション・サービスに該当しないという判決を下した。つまりケーブル会社は、ISPなどにインフラを開放する必要はない。この判決を受けてFCCは、ケーブルとDSLを同じ条件で競わせるために、DSLの分類を改めたのだ。結果、DSL-ケーブル間の競争が強まり、サービスの低価格化や消費者が受け取るサービスの向上が期待できるとしている。

    今後、EarthlinkやAOLなどの大規模ISPは、地域通信会社と直接回線の貸し出しについて交渉することになる。このようなISPは、セキュリティ機能やカスタマーサポート、モバイルサービスなど、独自のサービスパッケージを提供している。それらに親しんだユーザーは、地域通信会社が提供するDSLサービスを不満に思うかもしれない。またISPのユーザーを突き放してしまえば、それらがライバルのケーブルサービスに流れてしまう可能性もある。つまり地域通信会社がISPに対して強い態度で交渉に臨むのは、決して得策とは言い切れないため、両者の間で円満に契約がまとまると予想する見る向きは多い。またEarthlinkのように、Wi-Fiサービスを提供しているISPは、WiMAXによる無線ブロードバンドサービスなど、新たな切り札づくりに力を注ぐことが予想される。それが次世代のブロードバンドサービス提供の実現を早めるという期待もある。

    ただし、逆の見方もある。今回は、開放義務が免除された地域通信会社が、交渉を有利に進める主導権を持っているのだ。地域通信会社が強硬に交渉を進めた場合、消費者の不利益につながりかねない。またダイヤルアップ時代から続く地域の小規模ISPは、非常に厳しい立場に立たされることになる。これらのサービスが失われるようならば、真の競争ではないという指摘もある。

    「DSLとケーブルの対等な競争」と「消費者が受け取るサービスの向上」。同じ結果を生み出すはずなのに、微妙なズレが生じている。両立しないようならば、情報サービスという分類に無理があるということだろう。

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