【コラム】

シリコンバレー101

136 ブロードバンドのスタート地点は何Mbpsから?

    Yoichi Yamashita  [2005/07/05]

    Yahoo!と提携している電話会社SBCがDSLの新サービス「SBC Yahoo! DSL Express」を発表した。新規の1年間の契約+オンラインでの申し込み+地域電話サービスの契約などを条件に、月額14.95ドル(約1,600円)でサービスを提供する。回線速度は384Kbps~1.5Mbpsである。

    384Kbps~1.5Mbpsってブロードバンドなの? という声が聞こえてきそうだが、米国では立派にブロードバンドサービスとして通用している。英語版のWikipediaで"Broadband"を調べてみると、「ISDN一次群インタフェースよりも高速な回線、1.5から2Mbps以上」というITU Telecommunication Standardization Sector(ITU-T)の定義が紹介されている。ただし、その後に「一般的には256Kbpsでも"ブロードバンド"と表記され、政策決定やISPの説明などでもブロードバンドとして扱われている」と付け加えられている。また"Broadband Internet access"で調べてみると、"512Kbps以上"をブロードバンドとしている。

    スピードの疑問はひとまず置いておいて、SBC Yahoo! DSL Expressで重要なのは、やっとダイヤルアップ・サービスと価格的に肩を並べるブロードバンドサービスが登場したことだ。ダイヤルアップに比べて倍近いブロードバンドサービスの価格は、これまで普及の障害として度々指摘されていた。ところが、現実的には30ドルを下回るサービスが出てきたところで、価格の下落はピタッと止まっていた。一方、スピード自慢のケーブルサービス(それでも4Mbpsぐらいなのだが……)だと、月額45ドル(約4,900円)程度になってしまう。

    SBC Yahoo! DSL Expressは、新規契約などの条件を満たさない人でも月額19.95ドルからとなっている。価格が同程度ならば、電話回線があれば全米どこからでも利用できるというメリットを除いて、スピードに勝るブロードバンドサービスが有利である。SBCは新サービスの売り込みにかなり力を入れており、この独立記念日の休日には、間もなく公開される映画「Fantastic Four」をフィーチャーしたSBC Yahoo! DSLの広告を至る所で見かける。インターネット接続にケーブルを使っているウチには、豪華なSBC Yahoo! DSL Express勧誘のパンフレットが送られてきた。この調子ならば、米国もやっと、日本でYahoo! BBがサービスを開始した頃のような時期を迎えることになりそうだ。

    対するケーブル会社はというと、Yahoo! SBCの値下げに同調する気配はない。あくまでもDSLに比べ安定して上回るというスピードで勝負しようとしている。ただ、気になるのは、4Mbpsを必要とするサービスを具体的にアピールしていない点だ。

    消費者の視点からブロードバンド接続の定義を考えると、「WebやEメール以上のサービスを実現してくれるサービス」だと思う。Webぺージがストレスなく開く……ではないだろう。実際、CESのような家電イベントに参加すると、ビデオオンデマンドや家庭への封切り映画の配信のようなサービスの実現を機器メーカーやコンテンツ提供者がアピールしている。

    だが、米国のISPはそういう視点には立っていない。電話会社とケーブル会社が重視しているのは、いかにインターネット接続/電話サービス/携帯電話サービス/TVサービスをセットにして消費者に契約させるかである。その中でインターネット接続の役割はWebとEメールであり、512Kbpsでも十分にブロードバンドとして機能しそうなのだ。

    春のIDFでSean Maloney副社長が、1Mbps程度ではブロードバンドと言うべきではないと述べていたが、本当にその通りだと思う。米国でもブロードバンドサービスが価格競争に突入したことは歓迎すべきだけど、「何が変わるか、何ができるのか」という視点で考えないと、米国ではブロードバンドと呼ばれる遅いサービスを使い続けることになりかねない。

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